kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

知床と北方四島・ウルップ島を含めた世界自然遺産区域の拡張を

安倍晋三がロシアに行くらしいが、またぞろプーチンとろくでもない話をして、ロシア向けと国内向けに二枚舌を使い分けた上に、それを「日本版・朝鮮中央放送アナウンサー」岩田明子が安倍晋三礼賛の「解説」とやらをするのかと思うとぞっとさせられる。

私は別段「愛国者」でもなんでもなく、北方四島を「日本固有の領土」だとして固執するつもりなど毛頭ないが、ロシアが国後島だか択捉島だかに軍事施設を建設することは断じて許せないとは思っている。日本であれロシアであれ、そういう帝国主義的な動きをする政治権力に対しては、強い批判と拒絶あるのみだ。だから、そのようなロシアによる既成事実化に手を貸す恐れが大きい安倍政権の対露交渉に対しても強く非難するものだ。

北方四島については、それに東側に隣接するウルップ島とともに世界遺産登録への働きかけがある。四島の西側に隣接する知床半島は既に世界遺産に登録されて久しいが(2005年登録)、それ以前から半島の先端に行く道はつけられていなかった。1964年に国立公園に指定されて以来、開発が厳しく制限されていたためだろう。その自然保護の範囲をウルップ島にまで拡大し、かつ日露の軍事衝突に対する緩衝地帯とするのは一石二鳥だと多くの人は思うだろうし、少し前にも書いたかと思うが、実際にそのような動きは過去に日露双方からあった。

下記は『北海道ファンマガジン』にある「知床世界自然遺産登録のあゆみ」(2008.3.13, 2018.1.28更新)より。

https://pucchi.net/hokkaido/shiretoko/shiretoko5.php

(前略)今回の知床世界自然遺産への登録の背景には、地元漁業者の自主規制があります。IUCN(国際自然保護連合=引用者註)のフランソワ・シマール海洋事業部調整官は、これは世界に誇るべきこととして高い評価をしています。さらにはIUCNは、海が関わる世界自然遺産登録増加を目指しているということもあって、前向きな評価になったとされています。

 知床世界自然遺産の将来性として、IUCNは「北方領土と知床」という組み合わせで、国境をまたいだ世界自然遺産の可能性も示唆しています。距離が近いだけあって自然や生態系は酷似しているということですね。

(中略)

 また、トドやスケソウダラ、サケ、オオワシなどの生息数を定期的に調査・把握することにしています。ただし、北方領土が近く、ロシア側がトロール船で乱獲をしている事実もあり、日本だけで解決できる問題ではないようです。このため、北方領土とウルップ島まで遺産区域を拡大することをロシア側に働きかけるために、2008年3月にNPO法人日露平和公園協会が設立されています。

(中略)

 先述のように、知床が世界遺産登録されたとはいえ、同じようなオホーツク海の流氷による自然・生態系の特徴は北方四島およびウルップ島でも見られます。2000年ごろ、ロシアも北方四島からウルップ島の自然保護区を世界自然遺産に登録しようとしていたことがありましたが、領土問題から実現しませんでした。

 とはいえ、北方四島では旧ソ連崩壊後インフラ整備・密猟などが行われ、ロシアによる自然環境保護が後れを取っています。また、スケソウダラ資源回復を求めてきたIUCNですから、これは同じ海を共有するロシア側にも努力が求められます。世界的に禁止の動きがあるトロール船によるスケソウダラ漁業がいまだに行われているからです。

 以上のことから、ウルップ島・北方四島も含めた世界自然遺産区域拡張を求める声があります。知床と北方四島・ウルップ島を含めた世界自然遺産区域拡張を求める理由と、北方四島での生態系の豊さについては、大泰司紀之・本間浩昭著「知床・北方四島〜流氷がはぐくむ自然遺産」(岩波新書)に詳しい。

(『北海道ファンマガジン』 - 「知床世界自然遺産登録のあゆみ」より)


カラー版 知床・北方四島―流氷が育む自然遺産 (岩波新書)

カラー版 知床・北方四島―流氷が育む自然遺産 (岩波新書)


これも以前にも書いた通り、日本の右翼が「ソ連脅威論」をがなり立てていた80年代には、ソ連北方四島などほったらかしにしていたのに対し、ソ連が崩壊してエリツィン、次いでプーチンのロシアになってからロシアの密漁や密猟が激化し、最近では軍事施設の建設も急ピッチになるなど、共産主義を放棄して以降の現在のロシアの方がよほど「脅威」ではないかと嫌味の一つも言いたくなる。プーチン政権は日本の安倍政権や中国の習近平政権などとともに強権的で危険な独裁権力とみるほかないだろう。

ロシアが既成事実化を着々と進めた今となっては、「知床と北方四島・ウルップ島を含めた世界自然遺産区域拡張」の実現性も遠のいたとみるほかないが、それでもこれを辛抱強く求めていくべきだし、その際北方四島の帰属はロシア領のままでも良いし、ただそれを認める条件としてロシアがこれまでに建設してきた軍事施設を完全に撤去することを求めるべきだと私は思う。その際、ロシアの軍事施設撤去の費用の一部を日本が負担するのもありだろう。なぜならそれは日本の安全保障にも資することなのだから。

一方、この記事の冒頭にも書いた通り、ロシアによる既成事実化に易々と手を貸そうとしているようにしか見えない安倍政権に対しては、これを強く非難するしかない。