kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

現在の立民支持層に多い「財政規律重視派」と新選組・民民・一部安倍派の「ジャパニーズMMT派」の対立は、かつての自民党内の「増税派」(与謝野馨ら)と「上げ潮派」(中川秀直ら)の論争と同型。両者とも新自由主義陣営内の異なる流派だ

 まずは泉立民と玉木民民の話から。

 

 

 ツイートからリンクされた三春充希氏のnoteへのリンクを改めて張る。

 

note.com

 

 最初にリンクしたツイートから引用されている一節に続く部分から引用する。

 

 けれども目を向けるべき層は具体的にあります。投票に行かず、労働組合などにも組織されず、明かりを見出すことができずに日々を生きることに必死になっている層がおり、それは刻々と増えています。社会は動かない、自分もまた変わることがない、と諦めてしまった層。物価上昇や増税策、防衛予算の肥大化で最も負荷を受ける人たちです。

 どの政党もまだ取り込めていないその膨大な「政治の空白域」をどこが取り込むかということが情勢を決する時が来るでしょう。どこもそれを取り込めないのなら日本の政治が自ら変わることもないでしょう。そうした問題意識が今の政治家にはあまりに欠けているのではないでしょうか。

 自民党との対立を避けたり維新にすり寄ろうという立憲の一部の政治家の動きや、自民党に迎合しようとする国民民主党の動きは、限られたパイを奪い合っているだけで、向き合うべき層と向き合っているようにはとても思えません。

 

出典:https://note.com/miraisyakai/n/nc0784c140c7a

 

 それはそうなんだよな。

 最近は玉木雄一郎のことをほとんど書かなくなったが、玉木は今やトンデモ極右と化している。「希望の党」騒動当時から玉木の周囲には「あなた(玉木)こそ民主党の正当な後継指導者なんですよ」と持ち上げる人たちがいたことは想像に難くない。なぜなら希望の党、のち旧国民民主党(旧民民)は民進党の後身の政党だったからだ。だから2017年の希望の党民進党が分裂した初期には、玉木はなんとか規模で旧立民と張り合おうと躍起になっていたが、どんどん党勢の差を拡大されると自民党に接近するという方向で差別化を図るとともに、経済政策の思想では安藤裕や西田昌司らと同じ積極財政派となった。安藤・西田や玉木のような「右」の積極財政派の特徴の一つは極端な軍拡も厭わないことであって、故安倍晋三も同じ方向性を持っていた。

 昔から弊ブログを知っている方はご存知かもしれないが、私も長年の積極財政派だ。2008年に麻生太郎が(今からは想像もつかないが)積極財政を旗印に自民党総裁選に立候補して当選した。その当時には、kojitakenは麻生を支持するのではないかと観測する人もいたくらいだ。私はもちろん麻生を支持などしなかったが。

 今でも「財政規律」という4文字を見るだけで「何言ってんだ、このネオリベは」と反射的に思ってしまう。しかしその一方で、現在の「ジャパニーズMMT派」(の一部?)が言うような野放図な国債発行が良いとは全く思わない。国債の利払いは富の逆再分配になり、富裕層に利益をもたらす。

 現在、主に立民支持層にはこうした「ジャパニーズMMT派」への反発が勢い余って「財政規律重視」という新自由主義の一派と化している傾向が強い。一方ジャパニーズMMT派は、かつて「上げ潮派」と言われた自民党中川秀直一派に主張が近づいているように見える。Wikipediaの「上げ潮派」の項には

経済学者高橋洋一は「上げ潮派」は、自身、中川秀直竹中平蔵の3人しかいないと明言している[4]

と書かれている。示されている出典は、右翼系のリフレ派学者・田中秀臣の2009年の著書だ。

 そういえば山本太郎馬淵澄夫の「消費税減税研究会」は講師に高橋洋一を呼んだ。山本太郎は、これは馬淵の意向によるものだと言っていたようだし、実際その通りだったに違いないと私も思うが、山本自身がその馬淵と今もつるんでいることも事実だ。また長谷川羽衣子は今年9月にツイートでリズ・トラスの減税政策を賛美していた。ここまでくると過激なネオリベでしかない。そもそも新選組の党内統治に働く原理は新自由主義だ。

 何より罪深いのは、税制全体の枠組みを論じた上でなら十分傾聴に値する消費税減税*1を「減税」のワンフレーズポリティクスに変質させてしまってからは、人々をあらぬ方向へと導く「ハーメルンの笛吹き」と化してしまった。ついには「減税に反対する人間は社会主義者」と言い出す「減税真理教」の人たちを排出するに至った。

 かつて弊ブログや『きまぐれな日々』で、与謝野馨を中心とする増税による財政規律再建派も、中川秀直らの上げ潮派も、ともに新自由主義の一派だと何度も指摘した記憶があるが、それと同じことが主に立民支持系の「財政規律重視派」と新選組・民民・自民党安倍派の一部が形成する「ジャパニーズMMT派」についてもいえる。両派ともネオリベ新自由主義)のそれぞれ異なる流派でしかない。そういえばかつても「社会民主主義者としての与謝野馨」などと言い出した人がいたっけな。菅直人が与謝野を閣内に取り込んだ時には弊ブログでさんざん批判したものだ。

 そのかつての自民党内での「増税派」対「上げ潮派」の対立と比較しても、今回の方が議論が劣化している。ここにも「笑劇として繰り返される歴史」の一例を見る思いだ。

*1:直接税の増税とセットにするなら、という意味。山本太郎自身ももともとそういう主張のはずだが、なぜか最近はそれをあまり言わなくなった。山本が意見を変えたとまでは私は思わないが、おおかた富裕層や大企業対象であっても増税を言い出すのは大衆を扇動するためには逆効果だとでも思っているのだろう。