党総裁選にしても立民代表選にしても、党員票についてはどうやって無作為抽出が可能なのかさっぱりわからないのだが、自民党総裁選について読売が下記記事を出した。
まず、上記記事についた下記ブコメが目に飛び込んできたので、それを紹介する。
自民党総裁選で高市・石破・小泉氏が競る、決選投票の公算大きく…読売調査
「読売新聞社は党員・党友への電話調査」産経の記事「党員名簿は簡単に扱えるものではなく、このような調査はそもそもできない」どっちが正しいのか。<a href="https://www.sankei.com/article/20240916-CTMRLTRBMBFFTK2K2B62VVUXWQ/" target="_blank" rel="noopener nofollow">https://www.sankei.com/article/20240916-CTMRLTRBMBFFTK2K2B62VVUXWQ/
2024/09/16 23:15
いきなり脱線するが、上記ブコメからリンクされた産経の記事を紹介する。
「実施していない」自民が否定、真偽不明の党員世論調査出回る 「世論操作」の可能性も
2024/9/16 14:38
自民党総裁選(27日投開票)を巡り、一部の世論調査報道に真偽不明のデータが含まれていたことがわかった。このデータは自民党本部が党員約2100人に調査したとしているが、党総裁選挙管理委員会の逢沢一郎委員長が「実施したことはなく、今後も予定はない」と文書で否定した。党の世論調査関係者も明確に「していない」と述べており、党内でもデータの出どころなどに関し、さまざまな臆測を呼んでいる。
具体的な数字を羅列
この記事は出版社系のニュースサイトに元全国紙記者で現在はフリージャーナリストの男性が寄稿したもの。総裁選告示日の12日に配信されたが、16日現在では閲覧できなくなっている。
「高市早苗と石破茂に『驚きの数字』」「自民党本部が実施したとされる情勢調査の数字が出回っている」などとして、「石破茂氏34.9%、小泉進次郎氏23.2%、高市早苗氏15.9%」と具体的なデータを提示。「9月8日、党員2126人に実施」などと信憑性の高い書き方をしていた。
ところが、記事が配信された直後から「そもそも党で調査はしていない」との声が上がり始め、14日付けで報道関係者各位に宛てた逢沢委員長名の文書を配布、記事の内容を全面的に否定した。
「党員名簿簡単に扱えない」
党の世論調査関係者は「党員名簿は簡単に扱えるものではなく、このような調査はそもそもできないし、やろうという話も出たことはない。一部陣営が自分の支持者に絞って独自にやることは考えられるが、それだと偏りがでるため意味がない」と話す。
ある自民議員は「党員調査だと偽り、党内や世論を操作しようとした人物がいる可能性もある。ジャーナリストはそのデータにうまく乗せられたのではないか。総裁選はなんでもありだ」と話した。
(産経新聞より)
URL: https://www.sankei.com/article/20240916-CTMRLTRBMBFFTK2K2B62VVUXWQ/
そりゃそうだろう。きわめて異例のことだが、この件に限っては弊ブログは産経の方を持たざるを得ない。もっとも産経が応援しているのはどうせ高市早苗だろうから、記事にある怪しげなデータが石破茂と小泉進次郎に有利な数字であるのが気に入らなかったのかもしれないが、それはそれこれはこれで、繰り返すが「この件に限っては」産経の言い分が正しいとしか言いようがない。
で、問題の読売の記事だが、簡単に扱えないはずの党員名簿をどうやって調べたのかはわからないが*1、産経と森永卓郎が大喜びしそうな結果になっている。以下引用する。
自民党総裁選で高市・石破・小泉氏が競る、決選投票の公算大きく…読売調査
2024/09/16 05:00
自民党総裁選(27日投開票)を巡り、読売新聞社は党員・党友への電話調査と、国会議員の支持動向調査を行った。両調査の結果を合計すると、高市早苗経済安全保障相(63)と石破茂・元幹事長(67)、小泉進次郎・元環境相(43)が競り合い、このうち、上位2人が決選投票で争う公算が大きくなっている。2割弱の票の行方は不明で、誰が決選に勝ち残るかは流動的な面がある。
総裁選は、国会議員票367票に、同数の党員・党友票を合わせた計734票で争う。1回目の投票で過半数を得た候補がいなければ決選投票となり、議員票367票に加え、各都道府県で党員・党友票の得票が多い候補に1票ずつ47票が割り振られる。
党員調査は14~15日、全47都道府県で実施し、総裁選の投票権を持つ党員・党友だと確認できた1500人から回答を得た。
投票先は、石破氏が26%、高市氏が25%、小泉氏が16%で上位を占めた。4位以下は、上川陽子外相(71)6%、小林鷹之・前経済安全保障相(49)6%、林芳正官房長官(63)5%、河野太郎デジタル相(61)3%、茂木敏充幹事長(68)2%、加藤勝信・元官房長官(68)1%の順だった。9%は投票先を明らかにしなかった。
この結果を基に、党員・党友票を試算すると、石破氏が97票、高市氏が94票、小泉氏が60票、上川、小林両氏が22票、林氏が18票、河野氏が11票、茂木氏が7票、加藤氏が3票となる。
党所属国会議員の支持動向調査は、衆参両院議長らを除いた議員367人に対して行い、15日時点で96%に当たる352人から意向を聞き取りなどで確認した。
小泉氏が45人と最多で、小林氏が40人、林氏が35人、茂木氏が33人だった。高市氏は29人、石破氏は26人、河野氏は24人、上川氏は23人、加藤氏は21人で、「未定」と「未回答」は91人だった。
党員票と議員票の合計では、高市、石破両氏が123票で並び、小泉氏が105票で追っている。以下は、小林氏62票、林氏53票、上川氏45票、茂木氏40票、河野氏35票、加藤氏24票で、上位3人と差がつく展開となっている。
得票率は高市、石破、小泉3氏とも2割弱にとどまっており、1回目の投票では誰も過半数に届かず、決選投票にもつれ込む情勢だ。
支持理由「政策に期待」が最多27%
一方、党員調査では、選んだ候補に投票しようと思う理由について、「政策に期待できる」が27%と最多で、「改革意欲がある」が21%、「人柄が信用できる」が12%で続いた。投票判断で最も重視する政策や課題は、「外交や安全保障」が27%、「景気や雇用」が19%、「自民党改革や政治資金問題への対応」が14%、「社会保障」が12%だった。
自民党に最も必要だと思うことは何かという質問では、「派閥にとらわれない党運営」が26%、「世代交代」が21%、「政治資金問題へのけじめ」が20%、「党全体の結束」が17%だった。
(読売新聞オンラインより)
URL: https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240915-OYT1T50100/
何より、見出しでも記事でも真っ先に名前が書かれているのは高市早苗だ。つまり読売は、高市が次期自民党総裁、つまり日本初の女性総理大臣になるとみていることになる。
そういえば昨日(9/16)のサンデーモーニングで、カマラ・ハリスが米国発の女性大統領になるかどうかの話が出ていた。コメンテーターとして出ていたピースボートの畠山澄子がハリスに絡めて、自民党総裁選にも女性が出ている、考え方は私とは合わないところがあるけれども、そのあと違った人(まともな政策や主義主張を持った女性という意味だろう)が出てくるかもしれないし、見てみたい気持ちもある、以上は記憶に基づいているので不正確かもしれないが、そういう意味のことを言っていた。
実際には高市は推薦人に13人もの裏金議員を抱えているし、そもそも減税と積極財政による大規模な軍拡以外に売り物がなく、選択的夫婦別姓にももっとも強く反対するどうしようもないトンデモ極右だ。野党政局に関しては私とは全く考えが合わない(それどころか私を「世に倦む」御仁ばりの陰謀論者だと決めつけた)こたつぬこ(木下ちがや)氏も、高市についてはうまいことを言っている。
高市総理とはすなわち、山本太郎が立憲の代表になるようなもの。 https://t.co/MlerwAon2A
— こたつぬこ🌾野党系政治クラスタ (@sangituyama) 2024年9月14日
私は以前から、山本太郎が信奉する日本版MMT(現代金融理論)にもっとも近い政策、従って元号新選組の主張に近い政策を持つ自民党の政治家は高市早苗だと弊ブログに書いてきた。それを裏付けるようなことを、最初の方で名前を引き合いに出した森永卓郎が言っている。
以下引用する。
森永卓郎氏 総裁選を独自解説、加藤勝信氏は「財務省が財政出動派の高市さんをつぶすために放った刺客」
9/11(水) 11:28配信
経済アナリストの森永卓郎氏(66)が11日、ニッポン放送「垣花正 あなたとハッピー!」に出演し、自民党総裁選(12日告示、27日投開票)を“独自解説”した。
自民党の加藤勝信元官房長官(68)が10日、国会内で記者会見し、党総裁選への立候補を正式表明し「国民の所得倍増を最優先で推し進めたい」と強調した。立候補の正式表明は8人目。
総裁選にはこれまで、小林鷹之前経済安全保障相(49)、石破茂元幹事長(67)、河野太郎デジタル相(61)、林芳正官房長官(63)、茂木敏充幹事長(68)、小泉進次郎元環境相(43)、高市早苗経済安保相(63)が立候補を表明。上川陽子外相(71)もきょう11日に出馬の記者会見を行う予定。
森永氏は「高市早苗大臣が出馬表明をした時に“経済成長、経済成長、経済成長にすべてを懸けます”と宣言をしたわけです。(立候補は)今、8人で、あと上川さんを入れると9人になるのかな。その中で唯一、財政出動、減税の可能性を残しているのが高市さんです」と指摘。
そのうえで、「これを財務省は何がなんでもつぶしたいんです」と言い、「私は高市さんをつぶすための刺客が加藤さんだと思うんです。加藤さんは推薦人20人を集めるのに非常に苦労していたんですよ。今まで出馬表明できなかった、もうちょっとだったんだけれども、そこを後押ししたのが財務省だったんじゃないかなと私は思うんです」と自身の見解を述べた。
その理由については「高市さんの“経済成長、経済成長、経済成長”に合わせるように、とってつけたように加藤さんが所得倍増計画っていうのをね、池田隼人かって。これは完全に高市さんと表面的にはカブっている。そうすると一定の数、支持は高市さんから流れるだろうという読みのもとで、加藤さんは元財務官僚。だから財務省に“俺たちが応援すっから一発出ろよ”って言われて、総理大臣になる目っていうのはほとんどないですけれども、言われたら“じゃあ一丁やりますか”みたいにね。いい人みたいなんですよ」と説明していた。
(スポーツニッポンより)
URL: https://news.yahoo.co.jp/articles/23ce9097e18376b131ab718780b364594346a391
森永はこのコメントをする少し前に、デイリースポーツのコラムに小林鷹之についても「緩和派の高市早苗さんを潰すために財務省が送り込んだ刺客だ」と書いていた。
そしてつい昨日にも森永は下記の妄言を垂れ流した。
以下引用する。
森永卓郎氏 自民党総裁選の決選投票に残らなかったら「その時点で日本は終わる」と考える候補者とは
9/16(月) 11:35配信
がんで闘病中の経済アナリストの森永卓郎氏(67)が16日、ニッポン放送「垣花正 あなたとハッピー!」に生出演。自民党総裁選(27日投開票)に立候補している候補らについて語った。
過去最多の9人が立候補した今回の総裁選。番組では、読売新聞社が党員・党友への電話調査と、国会議員の支持動向調査を行い、その結果、高市早苗経済安保担当相と、石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相が競り合い、上位2人が決選投票で争う公算が高くなっていると伝えた。
森永氏はこれについて「私は見ててですね、どいつもこいつも経済音痴だと思ったのは、今本当に日本はデフレ再突入の危機にあるわけですよ」と明言。
「業界ではコアコアって言うんですけれども、エネルギーと生鮮品を除いた消費者物価上昇率って、7月1・9パー(セント)まで下がってるんですね。日銀の目標2なので、つまり目標物価を下回るところまで。1年前4・3だったんですよ。物価上昇率が半分以下になってるんです。このまんまいくと、この後円高も重なりますし、流通業者の叩き売りセールも重なるので、どんどん物価が下がっていくんですよ」と言い、「その中で財政と金融緊縮したら恐慌になっちゃうっていのは、サルが考えたって分かるのに、この9人の中で8人が財政均衡主義、プライマリーバランス黒字化だって言ってるわけですよ」と続けた。
「高市さんだけが、プライマリーバランス均衡至上主義はいけないとは言ってるんですけど、じゃあ具体的に減税するのかなんとかっていうのは言ってないわけですね」と語り、それでも「ただ私は決選投票に高市さんが残らなかったら、その時点で日本は終わると思ってます」と言い切った。
パーソナリティーのフリーアナウンサー・垣花正が「この中で高市さんだけが、経済のことを分かっているだろうと、モリタクさんの見立て。彼女は経済成長というのをフリップで出したりして、割とそこに全振りしてますもんね」と続けると、森永氏は「そうです」と一言。
「実はね、増税で財政再建ができたなんて例は私は一つも知らなくて。たまたま経済政策が当たって、パイが増えて税収が増えちゃって黒字化することはあるんですけど。節約耐乏生活を国民にしいて財政が良くなることは絶対にないんです」と断言した。
(スポーツニッポンより)
URL: https://news.yahoo.co.jp/articles/b87f0dbae2fe53ace742e5b7952e2ba3f07d3b86
森永が言う「プライマリーバランス均衡至上主義はいけない」というのは確かで、たとえば神野直彦が青少年向けに書いた昔の岩波ジュニア新書でも財政均衡至上主義は明確に否定されているが、「上げ潮派」(中川秀直ら)と「増税派」(与謝野馨ら)という、ともに新自由主義系の二派が論争を展開していた2000年後半から10年代初頭にかけてならともかく、今時「プライマリーバランス均衡至上主義」の政治家などどこにいるのだろうか。いまや立民の野田佳彦だってそんなことは言っていない。ましてや岸田文雄が言い出した防衛費(軍事費)倍増政策を縮小する側から否定する自民党総裁候補が誰もいないことから明らかな通り、自民党総裁選ではどの候補も「プライマリーバランス均衡至上主義」など言い出しようがない。そんなことを言い出したら軍事費倍増など実現できないからだ。ただ馬鹿正直な岸田は「プライマリーバランス均衡至上主義」に近いと見えて、軍事費倍増の財源を所得税と法人税に求めると言ったために、主に右派から「増税メガネ」とのあだ名をつけられて内閣支持率を大きく落とし、今回の総裁選への出馬断念に追い込まれた。
つまり森永は存在しない仮想敵に向かって拳を振り上げているに等しい。
そしてその森永が応援するのがトンデモ極右の高市早苗というわけだ。
少し前まで、民主党系の政党を戦前の立憲民政党に準えて、民政党が政友会とともに大政翼賛会を形成した再現が起きるのではないかとの意見がよくみられたが、実は一番ありそうなのは高市早苗ら自民党極右と、「リベラル・左派」に蔓延している「(消費税)減税真理教信者」との野合ではないかと思う今日この頃だ。
かつて自民党安倍派に属した極右政治家で、最近参政党への移籍を自ら認めた安藤裕に「総理大臣にしたい政治家」とラブコールを送った山本太郎は、今回の自民党総裁選にはどういう意見を持っているのだろうか。
[追記]
本記事を書いている最中に、下記のコメントをいただいていた。
コメントありがとうございます。今回の記事とは入れ違いになってしまいました。
*1:まさかランダムに大量の人を調べて、その中から下記記事に書かれている1500人を集めたわけでもなかろう。
これが真相のようです(?)
「実施していない」自民が否定、真偽不明の党員世論調査出回る 「世論操作」の可能性も
ttps://www.sankei.com/article/20240916-CTMRLTRBMBFFTK2K2B62VVUXWQ/
>この記事は出版社系のニュースサイトに元全国紙記者で現在はフリージャーナリストの男性が寄稿したもの。総裁選告示日の12日に配信されたが、16日現在では閲覧できなくなっている。
>「高市早苗と石破茂に『驚きの数字』」「自民党本部が実施したとされる情勢調査の数字が出回っている」などとして、「石破茂氏34.9%、小泉進次郎氏23.2%、高市早苗氏15.9%」と具体的なデータを提示。「9月8日、党員2126人に実施」などと信憑性の高い書き方をしていた。