そういや普段巡回している「リベラル・左派」系のTwitter*1でも軍事費(防衛費)増額の話はほとんど出てこないんだよな。ひどいのになると、先日も書いたけれど「増税政策=社会民主主義」と言わんばかりの能天気なツイートまであり、「自民党の社会民主主義的政策」などといった暴論が平気で出てくる惨状だ。彼らは税収の使い途には全く関心がないと見える。だから故安倍晋三が「俺の政策で増えた増収の使い途は俺が決める」などという暴言を吐くことができたのだ。
昨日(11/20)最後に公開した下記記事にコメントをいただいた。
yumeto
リンク先のブログ記事を引用する。
防衛費増額を突破口に「増税やむなし」という雰囲気づくりが始まる
自民党税調で防衛費増額に関する議論が始まった。こういう時は最初のアジェンダセッティングが大切だ。防衛費を増額すべきか?という議論はなく「アメリカに約束もしたのだから」何かの税金を上げなければならないという話になっている。政府・与党としては増税に向けた雰囲気づくりがしたいのだろう。いくつかの意味で防衛費はそのためにはうってつけなのだ。
最初のポイントは消費税が除外されたという点である。消費税増税が不人気なのは今に始まった事ではない。細川政権は福祉税構想で瓦解し野田政権も消費税増税を提案したことで政権を失った。特に民主党にとってはトラウマがある。教育費無償化などよほどの取引材料がない限り消費税増税は言い出しにくい。増税はしたいが政権が倒れては元も子もない。
このため消費税は最初から除外され法人税と所得税が増税の対象になっている。
経団連は最初から「法人税増税」には反対の立場だ。企業の支援を受けている自民党が所得税増税に踏み切れるとは思えないのでおそらく最終的には「別の形で」ということになるのだろう。だが、最初から「法人税も消費税もやりません」などというと国民からの反発を受けかねない。
増税に反対しそうな勢力は二つある。一つは「上潮派」と呼ばれた積極的な財政出動を推進する人たちだ。安倍政権下では主流の考え方だった。ただし彼らは安全保障ではタカ派なので防衛費増額には反対しない。「増税」の中から防衛費が選ばれたのはこのためだろう。
公明党側が狙うのは金融資産課税だ。東京新聞が「一億円の壁」について書いている。創価学会の信者の所得から考えると「庶民から税金を取る」という主張はしにくい。このため公明の総会で西田実仁税調会長は一億円の壁について検討しなければならないと言っている。
だが、政府・自民党中枢の本音は所得税増税だろう。このため「国民から幅広く」というようなフレーズが多用されている。この増税路線推進のために岸田総理は信頼がおける人材を登用し着々と布石を打っている。
まず自民党税調だ。岸田総理は個人的に信頼ができる宮沢洋一氏を自民党の税制調査会の会長に充てた。よく知られた話だがこの二人は従兄弟(いとこ)同士だ。宮沢税制調査会会長は以前から増税ありきの情報発信を繰り返しており、岸田総理・宮沢税調会長が「増税議論ありき」で議論を進めていることは明白だ。
政府側も淡々と外堀を埋める作業をしている。岸田総理の性格上「私が決めました」とは言いたくない。そこで「世界がそれを望んでいるから私が自発的にそれを推進している」という形をとっている。
このために使われているのがアメリカだ。バイデン大統領に約束しアメリカも諸手を挙げて歓迎しているという報道を後ろ盾に防衛力増強はもはや不可避であるという空気を作ろうとしている。
政府の有識者会議の座長を務める佐々江賢一郎さんは元外務省の官僚である。野田政権で外務事務次官を務めアメリカの特命全権大使に任じられた。その後安倍政権でもアメリカ大使として留任し2018年に離任しているそうだ。岸田外務大臣時代にもアメリカ大使としてやりとりがあったということになる。最初にバイデン大統領に防衛費増額を表明し佐々江さんを座長にしたのはおそらく偶然ではないはずだ。
- 防衛有識者会議、財源には法人税など 来週提言へ=関係筋(11月16日)
- アングル:防衛力の抜本強化、増税議論本格化へ 自民から異論で曲折も(11月21日)
日経新聞で佐々江さん関連の記事がまとまっている。防衛費は増額しなければならない、そのためには増税が必要だ、中国とは仲良くやってゆかなければならないといった提案をしているようだ。政府の意向をよく理解した上で元外交官として危なげのない提案に終始している。
事務次官経験者である佐々江さんが駐米大使に転出したことは当時の国会で問題になっている。事務次官は最終ポストであるという慣例が作られつつあったからである。だが民主党政権が対中関係の政策で行き詰まっている時期だった。中国とのビジネスを推進したい丹羽さんを中国大使から外しアメリカとの関係改善のために事務次官まで経験した佐々江さんをあえて駐米大使に任じたということだったようだ。アメリカに対する太いパイプと「困ったときには助けてもらえる」という信頼感のある人のようである。結局安倍政権下でも長く駐米大使を勤めた。
岸田さんの性格がよく表れている。心理的な責任は誰かに負ってもらいたい。このために置かれたのが「アメリカの意向」である。そして間違いなくそのために着々と政策を実行したい。そのために頼るのが間違いが少なく気心が知れた人材である。
安倍政権時代の消費税増税は「教育費の無償化」というサービスとセットだった。消費税を増税したのに支出も増やされたのでは財務省としてはたまったものではない。「このままでは大変なことになる」という危機感を植え付けた上で増税議論の素地を作れば財務省としての持出は少なくなる。
日本の有権者はほとんど政治に興味を持たない上に「アメリカに約束したことは守らないと仕方がない」という意識を強く持っている。岸田総理はこれは国際公約ではないとしつつも「バイデン大統領も称賛している」と防衛費増税を宣伝している。バイデン大統領を後ろ盾に防衛費だけでなく幅広い増税もやむなしという雰囲気をつくりたいわけだ。
皮肉な話なのだが北朝鮮に対処できないとかJアラートがうまく機能していないという点も「追い風」になる。岸田総理大臣は北朝鮮からのミサイルに対処できない日本という演出をしながら国民が「身の安全のためには増税もやむなしなのかな」と思ってくれることを期待してるのかもしれない。
日本国民は空気に弱くあまり政府批判をしない。徐々に外堀を埋めて空気さえ作ってしまえば、さらに搾り取ることができると考えているのではないかと思う。岸田総理の発言は迷走しているものが多いが、こと増税に関してはブレずに淡々と進んでいるという印象がある。
自民党の支持者たちは「そうは言っても最終的には国債でなんとかしてくれるのではないか?」と希望をつなぐのだろう。だが、今の議論を読む限りそのような結論には至りそうにない。結局、国民は自民党を支持することによって将来の増税を承認・黙認していると言えるだろう。
ただし記事のいくつかは今後自民党内で異論が出ることが予想されるなどと書いている。今後の議論の行方に引き続き注目したい。
(THE KEY QUESTION 2022年11月20日)
要するに岸田政権はアメリカにもいい顔をしたいし、ほっといても膨れ上がる社会保障費を賄う必要があるので、「アメリカから要請された」防衛費(軍事費)の大幅増額を奇貨として直接税を増税し、それを軍事費と社会保障費に充てたいと考えているという主旨の記事のようだ。
最初から軍事費増額を議論することをすっ飛ばしているところが味噌で、立民支持層の多くは岸田文雄の術中にまんまとはまっているといったところだろうか。
これだけ書いても、まだ立民支持層の中でも「社会保障が手厚くなるのなら良いじゃないか」などと能天気なことを言いそうな気がするので指摘しておくが、社会保障の充実などは間違っても行われない。単に社会保障を受ける対象の人口が今後どんどん増えるので、1人当たりの社会保障費を維持するために社会保障費全体は増やさざるを得ないということだ。1人当たりだとむしろ削減の圧力ばかりがかかる。実際に削減されつつあるし、その傾向は今後さらに強まるだろう。単に租税負担だけ増えるだけで社会保障は現状を維持できるかどうかも微妙。日本国民の暮らしはどんどん貧しくなる一方だ。
だから現在の社会経済システムは持続不可能だと弊ブログは主張する。
軍事費増強の件に関しては、某新選組系の『広島瀬戸内新聞ニュース』の記事が正しい。以下にリンクを張って引用する。
さらば立憲民主党 大幅軍拡の政府に腰砕け
立憲民主党の泉代表は、大幅軍拡の政府に対して腰砕けだ。
このままいけば、消費税増税の岸田・立憲vs国債発行の旧安倍派という不毛な二択になりかねない。
そうではない。そもそも軍備倍増で、日本の安全が本当に守れるのか?
冷静に考えなければならないのだ。
そもそも、自分で食う食料も3割ちょっとしか作れない国が武器ばかり買ってどうするのか?
戦争になったら、干上がって終わりだ。
また、経済力で差をつけられた中国相手に軍拡競争をしても先に倒れるのは日本だろう。
(『広島瀬戸内新聞ニュース』 2022年11月20日)
上記記事が指摘する通り、まず軍事費倍増なる荒唐無稽な政策自体に反対することから始めなければならない。そんなことは当たり前だろう。安倍晋三が提唱し、岸田文雄が強行しようとしている軍事費倍増など、あの中曽根康弘にだってできなかった暴政だ。なんで半世紀もGDP1%の枠をめぐる攻防だったのがいきなり2%なんて話が出てきて、それにろくすっぽ反論が出ないんだよ。日本の言論はそこまで崩壊しきってしまったのか。
軍事費増額への反対ができそうにもない泉健太には、やはり一日も早く立民代表を辞めてもらわなければならないが、それ以前に軍事費の件が岸田政権の命取りになるのではないかと私は思う。既に指摘されている通り、現在統一教会問題で土俵際に立たされている安倍晋三系の極右勢力が窮地を脱するためには、国債による軍事費調達を強硬に主張して政局にする可能性がかなり高いと思われるからだ。そうなれば世論もそちらになびくだろう。現在は国会議員でないから総理大臣になりようがない安藤裕あたりも安倍派になびくのではなかろうか。
貴ブログと共に私が愛読している社会系ブログに防衛費関連の記事があったので、参考までに紹介します。
https://gce.hidezumi.com/?p=30043
このブログ主は左派ではないようですが、政治以外にも経済や海外情勢に詳しい(素人の私よりは)ので、リベラルと自認している私もよく読んでいます。
防衛費増額に合わせて増税が規定路線のように進んでいくのかが今後の注目点の一つですね。