kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「リベラル・左派」は「地球温暖化陰謀論」にかまけている暇などない

本当にノーテンキなのが「リベラル・左派」のブログ論壇というやつで、先日来、環境・エネルギー問題で「地球温暖化論」は原発推進のための陰謀だ、という俗説がこの論壇でまかり通っていることにしびれを切らした私は、「地球温暖化陰謀論」批判に踏み切った。

それで、今日、というか日付けが変わってしまっているが、金子勝とアンドリュー・デウィットの共著である『環境エネルギー革命』(アスペクト、2007年)を買った。本当は技術系の本を買おうと思っていたのだが、行った本屋にはあまり良さそうなものがなかったし、この本が目を引いたので衝動買いしてしまった。

環境エネルギー革命

環境エネルギー革命

まだほんの初めのほうしか読んでいないが、これは約1年前の本であり、冒頭に当時首相だった安倍晋三に対する辛辣な批判が出てくるので、大の安倍嫌いである私としてはすんなり入っていけそうだ。

序章で、早くも注目すべき記述に行き当たった。環境エネルギー政策に関する対抗軸は、従来の「大きな政府」対「小さな政府」(新自由主義)や、「第三の道」対「小さな政府」では理解されず、代替エネルギーの開発には補助金だけではなく国家主導のあらゆる政策が動員されている(政府介入的)一方で、代替エネルギーの売買を促進するための規制緩和政策も用いられており、環境税が導入される一方で、排出権取引のような市場原理も、時には肯定される。

確かに、この点は以前「きまぐれな日々」で紹介した飯田哲也氏の論考を読んだ時に気づいたことで、福祉国家新自由主義という対立軸では説明できないな、と思っていたところだ。

実際、この本によるとイデオロギー的な色分けは困難らしく、イギリスの保守党は若いリーダーを押し立てて環境政策を前面に押し出す一方、フランス社会党の大統領候補だったロワイヤルは元環境大臣だった。カナダの中道左派政党で、2006年に下野した自由党は、温暖化対策を重視した元環境大臣のステファン・ディオンが党首に選ばれたそうだ(2006年12月)。

蛇足だが、ネット検索したら「日本deカナダ史」というブログが見つかったが、結構面白そうだ。

ま、それはともかく、世界では右も左も実のある温暖化対策に目を向けているのに、日本のネット右翼原子力発電推進の金切り声を上げ、一方ネット左翼は「地球温暖化論は原子力推進派の陰謀だ」と得意の陰謀論をぶち上げる。反知性同士の不毛な争いには、心胆を寒からしめるものがある。

金子とデウィットは、日本政府は、環境エネルギー技術において、日本はEUの20年先を行っていると錯覚しているが、実際には風力、地熱、波力、太陽光などの再生可能エネルギーの分野では、既にEUに追い越されていることをわかっていないようだ、と批判する。

思考停止の右翼が原発にこだわるのを批判しようとするあまり、「リベラル・左派」が「地球温暖化陰謀論」なんかにのめり込んでいるようでは、日本の環境エネルギー技術および政策のお先は真っ暗だ。くだらない陰謀論にかまけるのはたいがいにしろ、と言いたい。