kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

かつて「リベラル」の称賛の的だった「すき屋」、その過重労働の悪逆非道

すき屋」といえば、かつて一部の「リベラル」たちの間で一世を風靡したブログ記事があった。

ブログ主の「きっこ」は、上記ブログ記事と同時期に展開していた「マンション耐震偽装事件」追及で一躍有名になったが、その耐震偽装事件はブログ主のミスリードに反して、姉歯秀次の単独犯であったことが現在では明らかになっている*1。その「きっこ」は、「すき屋」に関しても読者をミスリードしていた。

当時、「すき家好きやブロガー同盟」なるものまで発足していた。

もっとも、私自身も2008年頃まで「きっこ」にはまっていた不名誉な過去があることを白状しておかなければならない。「きっこ」が「小沢信者」に転落したことによって、私はようやく呪縛から抜け出すことができた。

さて、「リベラル」たちの熱いラブコールを受けていた「すき家」(ゼンショー)は、とんでもない「ブラック企業」であることが今では広く知られるようになった。

http://mainichi.jp/select/news/20140801k0000m020106000c.html

すき家:残業は月109時間 24時間連続勤務も

 牛丼チェーン「すき家」の労働環境を調査してきた第三者委員会(委員長・久保利=くぼり=英明弁護士)は31日、調査報告書を発表した。すき家非管理職社員418人の平均残業時間が労使協定(月45時間)を大幅に上回る月109時間(今年3月)に上ったことなどを明らかにし、「現場は著しい過重労働が生じており、法令違反状況に至っていた」と指摘。運営会社のゼンショーホールディングス長時間労働を禁止するルールの策定や深夜の1人勤務体制(ワンオペ)の解消などを早急に実現すべきだと提言した。

 すき家の社員の所定労働時間は1日8時間で、労使協定は月45時間の残業を認めていた。だが、第三者委は、アルバイト、社員ら1074人から聞き取り調査やアンケート(551人が回答)などを実施した結果、報告書は「過重労働が常態化している」と認定。「是正できなかったのは組織の問題」と指摘した。

 労働基準監督署は、過労死について、基本的に発症の1カ月前の時間外労働(残業)が100時間か、2〜6カ月前の平均で80時間超だった場合に認めている。すき家の労働時間は、こうした「過労死ライン」を上回っていたことになる。

 久保利委員長は記者会見で、過重労働の原因について「短い間に急拡大した成功体験が経営陣にあり、従業員が犠牲になった」と述べた。また、「(創業者の)小川賢太郎ゼンショー会長兼社長と対等に会話できる社員が生まれていない」とも指摘し、社外役員の導入や幹部への法令順守研修−−などを提言した。

 小川会長兼社長も記者会見し、「可及的速やかに是正すべき点は是正する」として、労使双方が意見交換する場を設ける意向を示した。ただ、辞任や減俸などは否定した。

 「すき家」は今春、人手不足による従業員やアルバイト店員の労働環境の悪化が表面化。約2000店のうち、最大で約250店が一時的に閉鎖し、現在でも50店余りが休業している。

 第三者委は今年4月に設置され、弁護士ら外部の有識者で構成されている。【種市房子】

          ◇

 「恒常的に月500時間以上の勤務だった」「業務が多忙で2週間、家に帰れなかった」−−。「すき家」の第三者委員会がまとめた調査報告書で過酷な労働実態が浮かんだ。

 多くの従業員が長時間労働に関する証言を寄せた。すき家は「24時間365日営業」が売り物だが、24時間連続勤務は「回転」と呼ばれ、店舗勤務歴のある社員のほとんどが経験していた。ほかにも「3カ月に1度休みがあればいい方」「高校生のアルバイトを午後10時以降も勤務させ、親から多数の苦情が寄せられた」との声もあった。

 深夜に接客から清掃まで1人で勤務する「ワンオペ」も横行していた。強盗が発生したため、「一時的に深夜2人勤務になったが、すぐにワンオペに戻った」との指摘もあった。

 こうした勤務体系が災いして事故も相次ぎ、社員の居眠り運転による事故は2012年度に少なくとも7件を確認。「居眠り運転で事故を3回起こした」社員もいたという。

 退職者からは「(体重が)20キロやせて親に会ったら、辞めてくれと懇願された」「24時間勤務が続いて頭が回らない」との声も上がった。

毎日新聞 2014年07月31日 22時19分(最終更新 08月01日 01時34分)

なんともすさまじい実態だ。ワタミなども同じだが、まるでマルクスの時代、19世紀イギリスの工場を思わせる労働環境の過酷さだ。

ただ、19世紀イギリスの場合は、議会が「工場法」を制定し、労働時間短縮の圧力をかけた。工場主(資本家)は当初これに強硬に反対したが、結局は労働時間短縮をした方がかえって生産性が良くなることを資本家も学んだという歴史的事実がある。だが、当時資本主義の中心だった製造業と現在中心であるサービス業とは性格が違い、「技術革新によって生産性が飛躍的に上がる」ことは期待できない。だから経営者は労働者を可能な限り長時間働かせようとする。それを実践しているのが小川賢太郎*2ワタミ渡辺美樹である。

現在の日本が19世紀のイギリスにも増してひどいと思うのは、政治が財界の言いなりになり、率先して労働の規制緩和に走っていることである。渡辺美樹が、強い批判を浴びながらも昨年の参院選で当選し、自民党参院議員になったことは記憶に新しい。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130722/elc13072207430112-n1.htm

ワタミ創業の渡辺さん、未明に当選「逆風…みんなのおかげ」

 「本当にみんなのおかげです」「心から感謝しています」。22日未明になって、当選を決めた自民新人の外食大手ワタミ創業者、渡辺美樹さん(53)は、東京都大田区の選挙事務所で、支持者を前に何度もこう繰り返した。

 平成23年の東京都知事選に無所属で立候補したが落選。今回の参院選では、公示前にワタミの会長を辞任して、全国を駆け回った。選挙戦では、経営実績を生かして幅広い層に経済政策を訴えたが、ワタミの運営などを批判されることもあった。「思った以上に逆風だった」と語る。

 「当選確実」の一報を伝えられたのは、22日の午前3時半過ぎ。「(選挙戦終盤で)まずいかなという気持ちはあった。受かる受からないは天命だろうと…」と心境を明かした。

MSN産経ニュース 2013.7.22 07:37)

さらにさかのぼれば、2011年の東京都知事選に、渡辺美樹は「都議会民主党」の支援を受けて立候補した。さすがに生活者ネットの積極的な支持は受けられずに惨敗したが、民主党のていたらくも目を覆うものがある。この時点で渡辺美樹ブラック企業の経営者であることは既に広く知られていた。

それが、昨年の参院選で、あれほどの自民党の追い風を受けながら滑り込み当選しかできないところに渡辺は追い込まれていた。それを考えれば、政府の労働政策もさすがに今のままの延長がそういつまでも続くとも思えないが、とりあえず現時点においては、安倍政権の政策は労働の規制緩和一本槍の方向性を持つ。

現状は、ワタミだのすき家だのの過重労働で心身をすり減らした労働者は、政治について考える余裕もなく、自らの怒りを一票に込めることなど考えもつかないくらい疲弊しきっているどころか、「恒常的に月500時間以上の勤務だった」「業務が多忙で2週間、家に帰れなかった」「3カ月に1度休みがあればいい方」では、そもそも投票所に行く時間さえない。

だから彼らの声は政治に反映されず、選挙多数派である「満足せる人々」(by ガルブレイス)の意見が政治に反映されているのが現状なのである。

*1:ノビー(池田信夫)はこの例を引いて、「STAP細胞」研究不正事件も小保方晴子の単独犯だと主張しているが、こちらは小保方晴子笹井芳樹との「共同正犯」を仮定しない限り、不正の全体像を説明できないだろう。但し、小保方・笹井両氏以外の関与はほとんどなかっただろうとは私も推測している。ことに、一部「小保方信者」による若山照彦に対する攻撃は、不当極まりないものだ。

*2:かつてオートレース八百長の嫌疑を受けてプロ野球を永久追放された中日ドラゴンズのピッチャー(小川健太郎)と同じ発音である。