「イスラム国」による昨年8月の湯川遥菜氏拘束と同10月の後藤健二氏拘束以降、安倍晋三や菅義偉や外務省の官僚がどういうことをして、どういうことをしなかったかという件は、当然ながら具体的な事実が提示され、それに基づいた検証がなされるべきだが、あろうことか安倍晋三は検証の対象となる事実を「特定秘密」に指定して国民の目から隠そうとしている。
私はそもそも「特定秘密保護法」は違憲立法だと思う。日本国憲法第81条は、
と定めている。違憲立法に従う必要などない。
ジャーナリストは、かつて沖縄返還に絡む「日米密約」に挑んだ西山太吉元毎日新聞記者のように、安倍政権が恣意的に定めた「特定秘密」によって隠されようとしている真実に肉薄すべく戦いを挑むべき時であろう。
この際、そのジャーナリストが、政府が勝手に定めた「特定秘密」を世に公表しても、それは犯罪にはならないと私は堅く信じる。違憲立法はそもそも無効な法律だからだ。
こう言うと、ソクラテスが言ったという「悪法も法なり」という言葉を持ち出して反論する向きもあるかもしれないが、「悪法も法なり」という言葉に代表される「法治主義」の考え方は誤りであり、「法の支配」の考え方が適用されるべきだと中学校で習ったのは、三木武夫政権の頃だったか福田赳夫政権の頃だったか。
以下、「目指せ一発逆転早稲田大学合格!政治経済受験のための必勝勉強法」と銘打ったサイトに掲載されている「法の支配と法治主義」(2013年6月14日)から、「法の支配」と「法治主義」の違いについて示しておく。下記は、高校で「政治経済」の科目を選択した生徒にとっては常識の範疇に属する事柄である。
1.法の支配
(1).法の支配とは何?
↓
答:政治が人権保障を目的とする理性の法に基づいて行われ、すべての国家権力がこの理性の法に拘束される、という原則
(10).法治主義とは何?
↓
答:行政の効率化のために、法律に基づく政治を行うという原則のこと
(11).法治主義はいつどこで発達した?
↓
答:19世紀のドイツやフランスなどの立憲君主制の下で発達した
(12).法治主義の問題は?
↓
答:法律の内容が人権保障の法でなくても、すべて合法とされたため、人権の抑圧の手段として使われてしまったところ。
(13).「悪法も法なり」という言葉に代表される、議会制定法がすべての正当性の根拠であるという立場を何という?
↓
答:法律万能主義
なお、ソクラテスが「悪法も法なり」と言った、とされるのは、日本でしか通用しない「俗説のウソ」である。たとえば下記記事を参照。
- 「悪法もまた法なり」の呪縛:国籍法12条撤廃連絡協議会:So-netブログ(2009年12月18日)
中学や高校の勉強のおさらいはこのくらいにして、違憲立法であると思われる「特定秘密保護法」に挑戦することは、心あるジャーナリストにとって大きな仕事だ。それには、権力ににらまれて逮捕されたり裁判にかけられて有罪判決を下されるといった、かつて西山太吉氏が現に経験したリスクがあるが、戦場で自らの命を危険に晒しながら事実を伝えようとする行為と同様に、価値のある仕事だと思う。