kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「『現代版後醍醐天皇』としての安倍総理」(広島瀬戸内新聞ニュース)

網野善彦の『異形の王権』は近年になって読んだ記憶があったが、読書記録を参照すると2015年4月3日から7日にかけて読んでいた。


異形の王権 (平凡社ライブラリー)

異形の王権 (平凡社ライブラリー)


前々から仄聞してはいたものの、後醍醐天皇とはここまでひどいトンデモ野郎だったのかと、そのあまりのぶっ飛びぶりに唖然としたものだった*1。しかし、皇国史観においては南朝が「正」とされ、後醍醐天皇楠木正成は英雄扱いだった。子どもの頃に読んだ集英社版の子ども向け歴史漫画(全18巻)は、戦後23年目の1968年に刊行されたが、天皇家やその味方側の人間が美男美女に描かれていたあたりに「皇国史観」の尻尾を残していた。それはリベラル派の歴史学者だった監修者・和歌森太郎の解説とちぐはぐさを感じさせるものだった。

いったいいつ頃から後醍醐天皇を善玉とする史観ができたのかと思ってちょっとネット検索をかけてみたところ、どうやらそのルーツは14世紀の『太平記』にまで遡れるらしい。戦後になってようやく皇国史観の束縛を脱し、今では後醍醐天皇は不人気の歴史上人物の代表格になったようだが、世の中には皇国史観を未だに持ち続ける極右人士がいることを知った。下記記事を読みながら、極右の著者が今の天皇家の祖先である北朝を必死になってこき下ろしている皮肉さに、黒い嗤いが口元に浮かんでしまった。


以上は前振り。

昨日、私が鬼才と目しているさとうしゅういち氏が安倍晋三後醍醐天皇になぞらえる記事を公開した。

「現代版後醍醐天皇」としての安倍総理 : 広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)(2017年6月9日)

安倍総理とは、後醍醐天皇のようなものである。

後醍醐天皇は、公家が築き上げてきた官僚制も、武家鎌倉幕府※による「武家革命」以来築き上げてきたシステムも否定。

 ※鎌倉幕府は公家から武士が権力を奪った、階級間の権力移動という革命であり、2ちゃんねるでは、鎌倉幕府=日本史上ほぼ唯一の左翼政権という見方をする人もいる。

後醍醐天皇自らが行政をすべて決裁するという仕組みを取った。

安倍総理も、官僚制を否定し、総理自らが主導し、お友達を優遇する仕組み=国家戦略特区=を進めている。
もちろん、法の支配、立憲主義なんぞどこふく風、である。
公家政治=明治以来の近代官僚制(伊藤博文立憲主義)、武家政治=日本国憲法に基づく法の支配・民主主義(戦後的立憲主義)、とたとえれば、新旧双方の立憲主義的なものを否定するという意味で、安倍晋三は、現代版後醍醐天皇である。

一度は島流し(2007年の総理退陣)にあったが、北条高時(=民主党)のエラーもあって、1333年に高時(民主党)を打倒したのも似ている。

しかし、後醍醐天皇は武士(現代では一般国民)はもちろんのこと、公家(現代では官僚)からさえも不満の声があがったのである。現代でいえば高級官僚といえる北畠親房も御醍醐を批判しており、その文書は、過去、東大入試にも出題されている。

1333年に政権について1338年には室町幕府を開いた足利尊氏に打倒された御醍醐政権。ということは、2012年から5年後、安倍政権も打倒されるのだろうか?いや、打倒しなければならない。


もっとも、安倍晋三は10年前には北条高時だったらしいけれど。


それにしても、一度は日本国民が追い落とした安倍晋三を政権に返り咲かせてからの4年半というもの、日本の政治は安倍による国政の私物化で本当にぐちゃぐちゃになった。「崩壊の時代」(坂野潤治)とは言い得て妙だ、といつも感心する。あげくの果てに文科省の元事務次官や現役官僚に反乱を起こされ、手下としてこき使っていた御用新聞謀略報道が文春、新潮といった右派週刊誌にまであざ笑われ、ついでに読売軍が昨日やっと止まったものの13連敗して*2、政権の御用ジャーナリストの準強姦罪もみ消し疑惑の件まで騒がれるなどなど、ここにきて安倍政権やその取り巻き人士だの組織だのの腐敗が一気に噴出した観がある。二階俊博前川喜平の国会招致を示唆するなど、地殻変動が起き始めた(民進党はここで「参考人招致」などで手を打ってはならない。あくまで前川喜平の証人喚問を要求すべきだし、同時に安倍昭恵の証人喚問も強く要求しなければならない)。

ただ、安倍晋三後醍醐天皇ではなく東条英機になぞらえる見方をとれば、東条の退陣は「崩壊の時代」が始まってから7年後の1944年だから、安倍退陣は再来年あたりにまでずれ込む可能性がある。私としては一日も早く終わってほしいけれど。

ともあれ、ようやく「安倍政権の終焉」を予感させる出来事が続いている*3

しかし、その一方で「非常に悪い予感」もある。それは現在の加計学園問題・読売謀略報道問題・山口敬之準強姦罪もみ消し疑惑などが、来月2日投開票の東京都議選で「都民ファ□ストの会」の圧勝をもたらす可能性だ。そうなると、間違いなく「都ファ」の国政進出と野党の右翼的再編が起き、ポスト安倍小池百合子となって「崩壊の時代」の崩壊がますます悪化する可能性がある。いや、その脅威は大いに高まったと言わなければならぬ。

東京都民には、自民党だけではなく「都民ファ□ストの会」を止める役割も求められていると思うのだが、おそらく多くの都民は「都ファ」に投票してしまい、星浩が顔をほころばせ、例の「リベラル」氏あたりも(民進党の大没落を棚に上げて)大喜びしてしまうであろう。それを想像するだけで鬱になる。

*1:なにしろ、後醍醐は単に政治を私物化したにとどまらず、政治を呪術に頼っていた「トンデモ」野郎だったらしいのだ。「スピリチュアル」人士であるらしい安倍昭恵が直ちに連想されるが、安倍晋三もまた「手かざし」の新興宗教にかぶれるなど、昭恵ほど極端ではないにせよオカルト志向を持った人物であることは広く知られている。

*2:ヤクルトと元ヤクルト選手だった栗山は何やってるんだと怒り心頭ではあるが。そういや13連敗の監督・高橋由伸も父親が読売の金に釣られてヤクルト入りを断念した男だった。

*3:2月に発覚した森友学園問題の時には、安倍に退治と対峙する役者である籠池泰典が異形の人物(しかも安倍と同じ極右人士)だったので、安倍側のメディアや人士たちは籠池を悪玉にすることによって難を逃れるだろうと予想していた(事実その通りになった)ので、「これで安倍政権が終わる」とは到底思えなかった。