kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「タリウム」といえば「静岡の(元)少女」

http://mainichi.jp/select/news/20150129k0000e040216000c.html

女性殺害:女子学生、中学時代に毒キノコ研究

 名古屋市昭和区のアパートで昨年12月、同市千種区の森外茂子(ともこ)さん(77)を殺害したとして、愛知県警が殺人容疑で逮捕した名古屋大学の女子学生(19)は、中学生時代から毒物に強い関心を持っていたことが、当時の同級生への取材で分かった。女子学生は「人を殺してみたかった」「高校時代、同級生に毒を飲ませた」などと話しており、県警は動機解明に向け、生い立ちなども調べる方針。【山本佳孝、永野航太】

 同級生によると、女子学生は、東北地方の実家から中学校に通っていた頃、「毒に興味を持っている」と話し、インターネットなどで毒キノコや化学薬品を熱心に調べていた。自宅には複数のビーカーが転がっており、「自分で作った薬品をハムスターにかけた」とも話していたという。

 また、ハサミやカッターをポケットに入れて持ち歩いていた。猫の脇腹にハサミを突きつけ、「中身を見てみたい」「しっぽを切りたい」と話したこともあったという。

 女子学生は中学の卒業文集に「いままでありがとー! いつかまた会おうゼ! 忘れんなよ」と書いた。自身のことを「おれ」と呼ぶなど個性が強かったというが、優しい一面もあり、友達の悩み事の相談に乗ることもあったという。同級生は「事件はショックだが、『やっぱり』という思いもある」と複雑な心境を明かした。

 愛知県警によると、女子学生は昨年12月7日に森さんを殺害したとされる。翌日、室内に遺体を残して実家に帰省し、今月26日に名古屋に戻り、27日に逮捕された。調べに対し「26日夜は遺体を放置したアパートで寝た」と話しているという。

 タリウム入りか、自宅で容器押収

 名古屋大の女子学生(19)の自宅アパートから、薬品のような粉末などが入った複数の容器が押収されていたことが、愛知県警の捜査関係者への取材で分かった。女子学生のものとみられるツイッターの投稿などから、毒性の強い「タリウム」の可能性もあるとみて県警が鑑定を進めるほか、入手経路も調べる。

 タリウムは毒劇物取締法で18歳未満への販売が制限されている。ツイッターには「硫酸タリウムの半数致死量は1g(成人男性)だろ?」などの投稿があった。【三上剛輝】

毎日新聞 2015年01月29日 15時00分


容疑者の大学生の名前は、ネット検索によって知っているが書かない。どういうわけか菅野美穂を思い出したとだけ書いておく。但し、容貌や名前(本名)に共通点があるわけではない。それから、事件の中身から想像がつくように、容疑者が理学部の学生であることは書いておく。

「キノコ」と「タリウム」 - Living, Loving, Thinking, Again より

タリウム」ということだと、検索して上位で引っかかるのは、「東大技官タリウム事件」*1。こちらの方は、加害者も被害者も男性ではある。


私が思い出したのは、10年前に起きた静岡の事件だった。上記記事に引用されている 東大技官タリウム事件 にも、

 05年、静岡県内の女子高生が、母親にタリウムを飲ませるという事件が起こった。日本犯罪史上、福岡大学病院事件、東大技官事件に次いで3例目のタリウム事件だった。

と書かれている。

なぜこの事件を思い出したかというと、同じ2005年の耐震強度偽装事件で「きっこ」がブレイクする*2直前に書かれた下記記事に引用された、犯人の少女(当時)が書いたブログ記事の印象が強烈だったからだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015012902000141.html

名古屋77歳殺害 容疑の学生宅 薬品押収

 名古屋市千種区春里町の無職森外茂子(ともこ)さん(77)が殺害された事件で、愛知県警に殺人容疑で逮捕された名古屋大の女子学生(19)の自宅アパートから複数の薬品が押収されていたことが、捜査関係者への取材で分かった。毒性の強い「タリウム」が含まれている可能性があるという。女子学生は調べに対し「子どものころから人を殺してみたかった」と供述しており、県警は押収品の鑑定を進めるとともに、薬品を入手・保管していた目的も調べる。

 捜査関係者によると、薬品は女子学生が森さんを殺害した名古屋市昭和区の自宅アパートに保管されており、販売が制限されている毒劇物が含まれている可能性がある。劇物タリウムは法律で十八歳未満への販売が禁じられている。

 女子学生は昨年四月、自分の短文投稿サイトに「薬局での品物取り寄せは日常茶飯事よ」と書き込み、十一月には「硫酸タリウムの半数致死量は1g(成人男性)だろ?」「未開封の硫酸タリウム瓶には25g、つまり約13人分の生命が入っているわけだ!」−などと投稿していた。

 女子学生は県警のこれまでの調べに「高校生のころ同級生に毒を盛ったことがある」と供述。この学生が通っていた東北地方の高校では二〇一二年六月ごろ、生徒が飲み物を口にした後、失明しそうになったトラブルが実際に起きていた。県警は今後、供述内容とトラブルとの関連を調べる方針だが、この高校の関係者は「生徒が失明しそうになったのはタリウムが原因だった」としている。

 女子学生は、森さん殺害について「人を殺してみたかった」と容疑を認め、凶器の手おのは「数年前に手に入れた」と供述。手おのは長さ三十七センチ、重さ九百グラムで、キャリーバッグにノートパソコンなどと一緒に入れられていた。

 <タリウム> 鉛に似た白色金属。硫酸タリウムはネズミを殺す薬として使われていた。水に溶けやすく、成人の致死量は約1グラム。摂取すると頭痛や下痢の後、幻覚や昏睡(こんすい)などの神経症状が現れ、重症になると呼吸まひで死亡する。2005年には静岡県の女子高生が母親に摂取させ、重体にさせた殺人未遂事件があった。

東京新聞 2015年1月29日 朝刊)


2005年の静岡の事件と2012年の宮城の事件との間には、あまりに共通点が多いことに驚く。犯人はともに高校二年の女子生徒で、ともに学業優秀で、かたや自分を「俺」と呼び、10年前のブログ記事の一人称に「僕」と書いた。そして二人とも(おそらく薬品の致死量を知っていながら)被害者を死には至らせしめなかった。今回の名古屋大生は、高校生の頃に静岡の事件をネット経由で知っていたのではないかと思ってしまった。一方、最大の相違点は、静岡の事件が新聞沙汰になったのに対し、宮城の事件はこれまで明るみに出なかったことだ。今回報道されたことで、「日本犯罪史上、4例目のタリウム事件」ということになるのか、それともその間に同じ薬物(おそらく硫酸タリウム)を用いた他の犯罪があったかどうかは知らない。

私にとって静岡の事件の印象は非常に強烈だった。その後あの母親はどうなっただろうかと思ってネット検索をかけたこともあるし、例の小沢一郎が推奨した「トリウム原発」の件を知った時も、名前の似ているタリウムを思い出したほどだ。蛇足ながらタリウム原子番号81の重金属だが(放射性同位体は別として)放射性物質ではないのに対し、トリウムは原子番号90の放射性物質だ。タリウムの名前はギリシア語の「緑の小枝」を表す thallos に由来するるのに対し、トリウムは北欧神話の雷神トールが由来で、日本語の名前は似ているが由来は全然違う。シャーロック・ホームズの短篇に出てくる「ソア橋」のソアも雷神トールのことなので、河出書房・河出文庫の訳では「トール橋」とされている。話がそれてきたが、静岡の元少女も名古屋大生も、薬品の知識にかけてはシャーロック・ホームズにもひけをとらないのではないかと強引に話を戻して記事を終わりにする。

*1:http://yabusaka.moo.jp/toudai-tariumu.htm

*2:但し、「きっこ」の耐震強度偽装事件の追及は的外れであったことが現在では知られている。姉歯秀次は単独犯であり、「総合経営研究所」の内河健四ヶ所猛両氏への嫌疑は事実無根だった。「きっこ」の尻馬に乗った民主党馬淵澄夫は、当時犯した誤りを総括すべきであろう。