kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

長谷川幸洋、半田滋、そして国家総動員体制

3日前に東京新聞長谷川幸洋が書いた記事を全文引用した上で長谷川をこき下ろしたが、長谷川は1953年生まれの62歳である。朝日新聞でいえば58歳の冨永格(元「天声人語」子)や60歳の星浩(元論説主幹代理)といった「特別編集委員」、つまり名誉職で日曜日の2面に駄コラムを書いて悠々自適の余生を送っている人たちより年上なのに、いまだ現役の論説記者として東京新聞中日新聞)の論調を一定程度支配している。長谷川は決して社内で干されているわけでも何でもなく、東京新聞中日新聞)にとっては社に置いておくことによって新聞の売り上げにメリットがあると考えているから長谷川を社に留め置いていることは絶対に間違いない。

社の内外にも長谷川のシンパは大勢いる。たとえば、朝日新聞大鹿靖明(この人も私の買わない記者だ)とは、互いに相手をインタビューし合うという、実に気持ちの悪い関係にある。


こんなのを見てると、東京新聞朝日新聞もどっちもどっちとしか思えない。もちろん毎日新聞その他とて同じだろう。

とはいえ、東京新聞にはまともな論説記者もいる。半田滋氏もその一人だ。下記のコラムは、『きまぐれな日々』にいただいた鍵コメで教えていただいたもの。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2015052002000136.html

【私説・論説室から】
よみがえる国家総動員

2015年5月20日


 先の大戦でたいへんな思いをしたのは「外地の兵隊さん」だけではなかった。国家総動員法のもと、国民とその持ち物が政府により徴用され、やがて空襲が始まった。

 安倍晋三内閣が国会提出した安全保障法制にも「国家総動員体制」が明記されている。存立危機事態、すなわち他国を守るための武力行使が追加された武力攻撃事態法、特定公共施設利用法の両改正案を読めば分かる。

 他国の戦争であっても時の政権が日本存立の危機であると判断した場合、首相が対処基本方針を定めることになる。この方針に従い、港湾、飛行場、道路、海域・空域、電波について、自衛隊と米軍など他国の軍隊の利用が優先される。

 自衛隊や他国軍への協力が義務付けられるのは中央省庁や都道府県庁、市町村役場だけではない。協力が責務とされる指定公共機関として日銀、日本赤十字、NHK、民放、通信、電力、ガス、商船、航空、JR、私鉄、バスなど百五十二社・機関が並び、改正案にそっくり引き継がれた。国民は「必要な協力をするよう努める」とされている。

 武力攻撃事態法、特定公共施設利用法は、日本が武力攻撃を受けた際の対処策のはずである。これを「他国の防衛」にまで広げるのだから「銃後の国民」も無関係ではいられない。たいへんな思いをするのは「戦地の自衛隊さん」だけではない。    (半田滋)


実を言うと、戦前の日本において、格差拡大の挙げ句の果てに「国家総動員体制」が現れたメカニズムを私はよく理解できていないのだ。

戦前の日本においても、軍隊には貧しい農村出身者が多かった。5・15事件(1932年)の後には犯人への助命嘆願が起きたし、2・26事件(1936年)で処刑された磯部浅一は、昭和天皇が貧しい農民や労働者の側にではなく、富裕層、特権階級の側についてしまったとして、激しく昭和天皇を非難する遺書を残している。

しかしその2年後の1938年には、第1次近衛内閣によって国家総動員法が成立してしまうのだ。なぜこのような大転換が急激に起きたのだろうか。そうでもしなければ戦争が継続できなかったからなのかもしれないが、それにしても変化が急激すぎるのだ。たとえば、それまでの格差の温存ないし拡大を助けていたと思われる税制に代わって、極端な所得税累進課税が実施されるなどした。特に経済政策に焦点を当てた場合、国家総動員体制の前と後では信じられないほどの大転換が行われたのである。安倍晋三の敬愛する母方の祖父・岸信介はその大転換を主導した集団の一員だった。

結局富裕層や特権階級が占めていた富も戦争で消尽してしまうことによって、戦後、「実力のある者が這い上がれる」社会が一時的に生まれたといえる。何度も書くが、三角大福(中)という、世襲でない総理大臣が何代も続いたのは、戦争によって日本社会が一度リセットされた影響が多分にあるだろうと私は考えている。

それが再び世襲貴族が日本を牛じる時代になった。そして世襲貴族全盛時代の象徴とも権化ともいえる安倍晋三の政権下で、再び「国家総動員体制」の再現が目論まれているのだ。なんとも嫌な歴史の繰り返しである。

*1:この記事で、長谷川が『日本国の正体』と題した本で「山本七平賞」を受賞した経歴があることを知った。かの孫崎享も同じ賞を受賞している。