kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

日本政府の有識者会議「敵基地攻撃能力は不可欠」…戦後の安保戦略一変させるか(ハンギョレ新聞, 11/23)

 『日本がアブナイ!』という、16年続けている弊ブログよりもさらに1年長い17年の歴史を持つ老舗政治ブログがある。同ブログに対して弊ブログはしばしば(括弧付き)「リベラル」だとか「都会保守」などと揶揄してきたが、昨年の衆院選で立民が負けたあとに泉健太が後任代表になった時、泉がブルーリボンバッジをつけていることを指摘するなど一定の見識を示した。また現在の泉立民に対しても「支持していない」と明言している*1。このあたりは泉へ泉へとなびく、つまり泉の代表就任以来鮮明になった同党のネオリベ路線回帰を支持ないし容認する立民支持系ツイッタラーの主流とは一線を画しているとして評価できる。

 同ブログの11月23日付記事も良い。下記にリンクを示して一部を引用する。

 

mewrun7.exblog.jp

 

 22日、防衛力の抜本的強化に向けた(「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の佐々江賢一郎座長が、岸田首相に会議をまとめた報告書を手渡した。(・・)

 

 政府は、この有識者会議の報告書を参考に、安保3文書の改正を行なう予定でいるのだが。案の定、「敵基地攻撃(反撃能力)を認める」「軍事増強、防衛費増加のために国民負担=増税を」などという話がまとめられており、マジに日本がアブナくなりそうだ。(**) 

 

<この有識者会議は、最初から結論ありきの出来レース。国の安保政策を大きく左右するかも知れない重要な会議だというのに、会合が行われたのは4回だけ。しかも、ほとんど防衛省をはじめ各省庁の出した資料に目を通して追認するような感じで。それに真っ向から疑問を呈したり、反対したりするような意見は出ていなかった感じだし(関心のある方は首相官邸HPに会議の内容などが載っているので御覧いただきたい)、最後のとりまとめは、佐々江座長に一任したのである。

 

 この佐々江氏(日本国際問題研究所理事長)は元外務次官&駐米大使を長年務めた人で、昔から日米安保&軍事強化を唱えていた人。この議論にはいる直前にも、中央公論7月号のインタビューで『「反撃能力」を導入し「核戦力共有」の議論を」と説いているような人。いかに出来レースかわかるというものだ。(-"-)>

 

 残念ながら、TVのニュース・ワイドショーでは、ほとんど取り上げてもらえず。このままだと国民が気づかないうちに、安保政策が大きく転換し、日本が「戦争をする国」に近づいてしまうおそれがある。(ノ_-。)

 

 日本の国民は、本当に周辺国と対応にやり合えるような軍事力の増強を望んでいるのだろうか。防衛予算増強のために、一般国民に対する税負担が増えてもいいと考えているのだろうか。(**)

 

<個人的には、極端な軍事増強には反対の立場だし。税負担にも反対だけど。もしどうしても予算が必要なら、大企業の法人税をあげてそちらで賄って欲しい。何か軍事増強で儲かる企業から、多く法人税をとる方法はないかな。(・・)>

 

(『日本がアブナイ!』 2022年11月23日)

 

出典:https://mewrun7.exblog.jp/30180093/

 

 引用部分の最後に「もしどうしても予算が必要なら、大企業の法人税をあげてそちらで賄って欲しい」などと書いて腰砕けになっている箇所が「大いに」物足りないと辛口に評価せざるを得ないのは残念だ。ブログ主に言われるまでもなく、岸田文雄は軍事費増額の財源として法人税(と所得税)を想定していることは日々報道されている。とはいえブログ主が軍事(防衛)予算の問題を正面から取り上げたことは高く評価できる。

 というのは、ブログ記事を書いてそれを公開しているからこそわかるのだが、軍事(防衛)予算の記事は特に不人気で、立民だの新選組だの共産党だのについて書いた記事と比較してアクセス数が目立って少なくなるからだ。

 つまり、左派・左翼の人たちを除き、一般にリベラル(括弧のあるなしを問わない)とされる人たちの多くはこの問題にほとんど関心を持っていないと思われる。

 現在は中国の習近平やロシアのプーチンといった悪質かつ反動的な独裁権力者*2が中露のトップで両国の軍事的脅威が増していることは事実として認めないわけにはいかない。しかし、それを「防衛費の大幅増額は止むなし」と思考停止的に認めてしまう態度は知的怠慢もいいところだ。軍事費を大幅に増額した場合にアメリカから交わされる武器について、たとえば迎撃ミサイルにどの程度の精度があるのかとか、オスプレイの安全性はどうなのかなどのいくつもの問題がある。その上に敵基地攻撃能力を持つ兵器を買うというのだから、多くの原発を無防備に晒している国が自分からリスクを高めても良いのかと思う。そもそも高額な兵器だけ買ってどうするのか、ハコモノばかりを作る地方行政と同じではないのか。そして特に私が問題視しているのは、急速に高齢化が進んで社会保障費を拡大させざるを得ない今の日本で、リスクも考えずにアメリカに言われるままに軍事費を野放図に拡大させて良いのかということだ。

 このように考えると、軍事費の増額を所与のものとして考えること自体が問題であって、現在の野党やその支持者や政府批判派は、議題設定の時点で岸田政権の術中にはまっているとしか言いようがない。こんな時に野党第一党の党首が右派で新自由主義にも親和的な泉健太であることは一大痛恨事だ。

 

 『日本がアブナイ!』のブログ主は、

 いくつかの記事を読んだのだが。韓国のハンギョレ新聞がかなり詳しく、わかりやすかった。(・・)

と書き、ハンギョレ新聞からの引用も行っているので、以下に同紙の記事をリンクして引用する。

 

japan.hani.co.kr

 

日本政府の有識者会議「敵基地攻撃能力は不可欠」…戦後の安保戦略一変させるか

登録:2022-11-23 06:26 修正:2022-11-23 08:49

 

外交・安全保障分野の有識者会議、最終報告書を岸田首相に提出 

今年末までに報告書に基づき国家安保戦略を改定

 

 中国の浮上による国際秩序の変化と北朝鮮の核・ミサイル脅威に対応するため、日本が戦後70年間維持してきた安全保障政策の大きな枠組みを変える方針を決めた。日本政府の有識者会議は22日、日本が厳しい安全保障環境を克服するためには、中国・北朝鮮など周辺国を打撃できる「敵基地攻撃能力」(反撃能力)を確保するなど防衛力を根本的に強化し、これに必要な財源確保のために増税が必要であるという内容を骨子とする最終報告書を提出した。岸田文雄首相はこの報告書をもとに、今年末までに日本の外交・安保政策の方向性を盛り込んだ国家安全保障戦略を改定することになる。

 

 岸田首相は同日午前、東京首相官邸佐々江賢一郎元外務次官と面会し、21ページにわたる「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」最終報告書を手渡された。岸田首相は「与党と相談しながら政府としての検討を進めていく」と述べ、佐々江氏は「防衛力の抜本的な強化が何より重要だ。積極的に進めてほしい」と応えた。

 

 同報告書には、現在の国際情勢の変化を眺める日本の切迫した状況認識と、これに対応するための独自の解決策が盛り込まれている。報告書は、中国の国力拡大を意味する「インド太平洋におけるパワーバランスの変化」と、北朝鮮の核・ミサイル脅威の拡大を意味する「周辺国等による変則軌道のものを含む相次ぐミサイル発射」を日本が直面した安全保障上の脅威として示し、これに対抗するためには日本の防衛力を「5年以内に抜本的に強化しなければならない」と提言した。5年後の2027年は、中国の人民解放軍建軍100周年になる年だ。

 

 報告書はまず、中国を念頭に「他国による侵攻の抑止や阻止、排除を行い得る防衛力の構築」が必要だとし、スタンド・オフ(遠距離)防衛能力▽領域横断作戦能力▽持続性・強靭性の向上など7つの対応項目を挙げた。また、北朝鮮の核・ミサイル脅威に対応するためには、平和憲法が規定した「専守防衛」原則に反するとして議論になっている「敵基地攻撃能力」(反撃能力)の保有が「不可欠」だと提言している。変則軌道のものを含むミサイルなど「周辺国等」(事実上、北朝鮮)の核・ミサイル能力が急速に増強されたとし、「我が国の反撃能力の保有と増強が抑止力の維持・向上のために不可欠だ」と指摘した。この能力を確保するためには、国産のスタンド・オフミサイルの改良等(12式地対艦ミサイルの射程200キロメートルから1000キロメートルに延長)や外国製のミサイルの購入(射程1500キロのトマホーク巡航ミサイル)などが必要だとし、「今後5年を念頭にできる限り早期に十分な数のミサイルを装備すべき」と提言した。

 

 有識者会議は、これに必要な財源確保のために自民党タカ派が主張する国債発行の代わりに増税が必要だと強調した。彼らは防衛力の抜本的強化のためには「安定した財源の確保」だとしたうえで、「歳出改革の取組を継続的に行うことを前提として、なお足らざる部分については、国民全体で(防衛予算の増加分を)負担することを視野に入れなければならない」とし「幅広い税目による負担が必要」だと提言した。法人税だけでなく、一般国民が負担する所得税の引き上げを呼びかけたものとみられる。日本政府は現在、国内総生産GDP)の1%水準である防衛費を5年以内に約2%に増額する案を進めている。

 

 この日最終報告書を提出した有識者会議は、佐々江元事務次官船橋洋一元朝日新聞主筆など外交・安保・経済・マスコミ分野など10人で構成されている。9月末から今月21日まで4回にわたって会議を行い、最終報告書をまとめた。岸田総理は「年末までに必要な防衛力の内容とそのための予算規模および財源確保など、一体的かつ強力に検討し結論を出す」とし、「今回の報告書が議論において重要なアドバイスを与えてくれるものと確信している」と述べた。

 

東京/キム・ソヨン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/1068447.html

韓国語原文入: 2022-11-22 22:31

訳H.J

 

(HANKYOREH(ハンギョレ)より)

 

出典:https://japan.hani.co.kr/arti/international/45188.html

 

 記事の終わりの方で、有識者会議の構成員に「船橋洋一元朝日新聞主筆」が加わっていることもきっちり書かれている。

 下記ツイートによると、日本の極右新聞・産経の発行部数が100万部を切ったらしい。

 

 

 こんなのを見ると、朝日は実は右翼だから衰退してるんじゃないかな、という軽口を叩きたくなる。

 いわゆる私がブログを始めた2006年を思い返すと、ネトウヨは現在は当時と比較にならないくらい衰退した。それは確かだ。産経の斜陽も同じ流れに乗るものかもしれない。

 しかしその一方で、「リベラル・左派」が(大きく)右傾化したのではないか。

 経済問題でも、かつては「上げ潮派」と「増税派」は自民党及び保守論陣内での論争だった。両者とも新自由主義の別々の流派だと指摘したのはもちろん私ではない。そういう論評をした人がいて、それに説得力を感じたのでかつてブログで取り上げただけだ。

 現在は同じ論争の構図が「反緊縮(というよりジャパニーズMMT)派」と「増税派」の間で繰り広げられている。前者には某新選組や三橋某・安藤某らの一派、後者には立民支持層の多くが属する。この16年間で社民主義的な主張は大きく後退した。

 同じことが軍事(防衛)予算の件についても当てはまる。立民支持層の多くは軍事費の大幅増額を所与のものとして(=解決すべき問題の前提条件として)受け入れてしまっているように見える。

 果たしてそんな姿勢で良いのか。

 軍事費とは別の問題だが、共産党(や社民党)が新選組にすり寄り、きたる愛知県知事選では緑の党出身にして某元号新選組が推す予定のケムトレイル陰謀論者にして山本太郎天皇(当時)への直訴に大感激したトンデモ右翼人士を、新選組に相乗りして推す構えを見せていることなども大問題だ。このことも繰り返し念押ししておく。

*1:とはいっても同ブログは現在でもかなりの立民びいきだと思われるが。

*2:悪質かつ反動的という点では日本の故安倍晋三アメリカのトランプも同じだが、ともにトップの座から去った上、今年(2022年)夏に安倍は殺されたし、秋にはトランプが中間選挙で結果を出せなかった。