kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「長居」は大阪ではどう発音されるか/かつての東京では「赤とんぼ」「大岡」「原」はいずれも頭高で発音されていた

 大阪には生まれてから6年しかいなかったのだが、長居公園東住吉区)の「長居」をどう発音するかで、地元や近隣地域の人たちの間でも4つの意見があるらしいことが興味深かった。

 

 

 この人は「い」を高く発音するようだ。で、「な」を高く発音して以下音高を下げていく大阪メトロのアナウンスに違和感を表明している。

 

 

 この人は大阪ではなく奈良(か京都)の人だろうが、「が」を高く発音する。

 

 

 この人は「な」を高く発音する。大阪メトロのアナウンスも同じで、「が」は「な」より低く、「い」は「が」よりもさらに低く発音する。標準語でもこの発音だろうと思う。

 

 しかし大阪人の多数の意見は上記3パターンのいずれでもなかった。

 

 

 

 

 このお三方は「な」と「が」を高く、「い」を低く発音する。「長さ短さの『長い』は京阪アクセントでは「な」が一番高く発音されるので、それと区別されるというわけだ。

 大阪歴が生後6年までしかない私も、大阪人ならそういう発音をしそうだなと思った。子ども時代には近隣の兵庫県東部在住が長かったのだが、少し離れただけでも大阪とは少し違う発音をするらしいことは当時から気づいていた。というのは母親が大阪人で、友達の発音と少し違っていたからだ。

 ただ、この議論で思ったのは、「高高低」という大阪では古くからあると思われる発音パターンが、徐々に廃れつつあるのではないかということだ。

 大阪以外の関西人の多くは、「な」だけ高い派と「が」だけ高い派に分かれているように思われる。「長い」を「な」を高く、「長居」を「が」を高くして発音すると標準語の逆になるので受け入れられやすいという面もあるかもしれない。

 ここで話題を東京での発音に転じると、「長居」や「永井」のような固有名詞を例外として、標準語では単語を頭高に発音しない。これはおそらく官製のルールであって、古くからの江戸の言葉とはおそらく合っていない。だから有名な「赤とんぼ」に戦争に積極的に協力したことで悪名高い山田耕筰が1927年に節をつけた時に「あ」が高いメロディーにしたのだ。

 

www.mag2.com

 

 以下引用する。

 

変わりゆくアクセント

 

赤とんぼ」という語には、日本語の音声の面から見てなかなか興味深いことが潜んでいます。

「アカトンボ」をちょっと声に出してみてください。日本語のアクセントは、「高低アクセント」と言われています。高いところと低いところがあるのです。

共通アクセントでは

  カト
 ア  ンボ

という感じで、最初の「ア」は低く始まり、「カト」が高く、また「ンボ」が低くなります。みなさんの発音はどんな感じでしたか? こんな言い方をした人はいらっしゃいますか?

 ア
  カトンボ

最初の「ア」が高くて、後の「カトンボ」の部分は低く発音する。実際に口に出してみると変な感じがするかもしれません。

ところが…、少し前の日本語ではこちらの方が正しいアカトンボのアクセントだったんです。

童謡の赤とんぼ」を口ずさんでみましょう。

 

夕焼け小焼けの 赤とんぼ

です。「ア」の音が高くありませんか?

作曲者は山田耕筰で、昭和2年(1927年)に作ったとされています。昭和初期にはが高かったのです。ちなみに『新版日本語発音アクセント辞典』(NHK出版)では「伝統的なアクセント」として紹介されています。

意外なところで、古い日本語の姿を見つけることができるもんですね。

 

URL: https://www.mag2.com/p/news/262045/2

 

 また、東京出身の大岡昇平(1909-1988)が自らの姓は生まれてこのかた「オオカ」と頭高でしか発音されたことがなかったところ、生徒時代だったかの小林秀雄に平板アクセントで姓を呼ばれてしまったと晩年(1985年)に書いていた。そのエッセイで言及されていたのが、当時プロ野球の読売軍で四番を打っていた原辰徳の「原」の発音で、誰だったかがアナウンサーの発音では「腹」と同じだ、姓の「原」は「は」を高く発音するのだと書いていたことに対して、頭高の発音がされなくなったのは自分が若かった時代からのことだと指摘していたのだった。

 当時このことについて母親に聞いたら、大阪でも「原」は「は」を高く発音すると言っていたが、今の大阪人もそうなのだろうか。むしろ「腹立つ」は「は」を高く発音するけれども、「原」は平板に発音する大阪人が多いのではなかろうかと勝手に想像している。

 私が実際に接した例として面白かったのは、四国在住時代の2005年に関東遠征して丹沢主脈縦走で蛭ヶ岳から下山した時に泊まった地元の宿の親父が「るがたけ」と「ひ」を高く発音していたことだ。また2016年に同じ丹沢に行って塔ノ岳から下りた時には地元の人が「うがたけ」(とうのだけとは言わなかった)と「と」を高く発音していた。しかしこのような発音は、おそらく神奈川県の丹沢山地の地元近くにしか残っていないだろう。例えば多くの横浜市民や川崎市民はこのような発音をしないのではないだろうか。

 関西の一部に見られるらしい「ながい」から「ない」への変化もその一例、つまり官製の標準語の悪影響ではないかとふと思った。

 

 

 私はこれには大反対だ。1970年代を過ごした兵庫県東部でも「ほ」を高く発音するのが普通だった。でも今でも同じかはわからない。

 

 

 高槻も「た」が高いのが普通の大阪の発音だろう。兵庫県民でもそれに違和感はなかった。

 ところが、JRでは異様なアクセントでアナウンスしているらしい。

 

 

 どうも全国的に頭高のアクセントがどんどん廃れつつあるようだ。JR西日本の自動放送などほとんど犯罪的だろう。

 昔上京した時に最初に違和感を持ったのが、東京の人が頭高アクセントを避ける傾向が強いことだったが、現在では関西でも頭高アクセントが徐々に劣勢になりつつあるのではないか。

 大阪(関西)はもちろん、東京でも「かとんぼ」「おおか」「ら」などの頭高アクセントが復活すれば良いのにと思う今日この頃。