kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

小泉元首相の変節 「オレたちにウソ言ってきた」 大久保真紀(朝日)

今朝(12/15)の朝日新聞掲載コラムより。
http://www.asahi.com/articles/TKY201312140484.html

(ザ・コラム)小泉元首相の変節 「オレたちにウソ言ってきた」 大久保真紀

 「小泉純一郎です。大久保さんいる?」

 先月12日の昼、社会部の電話が鳴った。受話器を取ったのは今春入社の新人記者。どぎまぎしながら、取材で外に出ていた私の不在を伝えると、「談話のことを取り上げてくれてありがとう。よろしく伝えておいて」。それだけ言うと、電話は切れた。

 その2日前、私はこの欄でド…

朝日新聞デジタル 2013年12月15日05時00分)

以降は「朝日新聞デジタル」とやらに登録していないとネットでは読めないようだが、コラムの概略を下記に記す。

朝日新聞編集委員の大久保真紀記者が書いた記事の一節が元首相・小泉純一郎の琴線に触れたのか、一度は取材の申し込みを断った小泉の方から大久保記者に食事のお誘いがあった。会食の場で原発を推進してきた小泉が「脱原発」へと変節した理由を問うと、小泉は「電事連電気事業連合会)の言ってること、ウソじゃん」、「何年もオレたちにウソを言ってきた」などと答える。記者が「だまされたと思ったんですか」と聞くと「そうだよ。思ったよ」と答えたという。

この小泉の答えについて大久保記者は書く。

 じぇじぇじぇ。5年半も首相を務めた最高権力者がだまされたと嘆き、怒っているとは。でも、よくよく考えれば、日本はとんでもない国だ。正確な判断材料が一国の命運を左右する首相に示されず、安全神話を信じさせられてしまうのだから。小泉さんの変節は人間として何となく納得できるような気がした。
朝日新聞 2013年12月15日付「ザ・コラム」〜小泉元首相の変節「オレたちにウソ言ってきた」(大久保真紀編集委員執筆)より)

コラムは、記者が小泉に30本のバラの花束を手渡そうとしたが「一切もらわない主義だ」と断られ、「(今日のこと)書きますので」と言うと小泉は「アッハハッと高笑いし、片手を上げて去っていった。」と結ばれる。

コラムを読み終えて、あーあ、と、ため息しか出なかった。小泉は、日本の原発推進史上において、中曽根康弘正力松太郎田中角栄の「三悪」に次いで大きな寄与をした人間である。90年代には下火になっていた原発の新設が東電原発事故の直前まで再加速したのは、小泉が日本政府のエネルギー政策を転換したからである。小泉は「だまされた」と言うが、その気になれば原発の問題点など簡単に知ることができたはずだ。それなのに「だまされた」という小泉の言い分をそのままコラムに載せて小泉を無罪放免にしてしまうとは。

小泉が電事連経産省などの原発推進勢力に「だまされた」と言っているらしいことは、TBSのサンデーモーニングで、毎日新聞主筆岸井成格が言っていたから知っていたが、毎日も朝日も小泉が原発を推進した責任を問う姿勢が全くないことには呆れる。今朝の朝日・大久保記者のコラムも、8月に小泉の「脱原発」論を取り上げた毎日新聞山田孝男専門編集委員*1のコラムに言及し、小泉が「新聞記事の影響の大きさが改めてわかったよ。だって、月2〜3回してきた講演で同じこと話してきた。みんな無視したが、あの記事で無視できなくなったんだな」と言ったと、嬉しそうに書いていた。

確かに新聞記事の影響はバカにならない。「脱原発」を標榜する朝日新聞毎日新聞も、おそらく東京(中日)新聞も、小泉の原発推進責任を問わず、ひたすら小泉の発言を歓迎しているから、「脱原発」論者の間にも、「脱原発に頑張る小泉元首相を応援しよう」という空気が生じている。それは、かつて橋下徹小沢一郎が「脱原発」に「転向」した時よりもずっと支配力の強い「空気」だ。かつての「小泉信者」の中にも、「菅直人が『脱原発』を言っても信用ならなかったが、小泉さんに言われると説得力を感じる」などと平然と言い放つ者がいる。

現在、安倍政権は「エネルギー基本計画」を策定中で、今年の最終週に閣議決定されるらしいが、東京新聞「『原発ゼロ』なし崩し 核燃サイクル・もんじゅも継続明記」とこれを批判している。しかし、現在はもはや小泉や小沢一郎(や橋下)らの例を挙げるまでもなく、かつて原発を推進した保守政治家や、彼らを応援して「自己責任」を声高に唱えた勝谷誠彦ら「電波芸者」どもの間にも「脱原発」論が広がっており、「脱原発」にも十分大きな慣性力が生じている。今後、日本政府の財政がますます逼迫することは必至だから、金ばかり食って全く結果を出せない核燃サイクルなど、いずれ撤退を余儀なくされる日が必ず来る。その時には安倍晋三原発や核燃サイクルを推進した責任を電事連や経産官僚に押しつけながら「脱原発」へと舵を切るだろう。その時になって安倍に悪態をつこうにも、安倍晋三には小泉純一郎ほど重い原発推進責任はない。小泉を無罪放免にして安倍だけ有罪にする理屈など成り立ちようがないのである。

現在、政治戦に連戦連敗している「リベラル」勢力、とりわけ「小沢信者」たちの間には、論点を「脱原発」に絞る、というより「脱原発」に逃避しようとする傾向が強く見られる。「脱原発」論者でさえあれば、山本太郎二重橋から皇居に向かって90度の角度でお辞儀して天皇に「おわび申し上げ」ようが、三宅洋平が「民族がひとつになるための新しい時代の始まりや」と妄言を発しようが、すべてが許容される。彼らを咎めようものなら「原発推進勢力の『工作員』」呼ばわりしてくる。

彼らは、ある日突然「敵」が消え失せてしまうであろうとは夢にも思っていないに違いない。

*1:山田孝男は、小泉の「脱原発」論をまとめて毎日新聞社から本まで出した。今朝の朝日新聞に広告が出ていた。もちろん私はそんなものは買いも読みもしない。