kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

憲法違反の安保法案が成立

憲法違反の安保法案がついに成立した。

いわゆる「客観報道」スタイルの新聞記事としては、下記に掲げる朝日新聞の記事がよくまとまっている。

http://www.asahi.com/articles/ASH9M0GMCH9LUTFK02S.html

安全保障関連法が成立 参院本会議、自公など賛成多数
2015年9月19日02時28分

 安全保障関連法が19日未明、参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決され、成立した。民主党など野党5党は18日、安倍内閣不信任決議案の提出などで採決に抵抗したが、自民、公明両党は否決して押し切った。自衛隊の海外での武力行使に道を開く法案の内容が憲法違反と指摘される中、この日も全国で法案反対のデモが行われた。

 同法採決のための参院本会議は19日午前0時すぎに開かれ、同2時に採決が始まった。

 同法を審議してきた17日の参院特別委員会で採決が混乱し、野党側は無効だと指摘したが、鴻池祥肇(よしただ)委員長は本会議の冒頭、「採決の結果、原案通り可決すべきものと決定した」と報告した。その後、各党が同法に賛成、反対の立場から討論。民主の福山哲郎氏は「昨日の暴力的な強行採決は無効だ。法案が違憲かどうかは明白で、集団的自衛権の行使は戦争に参加することだ」と主張。一方、自民の石井準一氏は「限定的な集団的自衛権の行使を可能にすることで日米同盟がより強固になり、戦争を未然に防ぎ、我が国の安全を確実なものにする」と反論した。各党の討論後、採決が行われ自民、公明両党などが賛成し、可決、成立した。

 安保関連法の採決を阻もうと、野党は抵抗を続けた。民主は17日夜から18日午後にかけ、参院中谷元・防衛相の問責決議案などを相次いで提出した。決議案はいずれも与党などの反対多数で否決された。また、民主党、維新の党、共産党社民党生活の党と山本太郎となかまたちの5党は18日、内閣不信任決議案を衆院に共同提案したが、否決された。

 安保関連法は、改正武力攻撃事態法、改正周辺事態法(重要影響事態法に名称変更)など10本を一括した「平和安全法制整備法」と、自衛隊をいつでも海外に派遣できる恒久法「国際平和支援法」の2本立て。「日本の平和と安全」に関するものと「世界の平和と安全」に関係するものにわかれる。

 「日本の平和と安全」については、改正武力攻撃事態法に集団的自衛権の行使要件として「存立危機事態」を新設した。日本が直接、武力攻撃を受けていなくても、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃されて日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態で、他に適当な手段がない場合に限り、自衛隊武力行使できるようにする。

 また、朝鮮半島有事を念頭に自衛隊が米軍を後方支援するための「周辺事態法」は「重要影響事態法」に変わる。「日本周辺」という事実上の地理的制限をなくし、世界中に自衛隊を派遣できるようにした。後方支援の対象は、米軍以外の外国軍にも広げる。

 「世界の平和と安全」では国際平和支援法で、国際社会の平和と安全などの目的を掲げて戦争している他国軍を、いつでも自衛隊が後方支援できるようにする。この際、国会の事前承認が例外なく義務づけられる。これまでは自衛隊派遣のたびに国会で特別措置法を作ってきた。

 国連平和維持活動(PKO)協力法も改正。PKOで実施できる業務を「駆けつけ警護」などへ拡大。自らの防衛のためだけに認められている武器使用の基準も緩める。

 安保関連法は、安倍内閣が5月15日に国会に提出。衆院特別委で約116時間の審議を経て、7月16日に衆院を通過。参院特別委では約100時間審議された。

 安倍首相は19日未明、同法成立を受け、首相官邸で記者団に「必要な法的基盤が整備された。今後も積極的な平和外交を推進し、万が一への備えに万全を期していきたい」と述べた。

朝日新聞デジタルより)


上記は19日の朝刊1面記事とほぼ同じだ。ただ、法案の成立が朝刊の締切前だったので、朝刊には「成立する見通しになった」と書かれている。

良くも悪くも朝日らしい記事だ。記者の主観を排したわかりやすいまとめになっていることが「良い」点で、憲法の縛りを骨抜きにして行政(ひいては軍隊)の行為が優先するという憲法法案の法律に対する強い批判をまとめの記事に反映させなかった点が「悪い」点である。両者は相矛盾するものだが、これほどの世紀の悪法の成立に際しても、上記記事のように純粋な「客観報道スタイル」に徹するのは、いかにも朝日らしくはあるけれども私には大いに不満だ。とはいえ同じ客観報道スタイルの毎日のまとめ記事よりは朝日の方が出来が良いと思う。毎日は、第1次安倍内閣時代に教育基本法が改悪された翌日、2006年12月16日付の朝刊1面では、安倍内閣日本会議の関係を指摘した思い切った記事を書いたことがあって、私はこれに感心してブログに取り上げたし、この時の1面記事の切り抜きを今もどこかに保存してあるはずだが、今回はそうはいかなかったようだ。

一方、朝日や毎日とはスタイルの異なる1面記事にしたのは、リベラルや「リベラル」の間にファンの多い東京新聞である。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015091902000112.html

戦後70年「戦える国」に変質 安保法案成立へ 憲法違反の疑い
2015年9月19日 朝刊

 戦後の安全保障政策を転換する法案が十九日未明の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立する。歴代政権が禁じていた他国を武力で守る集団的自衛権の行使が解禁され、日本が攻撃を受けていない場合でも戦争に加わることが可能になる。戦後七十年の間、平和憲法の下で「戦えない国」の道を歩んできた日本は、憲法学者ら多数が憲法違反と指摘する法案が成立することにより、「戦える国」に大きく変質することになる。

 成立阻止を目指した野党は十八日、衆院安倍内閣不信任決議案、参院に首相問責決議案などをそれぞれ提出したが、いずれも与党などの反対多数で否決された。参院本会議の安保関連法案の採決では、与党のほか次世代、元気、改革の野党三党が賛成する。

 安保法制では、米国など「密接な関係にある」他国への武力攻撃によって日本の存立が脅かされる「存立危機事態」と政府が認定すれば、集団的自衛権に基づいて武力を行使できる。首相は、法制で定めた武力行使の新三要件がどんな状況なら満たされるのかについて「総合的に判断する」との説明に終始し、基準を明確にしなかった。

 これに対し、野党に加え、憲法学者や元内閣法制局長官らから、従来の政府見解と整合性がなく、専守防衛を逸脱しているとの批判が相次いだ。首相は「合憲と確信している」との主張を最後まで変えなかった。

 戦闘活動中の米軍や他国軍への支援では、自衛隊活動地域を定めた従来の「非戦闘地域」の規定を撤廃。弾薬の提供などが解禁される。自衛隊の海外活動は飛躍的に拡大し、戦闘に巻き込まれる危険は高まる。日本周辺以外での国際紛争の際、そのたびに特別措置法を制定しなくても他国軍を支援できるようになる。

 安保法制は、集団的自衛権行使の要件を定めた武力攻撃事態法など十本の現行法の一括改正と、国際紛争時の他国軍支援を目的に自衛隊派遣を随時可能とする新法の総称。来年三月までに施行される見通しだ。

◆来年参院選 国民が審判 論説主幹 深田実

 安倍晋三首相は安全保障法制に関し、国民の理解が得られていないことを認めながら「成立し、時を経ていく中で間違いなく理解は広がっていく」と言い切っている。首相の方針に対する国民の判断は、来年夏の参院選での民意に委ねられることになる。

 首相は安保法制の制定に関し、昨年十二月の衆院選自民党が公約、勝利したとして、国会審議で「国民から強い支持をいただいた」と強調していた。だが、自民党衆院選で主に争点にしたのは経済政策で、安倍政権の「アベノミクス」の継続を前面に掲げた。「安保法制の整備」は公約の片隅に短く載せただけだった。衆院選以降の各種世論調査でも一貫して法整備への反対が多く、首相も今なお国民への理解が浸透していないことを認めざるを得なかった。

 参院選で安保法制が主要な争点となるのは確実。国会で廃案を目指してきた民主、共産などの野党は、参院選でも法制への反対を前面に出して選挙に臨む。その結果は、日本の安全保障政策を左右することになる。

◆不戦の意志貫こう

 新安保法制が成立しようとも、日本人の心には変わらぬものがあるにちがいない。それは戦後日本の精神、不戦の意志とでもいうべきものだ。

 振り返れば、冷戦が終わってPKO協力法が成立した。国際貢献の名の下「普通の国」へという声が出ていた。しかしながら反対も強かった。とりわけ戦争体験者は自衛隊が海外へ行くことに不安をもった。法律には武力不行使のタガがはめられた。ぎりぎりの不戦である。

 そして今、安保法案に対し戦争世代は無論、戦争を知らない世代も多くが反対した。違憲の疑い、内容のあいまいさ、民主主義の軽視など理由はさまざまだ。だが底流には日本が築き上げてきた有形無形の不戦の意志が働いている。

 有形の部分とは、たとえばアジアの国々への経済支援がある。支援は繁栄を生み、やがて信頼となる。平和醸成である。

 無形の部分とは、不戦・非戦の精神である。武力不行使は世代を超えて引き継がれている。

 アメリカを悪く言いたくはないが、トリガー・ハッピーと俗に呼ばれる。トリガー、引き金をひきたがるとは好戦的ということだ。巨大軍需産業国の宿命かもしれない。不戦の精神の反対だ。新安保法制は不戦の日本をアメリカの戦争の下請けにしかねない。

 政府は日本周辺の緊張をしばしば持ち出した。中国は軍備を強大化させ、北朝鮮は核をもつ。日本は日米同盟を保持すると同時に東アジアの一員でもある。緊張をあおるより融和と秩序形成の役割を果たすべきだろう。

 平和主義は、センチメント、情緒的という見方がある。逆に自衛隊の海外活動が高い評価を得てきたのは武力行使をしないからだという指摘もある。実際、武力はテロを拡散させている。そうならば武力不行使はセンチメンタルどころか平和創出のリアリズムではないか。

 法律が成立しても国民多数が望まぬなら不用にできる。政治勢力は選挙で決まり、違憲の訴えは司法が裁く。不戦の意志を持ち続けよう。日本の針路を決めるのは私たちなのである。

東京新聞より)


「不戦の意志貫こう」は悪くないのだが、主張を押し出すスタイルの記事にするのなら、「立憲主義」がないがしろにされたことに対する批判を1面トップ記事に入れた方が良かった。もちろん東京新聞も同じ今朝の朝刊に「『立憲主義』を軽視 9条従来解釈と矛盾」と題した別記事を載せてはいるが。

なぜかというと、「『立憲主義』の蹂躙」に対する批判であれば、保守派の中にも少なからずいる良識派の人々に対しても一定の影響力のある主張になると思うからだ。現に憲法学者小林節は9条改憲を長年主張してきた明白な保守派だし、長谷部恭男は9条護憲派ではあるものの自衛隊合憲論の立場をとり、憲法学者の間では「保守派」に分類されていると聞く*1立憲主義の蹂躙は、民主主義の根幹にかかわる大問題であって、TBSで岸井成格が必ず、いの一番に唱えることでもある。その岸井は、18日の『NEWS23』で、安保法案の成立を「日本の土台を破壊!」と総括した。この問題の核心を突いた言葉だった。何もリベラルや左派ならずとも、まともな保守派なら批判して当然だ。東京新聞のように論点を「不戦」に絞りすぎては、法案、いやもはや法律となったが、それへの批判の浸透力に限界があり、保守派には十分に浸透しない。

なお、東京新聞というより、日本ジャーナリズム界における最低最悪の記者の一人である中日新聞東京新聞の論説副主幹・長谷川幸洋は、相も変わらず『現代ビジネス』に極悪記事を書いている。こんな奴を平然と使い続けるから中日新聞社講談社も信用ならないのである。

最後に、保守派の観点から書かれたロイターの記事が興味深かったので挙げておく。

http://jp.reuters.com/article/2015/09/18/japan-security-bill-pass-upper-house-idJPKCN0RI20C20150918?sp=true

International | 2015年 09月 19日 04:29 JST
安保法案成立、湾岸戦争以来の宿題片付く 首相の手法に批判も


[東京 19日 ロイター] - 安全保障の関連法案は19日未明、参議院本会議で可決、成立した。集団的自衛権の行使が可能になるほか、他国軍への後方支援や平和維持活動の任務が広がる。

日本の防衛に専念にしてきた自衛隊は、湾岸戦争以来の課題だった他国軍との関係強化や海外活動の拡大に向けた態勢が整うことになる。一方で、歴代政権が積み上げてきた憲法解釈を変更するなど、成立までの安倍晋三政権の手法には批判も絶えない。

<第1次内閣からの念願>

17日の参議院特別委員会の強行採決を受け、一段と反発を強めた民主党など野党5党は、18日の本会議で徹底した引き伸ばし作戦を展開した。参院中谷元防衛相や安倍首相への問責決議案などを連発。衆院でも内閣不信任決議案を提出した。

与党と次世代の党など野党3党は、これらを1つずつ否決。法案採決は19日未明までずれ込み、「憲法違反」という野党の合唱の中、参院本会議で可決、成立した。

第1次内閣のときからの念願を果たした安倍首相は成立後、官邸で記者団に対し、「国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要な法制であり、戦争を未然に防ぐためのもの」と意義を強調。一方で「世論調査の結果によれば、まだこれから粘り強く、丁寧に法案の説明を行っていきたいと思う」と述べた。

<「壁を越えた」>

湾岸戦争からずっと抱えてきた宿題がこれで片付く」──法案の成立について、自衛隊幹部はこう話す。

ペルシャ湾で掃海活動をした1991年の湾岸戦争以来、日本は自衛隊の役割拡大と憲法の狭間で揺れてきた。93─94年の朝鮮半島危機を受け、米軍の後方支援を可能にする周辺事態法を制定。2001年の米同時多発攻撃では、特別措置法を作ってインド洋に補給艦を派遣した。

法案が成立したことで、日本と密接な他国が攻撃された場合でも、自衛隊が反撃できる集団的自衛権の行使が可能になる。他国軍の後方支援に特措法は必要なくなり、対象が米軍以外にも拡大、活動範囲や内容も広がる。国連以外の平和維持活動にも参加が可能となり、武器の使用基準が緩和される。

「20年間少しずつ、たとえばPKO(平和維持活動)法や周辺事態法、有事法制を作っていく中で積み上げていった」と、小野寺五典・前防衛相は言う。「一部であっても集団的自衛権の行使容認、海外で自衛隊員が任務を遂行するための武器使用。今までとても超えられなかっただろうと思う大きな壁について、今回は乗り越えた」と話す。

<権力の使い方に批判>

だが、壁の越え方には批判の声が広がっている。連日の国会周辺のデモでは、抗議の矛先が法案そのものだけでなく、安倍首相の政治手法にも向かった。

昨年7月、政府は集団的自衛権の行使はできないとしてきた歴代政権の憲法解釈を見直した。その半年前に国会で憲法解釈について質問された安倍首相は「先ほど来、(内閣)法制局長官の答弁を求めていますが、最高の責任者は私です」と述べ、首相が自由に解釈を変えられると取られかねない発言をした。

国会に参考人として呼ばれた憲法学者や、公聴会に公述人として呼ばれた最高裁の元判事の違憲表明にも耳を貸さなかった。「法的安定性は関係ない」と発言した礒崎陽輔首相補佐官、米軍幹部に法案成立時期の見通しを語ったとされる河野克俊統合幕僚長の問題は、うやむやのままだ。

慶應義塾大学の添谷芳秀教授は、集団的自衛権の行使容認は必要と指摘する一方、「今回の変化を合憲と主張するのは大問題だ」と言う。「首相の権力の使い方は少し権威主義的過ぎる。党内の反対意見まで威圧し、そのやり方は非民主的だ」と話す。

安保法制は半年以内に施行される見通し。南スーダンに派遣中のPKO部隊に、他国部隊や国連職員を助ける駆け付け警護の任務が追加される可能性がある。

(ロイター通信より)


要するに安倍晋三という頭の悪い人間は、自分が一番偉い。だから何でも好き勝手にやっても良いと考えていると同時に、国民も自分と同じくらいの知能程度しか持っていないと思い込んでいる。だから、明らかな憲法違反の法案を「合憲」と強弁したり、誰が考えてもあり得ない「自衛隊員のリスクが軽減される」などという、小学生にでもわかる嘘を平然とつくことができる。つまりそんな嘘八百が国民に通じると高をくくっている。防衛大臣中谷元などは、そのように答弁しろと安倍晋三に強制されてはいるものの、そんな言葉は中谷本人にも信じられないから、答弁がしょっちゅう破綻したのである。テレビを見ている者には中谷元が馬鹿にしか見えなかったと思うが、本当の馬鹿は安倍晋三であって、安倍が中谷にあんな答弁を強制したからあんなぶざまな答弁になった。現に最後には安倍晋三の答弁も、「ホルムズ海峡しか考えていない」と明言した前言の撤回に追い込まれた例からも明らかなように、完全に自己矛盾をきたしていた。

安倍晋三については、「××××に刃物」という言葉しか思い浮かばない。

しかし、そんな安倍晋三を総理大臣に押し上げたのがわれわれ日本国民だった。たとえ安倍晋三本人への直接の支持でなくとも、選挙区で自民党比例代表)や同党の候補者(選挙区)に投票した有権者は間接的に安倍晋三を支持したことになるのである。その責任は極めて重い。

*1:長谷部恭男は特定秘密保護法に理解を示した憲法学者でもある。