kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「陸自日報問題」でも閉会中審査が行われるようだが

安倍晋三とは、一刻も早く「主権者国民によって」内閣総辞職に追い込まねばならない人間であることが、2日間の衆参両院予算委員会の閉会中審査でさらに明白になった。「主権者国民によって」というのは、内閣支持率を下げ、地方選挙で自民党にノーを突きつけ、「安倍では選挙に勝てない」という事実によって「安倍降ろし」を起こさせることだ。そうでなければ、主に衆院小選挙区制下で総理総裁の権力が極限までに肥大したことによって弱体化した自民党反・非主流派も、蓮舫ともども小池百合子にすり寄りまくって都議選の惨敗を招いた幹事長の野田佳彦がようやく辞意を表明した民進党も、ともに全くあてにならないのだから腐敗し切った政権が延々と続くことになる。

今回の閉会中審査で特に注目されたのは加計問題学園であり、安倍が加計学園による獣医学部設置の意向を知ったのは、安倍自身が議長を務める国家戦略特区諮問会議が正式に認めた1月20日だと繰り返し答弁したことが、これまでの安倍自身の答弁と矛盾すると報じられて大騒ぎになっている。こんな誰が考えても真っ赤な嘘とわかることを答弁せざるを得ない内閣総理大臣を、主権者国民が内閣総辞職に追い込まねばならないのは当然だろう。

しかし、私がそれ以上に問題だと思っているのは、陸自PKO日報の隠蔽問題だ。

私は前々からこの日記に、隠蔽の主犯は安倍晋三その人だろうと書いてきた。2日間の閉会中審査でその心証は決定的なものとなった。一昨日(24日)の共産党笠井亮衆院議員の質問によって、1月18日に安倍は防衛事務次官・黒江哲郎から日報が存在する情報を得て、直ちに「日報を隠蔽しろ」との指示を受けたのではないかと疑っている(追記参照)。

「隠せ」。野心家の上司によって都合の悪い事実を隠せという業務命令を私は受けたことがある。一瞬、「隠せ」なんて本当に言うんだ、とあっけにとられた。十数年前のことだ。私は最初これに従った。しかし数日後、再び問題が起きて、「これ以上隠してはならない」と判断した私は、前回「隠せ」と命令した上司の許可を取った上で、事実を明らかにした上で処置をとったのだった。つまり私も最初は「隠せ」という不当な上司の業務命令に従った。業務命令の圧力はそれほどまでにも大きい。

このことを思い出せば、改憲という究極の大目標をライフワークとしている安倍が、事務次官の報告を受けて直ちに「隠せ」と言ったに違いないと強く確信するものだ。安倍こそ間違いなく陸自PKO日報を隠蔽した主犯だ。そしてこのことは、安倍が自衛隊を私物化していることを意味する。

朝日新聞(7/26)1面中ほどの見出しに、「日報問題 閉会中審査へ」とある。良いことだと思ったが、記事を読むと

特別防衛監察は、陸上自衛隊で見つかった日報の電子データが非公表になった経緯を調査しており、組織的な隠蔽工作に稲田防衛相が関わったかどうかが焦点。

などと書かれている。そもそも特別防衛監察は防衛大臣である稲田朋美の命令で行われたものであって、調査を命令した者自身が調査の対象になっているという皮肉はあるのだが、そこには自ずから限界があることは明らかだ。この事件の本当の核心部は、安倍晋三が隠蔽に関わったかどうかであるに決まっているが、稲田の命令で行われた防衛監察の調査が安倍晋三に及ぶことなどあり得ない。

同じ朝日の2面を見ると、

フジテレビは25日、稲田氏への「報告」を示す防衛省幹部の手書きメモを入手した、と報じた。

と書かれている。フジテレビのニュースの映像はネットで公開されている。これは紛うかたなき防衛省からのリークだ。手書きメモの映像を見ることができる。


以下は朝日新聞記事からの引用。

 報道によると、手書きメモは2月13日、稲田氏や陸自幹部らによる防衛省の大臣室での協議を記したもの。データが削除されず残っていたことを知った稲田氏が「明日なんて答えよう」とと発言した記述もあり、稲田氏が当時、陸自のデータの存在を認識したことをうかがわせる内容になっている。

朝日新聞 2017年7月26日付2面掲載記事より)

してみると、稲田は2月13日まで日報が存在していることを知らなかったわけだ。私は春頃の報道の時点からずっと、安倍が隠蔽を知っていた一方、稲田はつんぼ桟敷に置かれていたのではないかとずっと疑っていたが、その疑いはますます強まった。つまり、稲田を飛び越えての安倍への報告は、稲田が2月13日に真相を聞かされるよりずっと前になされていたという想像だ。

「明日なんて答えよう」との稲田の発言は、既に数日前からテレビで報じられていた。昨日のフジの報道は、メモの映像公開を決断しただけのものであって、メモの写し自体は少し前から持っていたに違いない。朝日新聞を含む他のメディアも持っている可能性が高い。「明日なんて答えよう」と言った稲田は、「明日なんて答えましょうか」と安倍に相談したに違いない。こんな大事なことを、上司たる安倍の許可を得ずに国会で答弁することなどできるはずがないことは、常識的に考えれば誰にでもわかることだ。

ところでこの件で「文民統制」を問題と考える者は、「リベラル・左派」の中でも多くない。安倍晋三を守ろうとする側の人間(たとえばフジテレビの平井文夫など)は、この「リベラル・左派」の弱みを突いて「これはクーデターだ」と叫ぶ。その同じフジの中で「クーデター」に加担する者もいるという構図なのだろう。

「稲田大臣が了承していた」という当初のリークを、共同通信朝日新聞は「複数の政府関係者が明らかにした」と報じていた。私の認識では「政府関係者」に武官は含まれない。しかし、最初からリークした文官を武官は応援していて情報も流したのであろうし、ここにきてフジテレビが「防衛省幹部」のリークを流すようになっている。『サンデー毎日』の最新号も、新聞広告に載ったしか見ていないが、武官からのリークがあると明記しているようだ。ここまでくると「クーデター」というほかないと私も思う。

前にも何度か書いたが、「文民統制」の重要さを、私は1978年の栗栖弘臣の「超法規発言」事件で知った。

栗栖弘臣 - Wikipedia より

1978年(昭和53年)7月、「週刊ポスト」誌上で「現行の自衛隊法には穴があり、奇襲侵略を受けた場合、首相の防衛出動命令が出るまで動けない。第一線部隊指揮官が超法規的行動に出ることはありえる」と有事法制の早期整備を促す“超法規発言”を行う。これが政治問題化し、記者会見でも信念を譲らず、同様の発言を繰り返したため、文民統制の観点から不適切として、時の防衛庁長官金丸信に事実上解任された(2代後の竹田五郎も専守防衛政策を批判し解任されている)。しかしその後、首相(当時)の福田赳夫閣議で有事立法・有事法制の研究促進と民間防衛体制の検討を防衛庁に指示。国防論議のタブーが破られ、以後多くの国防論議が巻き起こるきっかけとなった。

文民統制に挑戦したとして栗栖弘臣が事実上解任された直後に、福田赳夫が栗栖発言を追認するかのような政治的アクションを起こしたことに世論は(私も)憤激した。当時はまだ読売新聞もリベラル側の論陣を張っていた(ナベツネ論説委員長になって読売が右旋回を始めたのは、翌1979年のことだ)。だからその3か月後、自民党総裁予備選で福田赳夫大平正芳に負けた時、私は快哉を叫んだものだ。あの頃から一貫して私は岸信介の流れを汲む当時の福田派(清和会)を激しく嫌い続けてきた。ニューリーダーと呼ばれた3人の中でも、安倍晋太郎だけは絶対に総理大臣にするな、と念じていたし、その念願は叶ったが、まさかその安倍晋太郎のドラ息子にして岸信介の「外孫」、かつネトウヨの化身のような安倍晋三が長期政権を担うという悪夢が実現するとは。安倍晋三が総理大臣になるくらいなら安倍晋太郎が総理大臣になった方がよほどマシだった(もちろんそれと引き換えに安倍晋三が総理大臣になるのを阻止できたのなら、という仮定の話)と強く思う。

話が逸れたが、高校生時代に栗栖「超法規発言」と栗栖解任、それにもかかわらずの福田赳夫の「有事立法」発言を材料にして勉強した人間である私としては、今の(私よりは)若い(であろう)「リベラル・左派」が「文民統制の議論を持ち出すなんてピント外れだ」と片付けてしまう風潮を強く危惧する。自衛隊は誰が何と言っても「暴力装置」であり、だからこそ武官を文官が統制していなければならない。だから武官が文官である防衛大臣の首を取ろうとする動きには断じて加担してはならない。それは本当にその通りなのである。

しかし、これには大前提がある。それは、文民統制がまともに行われていることだ。

陸自PKOを行っていた南スーダンで戦闘行為が起きていることが国民に知られたら、ライフワークとしている「自らの手による改憲」という野望の実現の障害になるからという(真の)理由で、日報の隠蔽を命令した(に違いない)安倍晋三がやってきたのは、文民統制ではなく自衛隊の私物化に過ぎない。文民統制のできない、というより文民統制をする気もない総理大臣やその言いなりになった防衛大臣は、主権者国民によって解任されなければならない。もちろん(文官の命令によって)日報の隠蔽に加担した武官も懲戒処分を受けなければならないが、総理大臣や防衛大臣が「お咎めなし」であっては(内閣改造によって防衛大臣が替わることは「お咎め」にはならない)、公平な裁きにはなりようがない。それこそ自衛隊内に不満が溜まっていき、それはいつか本物のクーデターを引き起こしかねない。

つまり、安倍晋三稲田朋美を罷免すべきなのではなく、主権者国民が安倍晋三(と稲田朋美)に辞任を迫ることが何よりも必要だと強く思う今日この頃だ。


[追記]

1月18日に安倍が黒江防衛事務次官改憲していたことに関して、リテラが重要な指摘をしている。以下引用。

自衛隊日報隠ぺいを知っていたのは稲田防衛相だけじゃない、安倍首相と官邸が指示していた疑惑が浮上|LITERA/リテラ(2017年7月25日)より

(前略)この1月18日というのは、実は極めて重要な日だった。というのも、〈陸自では岡部俊哉幕僚長に1月17日、データが見つかったことが報告され、事実関係の公表の準備を始めた〉(毎日新聞7月20日付)からだ。

シビリアンコントロールの崩壊を招いたのも安倍首相の責任

 ようするに、陸自内にデータが残っていることが統合幕僚長に報告された翌日というタイミングで、防衛省の黒江事務次官と豊田官房長が安倍首相のもとに参じているのだ。そしてその後、防衛官僚を介して“非公表の方針”が決定されたことになる。

 安倍首相は「陸自に残っていたということについて、事務次官と官房長から説明があったことはないとはっきり申し上げておきたい」と繰り返し否定したが、1月18日に黒江事務次官らが安倍首相に直接面会したのは、この陸自データ公表について相談をするためと考えるのが自然だろう。

 それだけではない。陸自内の日報データの保管事実が報道によって明るみになったのは3月15日だが、首相動静を見ると、その前後にあたる3月3日と3月17日にやはり黒江次官が安倍首相と面会し、なんらかの話をしたのがわかる。

 ようするに、安倍首相はこの日報隠蔽問題について、要所で黒江事務次官防衛省自衛隊幹部から報告をうけて、対処方針を指示していたのではないか。さらに言えば、隠蔽疑惑が表面化した12月末より前、それこそ、布施氏による日報の開示請求がありながら無茶苦茶な屁理屈で駆け付け警護の新任務を自衛隊に付与した時期から、なんらかの形で安倍首相がこれに関与し、調整をはかっていたのではないか。そういう疑念が頭をもたげてくる。

 安倍首相は再三再四「ありえない」と強弁したが、否定の弁をただ繰り返すだけでは、潔白の証明にならないのはいうまでもない。笠井議員は昨日の閉会中審査で、稲田防衛相、黒江事務次官、豊田官房長、岡部陸幕長らの証人喚問を要求したが、真相を解明するためにもこれは急務だろう。

 何度でも繰り返すが、これは防衛大臣防衛省の問題でなく、安倍首相も含む政権政権ぐるみの隠蔽疑惑だ。また、自衛隊に対するガバナンス、シビリアンコントロールの不全が露見しているが、これも安倍首相に大きな責任がある。

 この間、安倍一強を背景にこの国の民主主義をどんどん破壊してきた安倍首相だが、支持率が凋落し、求心力を失ったいまも、大混乱を引き起こし、別の意味で日本の民主主義を危機状況に陥れようとしているのだ。とにかく、国民は一刻も早くこの政権に引導を渡す必要がある。

(編集部)

(リテラより)