kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

谷垣禎一幹事長、小渕優子経産相の人事に見る安倍晋三のえげつない狙い

安倍晋三内閣改造人事は実にえげつないものであると同時に、安倍晋三の狙いが透けて見えるものであった。まず第一に言えることは、早期の解散総選挙の線がほぼ消えたということだ。安倍晋三は、総選挙で圧勝して長期政権を確実にする道ではなく、手堅く来年の総裁選を勝ち抜く腹なのであろう。

それは、幹事長に巷間噂された小渕優子ではなく、谷垣禎一を持ってきたことからわかる。小渕優子を幹事長に持ってくると予想した人たちの狙いは、早期の解散総選挙を狙った人気とりというものだ。これには前例があって、小泉純一郎が2003年9月に、当時拉致問題で「頭角を現して」人気があった安倍晋三を幹事長に持ってきたことがあった*1

しかし幹事長は小渕優子ではなく谷垣禎一であった。この人事から私が予想したのは、安倍晋三は消費税率を10%に引き上げるつもりらしいということだ。周知のように、谷垣禎一野田佳彦らと「社会保障と税の一体改革」を推進した人間であった。その谷垣を幹事長に抜擢したのは、消費税率を10%に引き上げて景気をさらに悪化させた場合、その責任を谷垣に押しつけようという腹であろう。消費税率の再引き上げは既定路線となっており、官僚もその線で動いていると思われる。官僚が何よりも嫌うのは惰性が妨害されることである。官僚の抵抗は政権運営に煩わしさを増すだけらから、安倍晋三が消費税率の再引き上げに待ったをかけるとは、私には想像できないのである。

では人気とりのポジションを与えなかった小渕優子をどう処遇したかといえば、経産相への抜擢である。抜擢といえばきこえは良いが、これまで経産相といえばゴリゴリの原発推進派の政治家が就いてきたポストだ。今までは茂木敏充だったし、古くは甘利明が就いていた。民主党政権時代にも、旧民社の直嶋正行(鳩山政権)や、菅直人玄海原発再稼働を阻止されて悔し涙を流した海江田万里(菅政権)などが経産相を務めた。何しろ経産相といえば原発推進の本家本元だから、原発推進派でなければ務まらないポストといっても過言ではない。

その経産相小渕優子を就ける。これには2つの狙いがあって、1つは、年内はもう無理らしいが、来年早々にも迫った川内原発再稼働を皮切りに、電力各社の原発を次々と再稼働していこうと安倍晋三が狙っている際に障害となっている民意の反発を、小渕優子原発再稼働を訴えさせることによって和らげようとするものだ。もう1つは、小渕優子にそうした「汚れ役」をやらせて人気を下降させ、安倍のお気に入りらしい稲田朋美だの高市早苗だののライバルにならないように力を殺ぐという狙いだ。安倍は過去に、もともと(自民党議員としては比較的)リベラルな思想信条の持ち主だったらしい森雅子特定秘密保護法案の担当大臣にさせたことがある。森雅子が答弁に窮する姿は大いにイメージダウンにつながった。森は例えば「西山事件特定秘密保護法の処罰の対応になり得る」と答弁して岸井成格の激怒を買い、岸井はテレビでこの森の答弁を繰り返し批判したものだった。小渕優子の役回りは森と同じである。どうせなら高市早苗とか稲田朋美とかいった連中に「原発再稼働」を叫ばせれば憎々しくて憎みがいがあるのにとは、脱原発派の多くが思うところであろうが、安倍晋三がそんなことを許すはずがないのである。

谷垣禎一を幹事長に、小渕優子経産相に、そして石破茂を「伴食大臣」相当の地方創生相にそれぞれ任命して、安倍晋三の党内権力基盤の安定化路線は大成功に見える。だが、往々にしてそういうピークの時に、権力の崩壊の兆しが現れるものである。安倍晋三は自らの政権を浮揚させた「経済」によって足下をすくわれることになるだろう。

*1:但しこの「人気とり」は失敗し、2003年11月の衆院選自民党議席を減らしたのだった。