kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

安倍晋三が「もんじゅ」を廃炉にする

しばらく前から言われてきた「もんじゅ廃炉の方向性を、ついに安倍政権が出すらしい。日曜日(9/18)のサンデーモーニングでも昨夜の報ステでも言ってたし(後藤謙次が何やら小賢しい講釈を垂れていた)。今朝の朝日新聞も1面トップで報じている。

http://www.asahi.com/articles/ASJ9N61YBJ9NULBJ01C.html

もんじゅ廃炉へ最終調整 地元と意見交換 年内にも結論
2016年9月21日03時02分

 政府は、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)について廃炉へ向けた最終調整に入った。21日にこの問題で初めて原子力関係閣僚会議を開き、廃炉も含めた今後の高速炉開発の進め方の検討を始める。20日には首相官邸福井県敦賀市など立地自治体と意見交換をしており、年内に結論を出すことを目指す。

 21日夕の会議には、菅義偉官房長官松野博一文部科学相世耕弘成経済産業相らが出席。もんじゅ廃炉を念頭に、廃炉を容認する経産省と存続を訴えてきた文科省の意見を調整し、政府の新たな核燃料サイクル政策の方向性をまとめる。26日開会の臨時国会を前に、当面の見解をまとめる意味合いもある。

 もんじゅは、1994年の初臨界の翌年、燃料を冷やすナトリウムが漏れる事故を起こした。12年にも1万点もの点検漏れが発覚するなどトラブルが続いてきた。既に1兆円を超える額が投じられたが、ほとんど運転実績はない。再運転するには、新規制基準に適合させるための工事費用を含め、多ければ8千億円ほどかかる可能性がある。

 官邸はこれらの点を踏まえ、再…

朝日新聞デジタルより)

このところずっと、この件について「やっぱり『もんじゅ』の廃炉安倍晋三の手柄になるのか」と思っていた。いつぞやそんなことをここに書いたことがあったよなあ、と思いながらもなかなかみつからなかったのだが、さっきみつけた。第2次安倍内閣発足からおよそ1年が経過した、2013年12月に書いた記事だ。朝日新聞の大久保真紀記者が「脱原発に頑張る小泉元首相を応援しよう」とばかりに小泉に30本のバラの花束を手渡そうとしたが、「一切もらわない主義だ」と小泉に断られ、大久保記者が「(今日のこと)書きますので」と言うと、小泉は「アッハハッと高笑いし、片手を上げて去っていった。」とコラムは結ばれる。私はそのコラムを読んで呆れ返ったのだが、それを批判して書いた記事だ。以下その途中から引用する。

小泉元首相の変節 「オレたちにウソ言ってきた」 大久保真紀(朝日) - kojitakenの日記(2013年12月15日)より

(前略)コラムを読み終えて、あーあ、と、ため息しか出なかった。小泉は、日本の原発推進史上において、中曽根康弘正力松太郎田中角栄の「三悪」に次いで大きな寄与をした人間である。90年代には下火になっていた原発の新設が東電原発事故の直前まで再加速したのは、小泉が日本政府のエネルギー政策を転換したからである。小泉は「だまされた」と言うが、その気になれば原発の問題点など簡単に知ることができたはずだ。それなのに「だまされた」という小泉の言い分をそのままコラムに載せて小泉を無罪放免にしてしまうとは。

 小泉が電事連経産省などの原発推進勢力に「だまされた」と言っているらしいことは、TBSのサンデーモーニングで、毎日新聞主筆岸井成格が言っていたから知っていたが、毎日も朝日も小泉が原発を推進した責任を問う姿勢が全くないことには呆れる。今朝の朝日・大久保記者のコラムも、8月に小泉の「脱原発」論を取り上げた毎日新聞山田孝男専門編集委員*1のコラムに言及し、小泉が「新聞記事の影響の大きさが改めてわかったよ。だって、月2〜3回してきた講演で同じこと話してきた。みんな無視したが、あの記事で無視できなくなったんだな」と言ったと、嬉しそうに書いていた。

 確かに新聞記事の影響はバカにならない。「脱原発」を標榜する朝日新聞毎日新聞も、おそらく東京(中日)新聞も、小泉の原発推進責任を問わず、ひたすら小泉の発言を歓迎しているから、「脱原発」論者の間にも、「脱原発に頑張る小泉元首相を応援しよう」という空気が生じている。それは、かつて橋下徹小沢一郎が「脱原発」に「転向」した時よりもずっと支配力の強い「空気」だ。かつての「小泉信者」の中にも、「菅直人が『脱原発』を言っても信用ならなかったが、小泉さんに言われると説得力を感じる」などと平然と言い放つ者がいる。

 現在、安倍政権は「エネルギー基本計画」を策定中で、今年の最終週に閣議決定されるらしいが、東京新聞は「『原発ゼロ』なし崩し 核燃サイクル・もんじゅも継続明記」*2とこれを批判している。しかし、現在はもはや小泉や小沢一郎(や橋下)らの例を挙げるまでもなく、かつて原発を推進した保守政治家や、彼らを応援して「自己責任」を声高に唱えた勝谷誠彦ら「電波芸者」どもの間にも「脱原発」論が広がっており、「脱原発」にも十分大きな慣性力が生じている。今後、日本政府の財政がますます逼迫することは必至だから、金ばかり食って全く結果を出せない核燃サイクルなど、いずれ撤退を余儀なくされる日が必ず来る。その時には安倍晋三原発や核燃サイクルを推進した責任を電事連や経産官僚に押しつけながら「脱原発」へと舵を切るだろう。その時になって安倍に悪態をつこうにも、安倍晋三には小泉純一郎ほど重い原発推進責任はない。小泉を無罪放免にして安倍だけ有罪にする理屈など成り立ちようがないのである。

 現在、政治戦に連戦連敗している「リベラル」勢力、とりわけ「小沢信者」たちの間には、論点を「脱原発」に絞る、というより「脱原発」に逃避しようとする傾向が強く見られる。「脱原発」論者でさえあれば、山本太郎二重橋から皇居に向かって90度の角度でお辞儀して天皇に「おわび申し上げ」ようが、三宅洋平が「民族がひとつになるための新しい時代の始まりや」と妄言を発しようが、すべてが許容される。彼らを咎めようものなら「原発推進勢力の『工作員』」呼ばわりしてくる。

 彼らは、ある日突然「敵」が消え失せてしまうであろうとは夢にも思っていないに違いない。

上記で赤字ボールドにした部分のうち、訂正を要する箇所が一つある。それは、安倍晋三が核燃サイクルを推進した責任を経産官僚に押しつけるだろうというくだりだ。今回廃炉の方向性が出されそうな「もんじゅ」は文科省の管轄であり、経産官僚はむしろ廃炉に積極的なのだ。安倍内閣は「経産省内閣」との異名をとるほど経産省とべったりだから、むしろ喜んで「もんじゅ廃炉へと走っているものと思われる。それは経産省の省益と一致するし、安倍晋三にとってはまたしても内閣支持率を上げる材料になる。安倍は笑いが止まらないはずだ。

なお、核燃サイクル自体の検討は続けることが名目として示されるであろうことは、何も後藤謙次の講釈など聞かされなくても、惰性力に身を任せて運営する官僚にとっては当たり前のことだが、上記朝日新聞デジタルの引用部分には表示されていない朝日の1面記事の末尾に、下記のように書かれている。

 会議では、もんじゅ廃炉にした場合、今後の高速炉研究のあり方についても検討を進める。経産省は、フランスの高速炉「ASTRID(アストリッド)」に協力する案を提唱。だが、アストリッドはまだ基本設計段階で、資金難などから計画を見直す可能性も指摘されており、実現性に疑問符がついている。

(2016年9月21日付朝日新聞1面掲載記事より)

要するに、「今後の高速炉研究のあり方」について具体的なことなど何も決まってないし決められないけれども、とりあえず「もんじゅ廃炉の方向性だけは出そうということだろう。

いつかその日が来るとは思っていたが、予想より早かったな、というのが私の感想だ。

*1:山田孝男は、小泉の「脱原発」論をまとめて毎日新聞社から本まで出した。今朝の朝日新聞に広告が出ていた。もちろん私はそんなものは買いも読みもしない。

*2:元記事にはリンクが張られているが、リンク切れのため現在では参照できない。