全く根拠のない山勘だが、民主党代表選は決選投票にならずに細野豪志に決まるか、決選投票で岡田克也に決まるかのいずれかだと思う。しかし、両者とも（あるいは長妻昭を含めても）良い候補であるとは思えない。
細野豪志には定まった主義主張はなく、その行動原理は「人気取りに基づく遊泳術」だが、現在は新自由主義政党・維新の党との合流を目指している。党内右派がバックにいることも警戒心をかき立てる。
一方、岡田克也は「確信せる財政再建原理主義者」で、経済政策の主義主張からいえば細野豪志よりもさらにたちが悪い。
勝つ可能性はほとんどないと思うが、長妻昭は主義主張が曖昧で、まだ「ムダの削減」なんかにこだわっている。「政権交代」の失敗の総括ができていない。
以上、ダメダメの民主党代表選だが、さりとて安倍晋三の経済政策が良いかといえば、そうではない。第2次内閣発足直後に金融緩和が効果をあげたものの、昨年4月の消費税増税によって経済成長はマイナスに転じた。さらに安倍政権の経済政策には再分配が欠けているため（あるいは、逆再分配に邁進しているため）、格差は拡大する一方だ。株価だけが上がってGDPがマイナス成長というのではどうしようもない。金持ちと大企業だけが潤って、貧乏人はますます貧乏になるというのが安倍政権の経済政策の特徴だ。
その安倍政権の政策をチェックすべきジャーナリズムの認識も甘い。たとえば、昨日（1/16）朝日新聞1面に掲載された、疋田多揚記者*1の署名記事「『勝ち組』優遇 遠い支え合い」という記事は、視点は良いのだが書き出しがいただけない。以下引用する。
景気回復に貢献しそうな大企業や富裕層は優遇する一方、社会的な支えが必要な人たちへの「目配り」は乏しい。2015年度の政府予算案と税制改正案は、そんな安倍晋三首相の姿勢を感じさせる。
（2015年1月15日付朝日新聞1面掲載記事「『勝ち組』優遇 遠い支え合い」（疋田多揚記者署名記事）より）
大企業や富裕層が潤っても、それは全く「景気回復」につながっていない。疋田記者は、そもそも「景気回復に貢献しそうな大企業や富裕層」などという表現を使うべきではなかったというのが私の感想だ。書き出しに続く記事は悪くなかっただけに残念だ。そして、景気が全く回復していない現実を表すのが、12日に政府が発表した2014年度GDP成長率がマイナス0.5%という「見通し」の数字だ。政府は同時に、来年度は1.5%の実質成長率が見込まれると発表した。
この数字が新聞各紙に載ったのは1月13日だが、朝日（東京本社発行最終版）が1面トップで「GDP 今年度0.5%減」と書いたのに対し、産経（同）が紙面の中程で「来年度GDP実質1.5%増」を見出しにしていたのには笑ってしまった。
なぜって、今年7〜9月度のGDPは、ほとんどのシンクタンクがプラス成長を予想していたのに一次速報値はマイナスだったし、さらにほとんどのシンクタンクが確定値で上方修正を予想していたのに実際の確定値は下方修正されたことを思い出したからだ。過去の経済の実勢さえまともに見積もれないのに、未来の経済成長率など「当たるも八卦当たらぬも八卦」だろう。安倍政権が大胆な金融緩和を始めた頃には、各シンクタンクの予想を上回る数字が出て、それが内閣支持率を押し上げたが、消費税率引き上げ後はその逆になっている。それが数字になって表れたのが、今年度マイナス成長という数字だが、産経はその悪印象を覆い隠すために、占いの域を出ない来年度の経済成長率を見出しにするのである。御用ジャーナリズムもここまで露骨でかつしょぼければ、嘲笑の対象以外の何物でもない。
私の意見を書くと、経済成長と格差の縮小は、健全な経済の両輪なのだ。経済成長なくして格差縮小なし、格差縮小なくして経済成長なしというのが、私の確信である。低所得層および中所得層の下位が消費できなくなっているのが日本経済の病根だと私は考える。ワーキングプアの人たちは、働けど稼げないから消費できない。また、中所得層下位は、いつ失業して低所得層に転落するかわからない、あるいは過労死寸前まで働いて時間がとれない、等のさまざまな理由で、やはり十分に消費できない。安倍政権の経済政策は格差をさらに拡大するものだし、細野豪志の恋人ともいうべき維新の党の「しばき主義」や岡田克也（や元首相・野田佳彦、元財務相ら）の財政再建原理主義はデフレ政策でしかない。
自民党（安倍政権）の経済政策もダメだが、民主党もダメダメ。かくして、今年も日本経済の低空飛行は変わらないのではないかと占う今日この頃なのだった。
