kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

選挙結果を分析する時にはデータに当たるべし

山本一郎衆院北海道5区補選に関する記事より。

SEALDsは若者にウケず、野党共闘で投票率を下げた(北海道5区選挙結果速報値)(山本一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース(2016年4月26日)より

投票率が上がれば野党共闘は勝った

ということで、今回いろいろあるかなと思った本件ですが、最終的には与党勝利で終わりました。ただ、これが仮に投票率が59%ないし61%台となり、無党派層が選挙にいっていれば野党側が勝利していたことになります。

このくだりを一読して、実際に補選の得票結果に当たってみた私は、「どえりゃあトンデモなデタラメだぎゃあ」とニセ名古屋弁で思ってしまった(正しい名古屋弁でどういうかは知りません)。

実際、山本氏の記事についた「はてなブックマーク」でも手厳しく批判されている。

zions 約12000票差付いてるのに、投票率が3%上がるだけで野党勝利ってどんな理屈だ?上昇分の9割近くが野党に投票しないとひっくり返らないぞ。

その通りだ。仮に、朝日新聞出口調査で得られた「(投票所に足を運んだ)無党派層の68%が池田候補に、32%が和田候補に投票した」という数字を元に、上昇分の68%を池田候補に、32%を和田候補に当てはめて計算すると、投票率が65%でもまだ和田候補が僅差で当選する。投票率が66%ならやっとこさ池田候補が当選したという計算になる。

だから、

仮に投票率が59%ないし61%台となり、無党派層が選挙にいっていれば野党側が勝利していたことになります。

というのは、山本氏がデータに当たらず感覚だけで書き飛ばした出任せか、さもなくば読者を騙そうという意図をもって書かれた嘘かのどちらかである。

また、保守的な反自民系の著者による下記ブログの記事に至っては、事実を度外視して日刊ゲンダイの記事を(願望に基づいて)妄信しているだけと言っても過言ではない。

道5区補選に震災対応&メディア、日本人気質利用の安倍自民戦略が影響か : 日本がアブナイ!(2016年4月29日)より

 わが競馬の友&政治もそれなりに考えが合うことが多い「日刊ゲンダイ」の選挙結果の分析だ。(**)

 まず、日刊ゲンダイ(28日の記事)の各候補者の基礎票のとらえ方に、「なるほど〜」と思う部分があった。

 多くの人たちは、2014年12月の衆院選の得票数(町村が約13万1000票、民主・共産候補の合計が約12万6000票)を前提にして、今回の選挙結果を考えるのだけど。
 14年の衆院選の時は、ムネオ娘が民主党から出馬していて、完全に民主党と連携していたことから、ここから新党大地基礎票(2万5千票)を引いて、「15万6000票VS10万票」が今回のスタートの持ち票だと考えるのである。<確かに、そうだね。(・・)>

 しかし、大地のムネオ氏の影響力は低下している上、露骨な安倍自民党への寝返りに呆れた支持者も少なからずいたようで。今回の補選では、大地の分は数千票ぐらいしか得られず。自公は懸命にテコ入れしたものの、自民党候補は大きく票を減らす結果になったと。
 逆に、野党候補は、無党派層を取り込んで、2万3千票も上乗せした・・・と見ると、自公が選挙結果に浮かない顔をして、野党共闘を警戒する発言が多くなっているのも、よくわかる。(++)

私は、職場への行き帰りの道中にあるコンビニの窓の内側から外側(路上)に向かって、夕刊フジ日刊ゲンダイの1面が掲げてあって、両紙のいずれ劣らぬ下品さにいつも気分を害しているのだが、北海道5区のあとのゲンダイの一面は、野党(民進党共産党)に対する罵詈雑言をむき出しにした見出しにかわった。ふーん、そんなゲンダイをあのブログ主は愛しているんだ、と思ったものだが、上記ゲンダイの分析はあまりにもひどいデタラメだ。

2014年衆院選の自民・民主・共産の合計得票25万7千票に対して、新党大地基礎票が2万5千票って、どこからそんな数字が出てくるのだろうか。

少なくともこの見積もりは、4月18日付北海道新聞の記事と真っ向から矛盾する。以下道新の記事から引用する。

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/politics/politics/1-0260511.html

和田氏、池田氏譲らず 投票先未定2割 北海道5区補選本社世論調査
04/18 07:00、04/18 10:57 更新

 北海道新聞社は、24日投開票の衆院道5区(札幌市厚別区石狩管内補欠選挙有権者を対象に、15〜17日に世論調査を行い、日ごろの取材を加味して告示後の情勢を探った。自民党新人の和田義明氏(44)=公明党日本のこころを大切にする党、新党大地推薦=と、無所属新人の池田真紀氏(43)=民進党共産党社民党、生活の党推薦=が互いに譲らず、激しく競り合っている。投票先を決めていない有権者は2割超で、終盤まで予断を許さない状況だ。

 和田氏は、自民党支持層の8割超、公明党支持層の7割超を固めた。支持政党なしの「無党派層」からは4割近くの支持を得た。池田氏は、民進党支持層の約9割、共産党支持層のほぼすべてを固め、無党派層の支持は約5割だった。

 年代別では和田氏の支持は30代、40代、50代で池田氏を上回り、池田氏は60代と70歳以上で和田氏を上回った。地域別では、有権者の約4分の1を占める厚別区で和田氏が上回り、千歳市恵庭市でもリード。池田氏北広島市石狩市で先行している。

 政党支持率は、自民党37・1%、民進党13・3%、共産党3・0%、公明党2・1%、社民党0・2%、新党大地0・2%、「支持政党はない」は43・5%だった。内閣支持率は「支持する」が49%、「支持しない」が48%だった。

(どうしんWEBより)

北海道5区における新党大地政党支持率は、北海道新聞社の調査によるとわずか0.2%なのだ。一心太助もびっくりの超低空飛行である。先の北海道5区の補選の有権者数45万5262人の0.2%というと、わずか900人である。新党大地の「基礎票」は「2万5千票」どころではなく、どう多く見積もっても1千票程度かそれ未満、おそらくは数百票程度であろう*1

それもそのはず、鈴木貴子が前回の衆議院選挙に立候補して敗れた(比例復活で当選)北海道7区は道東であって、選挙区に札幌市の一部を含む北海道5区とは地理的にかけ離れている。足寄出身の鈴木宗男が札幌近郊にまで強い影響力を持っていると考える方が不自然だ。

だから、当該のブログ記事は下記のように書き換えられるべきだろう。

多くの人たちは、2014年12月の衆院選の得票数(町村が約13万1000票、民主・共産候補の合計が約12万6000票)を前提にして、今回の選挙結果を考えるのだけど。
14年の衆院選の時は、ムネオ娘が民主党から出馬していて、完全に民主党と連携していたことから、ここから新党大地基礎票(多めに見積もって1千票)を引いて、「13万2000票VS12万5000票」が今回のスタートの持ち票だと考えるのである。<確かに、そうだね。(・・)>

 しかし、大地のムネオ氏の影響力は低下している上、露骨な安倍自民党への寝返りに呆れた支持者も少なからずいたようで。今回の補選では、大地の分は数百票ぐらいしか得られず。自公は懸命にテコ入れした結果、自民党候補を3千票だけとはいえ票を上積みする結果になったと。
 逆に、野党候補は、無党派層を取り込んだはずなのに、2千票を目減りさせした・・・と見ると、自公が選挙結果に浮かない顔をして、野党共闘を警戒する発言が多くなっているのは、さっぱりわけがわからない。野党支持者を油断させようとでもしてるのだろうか(++)

山本一郎氏にせよmew氏にせよ、もっとデータを参照して記事を書いてほしいものだと思う。もっとも山本氏の場合は職業柄データ分析はお手のもののはずだから、本当の分析結果は隠して、政治的狙いをもって読者を騙す意図の記事を書いたのではないかと私は疑っている。mew氏に対しては、願望に基づいた記事を書くのが悪いとは言わないが、それに「分析」などという言葉を冠さないでほしいと強く言いたい。次には必ず勝つという目標を達成するためには、負けた選挙の敗因に関する冷静な分析が必要なのに、負けた時にも現実を直視できず、「『野党共闘』はよく健闘した」などという、願望に基づき、かつ事実とかけ離れた記事を書くことは、戦争中の大本営発表にも比肩すべき嘘の宣伝を自ら行っているに等しい。猛省を求める。

選挙結果を分析する時には最低限のデータに当たるべきである。もちろん私自身の分析も検討すべきデータを十分集めてそれに当たっているとは到底いえないことを自覚しているが、その私から見ても今回取り上げた2つの記事はあまりにもひど過ぎる。

*1:もしかしたらゲンダイの言う「基礎票」とは、衆院選比例代表新党大地票を根拠にしているのかもしれないが、比例で新党大地に投票していた無党派層は、必ずしも鈴木宗男の「信者」ばかりでもあるまい、というか宗男の「信者」などむしろごく少数派であろうと思われるから、宗男の変節につき従って投票先を民主党(現民進党)から自民党に変えた人がそう多いとは思えない、というよりそんな人などほとんどいなかったのではないか。道新調査の新党大地支持率の「0.2%」くらいが宗男の転向に合わせて投票先を変えるほど熱心な「宗男信者」の比率の上限と考えて良いと私は解釈する。