今日(5/8)発表された東京都のCOVID-19陽性者数は39人で、6日連続で二桁だった。
それは良いのだが、問題は東京都の検査では陽性率が再び上昇気味ではないかと疑われることだ。今週は先週の推定10%程度から、推定12~14%程度へと若干上昇した。これは都のサイトに今日の夕方公開されたデータから推測した。医療機関による保険適用の検査分は毎週1回、金曜日の夕方にまとめて公開されるので、このタイミングでなければ都の検査数はわからないのだ。例えば下記日刊ゲンダイの記事などは明白な誤報なので、読者の注意を喚起したい。
「東京都の感染者は4日連続100人を下回る」——。こんな報道を見ると、思わずコロナが終息に向かっているような錯覚に陥ってしまいますが、問題は検査実施人数。5日は僅か109人。100人割れに注目するより少ない検査でこんなに陽性者がいるとみるべきです。 https://t.co/fMxlBoP5RF #日刊ゲンダイDIGITAL
— 日刊ゲンダイ (@nikkan_gendai) 2020年5月7日
日刊ゲンダイというのはデマばかり書き散らすイエローペーパーなので全く信用ならない。同紙が書いた5日の検査実施人数109人という数字には医療機関が保険適用で行った検査分は含まれていないのだ。この数字は非公開というか都が集計できていないが、5日の検査実施件数は都管轄分の151件(検査実施人数は日刊ゲンダイが書いた通り109人)だが、同じ日にその他に医療機関が保険適用で行った381件の検査が行われている。つまり、都の管轄分の倍以上の人が医療機関の検査を受けたと推測されるのだ。
下記は都のサイトへのリンク。前述のように週1回、まとまったデータが公開される。こちらにも、日刊ゲンダイが撒き散らすようなデマではないとはいえ、速報性に全く欠けるうえ、検査実施人数の真の値がわからないという大きな問題がある。
上記サイトから、検査件数(括弧内は都の管轄分と医療機関の保険適用の検査分)、都の管轄分のみの検査実施人数(医療機関の分は非公開)、陽性者数(都の管轄分と医療機関の保険適用分合計)を転記する。表は見づらいがご容赦願いたい。
4/30 (木) 1556(530, 1026), 437, 46
5/1 (金) 1191(261, 930), 196, 165
5/2 (土) 863(315, 548), 200, 159
5/3 (日) 668(474, 194), 399, 91
5/4 (月) 951(302, 649), 219, 87
5/5 (火) 532(151, 381), 109, 58
5/6 (水) 509(110, 399), 65, 38
5/7 (木) ?(?, ?), ?, 23
5/8 (金) ?(?, ?), ?, 39
4/30から5/6までの総検査数は6270件で、うち都の管轄分が2143件でシェアが34.1%、医療機関の保険適用の分が4127件でシェアが65.9%となる。今週は連休だったが都知事・小池百合子が「医療機関には連休中の検査をお願いする」と言った通り、それまでは土日に検査件数が減っていた医療機関の検査数がコンスタントに多かった。ただ平日の4/30と5/1ほどではなく、それがこの両日の翌日にあたる5/1と5/2のみ陽性者が3桁を数えたことに反映していると思われる。
そして、都の管轄分に限れば、検査実施人数は検査件数の75.8%だった。
上記の結果から、2通りの試算をしてみた。陽性患者数を当日の検査に対応させ、かつ検査件数から検査実施人数を見積もる係数として0.845を用いる、先週までの「けんもねずみ氏方式」*1では週間陽性率は12.2%となる。一方、陽性患者数を前日の検査に対応させ、かつ係数0.758を適用すると陽性率は13.1%になる。この2通りの計算方法は先週も行ったが、いずれも10%程度だった。つまり、東京都では先週よりも今週の方が陽性率が若干高かったのではないかと推測される。今週は大型連休があったとはいえ、都も医療機関も休日返上で検査を行ったために検査数数は先々週と比較して大きくは減っていない(先週の7889件に対して今週は6270件と、約2割の減少にとどまっている)ことを考えると、これは懸念材料だ。東京都ではまだPCR検査数が不足していることを意味する。先々週も先週も、週間陽性率はその前の週と比較して大きく下がるという好ましい結果だったが、今週は陽性率の低下が止まり、それどころか検査数の若干の少なさを差し引いても再び上がってしまったのではないかと心配される。
なお、陽性率の真の値については、東京都は他の11県ともども、データの集計が十分できていないために不明だ。例によって会員限定記事なので途中までしか読めないことに腹が立つが、6日付の毎日新聞記事にリンクを張っておく。
[追記](2020.5.8 21:05)
下記朝日新聞・軽部理人記者のツイートによると、東京都が「陽性率が下がっている」と公表したらしい。これまで真の検査実施人数が都のサイトに公開されてこなかったために仮定を入れて推測するしかなかった陽性率がわかったのであれば、都にはデータを公開してもらいたいものだ。
都のサイトに公開されているデータから仮定を加えて推定した数字だと、この記事に書いたように陽性率が下げ止まっているという推測にしかならない。生のデータを公開してもらわなければ、われわれ東京都民の「知る権利」が都の怠慢によって満たされていないとの誹りは免れない。
#新型コロナウイルス に関して、東京都が初めて都内での陽性率を公表。5月8日は7.5%とのこと。最も多い時で、4月中旬の31%台。小池知事が、自身のライブ配信で発表しました。詳細が分かったらお伝えします pic.twitter.com/m6Bs9OcSUS
— 軽部理人/Rihito KARUBE (@rihito_karube) 2020年5月8日
軽部記者は上記ツイートを一部訂正し、それによれば陽性率が7.5%だったというのは5/8ではなく5/1から5/7までの一週間の平均値らしい。しかし、都のサイトを参照すると、5/7の分は医療機関の数字が未公開だが、その前の6日間のデータからはそのような低い陽性率は出てこない。この件については、陽性率を計算することができる生データを公開してもらわなければ全く納得できない。まさかとは思うが、陽性者が陰性に転じた分まで陰性者数にカウントしてるのではあるまいな。いずれにせよわれわれ都民には「知る権利」がある。
*1:けんもねずみ氏は5月8日に計算方法を改めた(https://twitter.com/kenmo_economics/status/1258694349983854597)。この結果、4/30~5/6の東京都の週間陽性率は13.78%と計算されている(https://datastudio.google.com/reporting/c4e0fe88-f72e-464e-a3b8-5e4e591c238d?s=oA3tV-uQzaE)。同氏のサイトに表示されたグラフからも、連休中に東京都内のPCR検査の陽性率がやや上昇気味であることが読み取れる。