kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

毎日新聞がコイズミ以来の「カイカク」を批判した画期的な社説

いまだ両論併記の形ではあるが、毎日新聞が、これまで同紙が金科玉条としてきた(ように見える)「コイズミカイカク」を中途半端に引き継いだ安倍政権の経済政策の矛盾を鋭く突き、疑問を投げかける社説を掲載した。

こういう言論を待っていたのだ。ジャーナリズムの復活の気配を感じる。

http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20070723k0000m070118000c.html

以下引用する。

社説:参院選 経済の姿 どう活力を保っていくのか

 安倍晋三首相は今回の参院選を「美しい国」の実現や戦後レジームからの脱却に向けた諸政策を問う好機ととらえている。このことは経済政策にも貫徹している。その一方で、成長力戦略を前面に打ち出し、国際競争力の回復を課題としている。

 美しい国という言葉に示される、古き良き時代への情緒的な憧憬(しょうけい)は、当然のことながら、経済政策の柱である成長主義と衝突する場面が出てくる。

 経済分野における戦後レジームからの脱却は、行政による経済への介入の最小化が狙いである。具体的政策としては、公務員改革や規制改革の推進、市場主義の徹底ということである。これまた、美しい国とぶつかる。古き良き地域社会は小さな政府では維持できないからである。

 このことに示されているように、安倍自民党政権公約に盛り込んでいる経済の姿は矛盾に満ちている。

 小泉純一郎前政権は、過去の創造的破壊を目指した。構造改革という名の新自由主義的政策である。努力したものが報われる社会では、一定の格差は是認した。

 安倍政権はどうか。改革路線を引き継いでいることは公言している。成長戦略も供給サイドを強化すれば、おのずと需要も出てくるという小泉前政権以来の新古典派流政策である。需要不足へのとりたてての施策は打たないということだ。地方分権もこれまでの施策に示されているように、抜本的な財源移譲は行われていない。

 その一方で、美しい郷土を作るという。地域経済再生も公約している。いずれも、地域社会での公共サービス維持なしには実現不可能である。民間や市場に任せていればうまくいくとも思えない。やっぱり、公共投資はばらまくのかということになる。

 つまるところ、安倍自民党が提示しているのは、美しい国という古い日本とグローバル化に対応した市場主義が混在している矛盾を内包した経済像である。

 そうみてくると、民主党が描く経済の姿を大きな政府と批判しても、説得力に乏しい。

 民主党は基礎年金全額を国費で賄うことや、教育への財政支出の5割増、中小企業対策の充実などを掲げている。いずれも財源が必要だ。社会サービスの充実には人的手当ても欠かせない。財源対策として、行政のムダをなくすことや国家公務員の総人件費20%削減を提案している。

 くらしを各論の冒頭に置いていることは、自民・公明連立下での負担の増加や社会保障政策へのアンチテーゼであろう。財源手当てがどれだけ現実的か、額として十分なのかは検証が必要だ。

 これを大きな政府と呼ぶのか、社会サービスを過不足なく供給する政府とみるのかは、一方的に判断はできない。国民がどうみるかが第一だ。少子高齢化が進む中、経済の姿は大きな焦点だ。

毎日新聞 2007年7月23日 0時26分

難をいえば、毎日新聞が「コイズミカイカク」と民主党の政策のどちらを是とするかを表明していないことだろうか。