kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

ヤクルトスワローズの10連勝と「検察審査員」の平均年齢

壺を振っても - Living, Loving, Thinking, Again より。

古寺多見氏の(中略)解釈*1も興味深いが、もっと統計学というか確率論の基本に関わることだろうと思う。

理論的には、骰子を投げれば1〜6のどの目も同じ頻度で出てくる。しかし、経験的にはそうでないことが多い。また、同じ目ばかり連続して出てくることもよくある。理論と一致するように出てくる目の頻度が均されるにはそれなりの試行数が必要なのだ。だから、半が何回も続いたので次は丁に賭けようとしても、また金を擦ってしまう可能性は高い。それから、ここでイカサマだ! とキレれば、かなり高い確率で簀巻きにされて東京湾に投げられてしまうことになる。「検察審査会」の抽出だけど、20歳以上の日本国民というきわめて大きな母集団から11名。つまり、試行は11回だけ(辞退者とかもいるので、実際はそれより多い筈だけど)。サンプル数が少ないと批判される與論調査よりもさらに少ない。このくらいの試行数だったら、サンプルがばらけない状態(博打の例で言えば、半ばかり続けさまに出てくる状態)が出現しても不思議ではないと思う。勿論、年齢層やジェンダーのバランスを維持するために、クォータを設定してサンプリングするということは検討に値するとはいえるだろうけど。

確率論の基礎知識に関しては、小島寛之『サイバー経済学』を取り敢えずマークしておく。この本はタイトルはアレだけれど、内容はまっとうです。


実はこの『サイバー経済学』を持っている。2001年発行だが、本にレシートがはさまっていて、2001年11月13日に岡山の本屋で購入していた。あとで読み返してみたいと思う。


サイバー経済学 (集英社新書)

サイバー経済学 (集英社新書)


確率論というのは、分かり易そうで実は落とし穴だらけの難しさがある。特に「条件つき確率」の罠にははまりやすく、上記の本に書かれていたこともそれと関連していたのではないかと思う。

それとは別に、私は、田中康夫が検察審査員の平均年齢の件にいちゃもんをつけたと最初に聞いた時、「平均年齢30.9歳」というのは起こっても不思議はない事象ではないかと直感し、某所にもっと過激な田中康夫批判の文章を書いたのだが、モンテカルロ法を用いて計算した2ちゃんねらー(?)が、「0.113%」という微妙な数字を出していることを知ったたため、「起こっても不思議はない事象」一点張りでは説得力が不足しているかもしれないと思って持ち出したのが、「審査員逃れ」の仮説だった。

0.113%というと、勝利の期待値が0.5であるプロ野球チームが次の試合から数えて10連勝する確率とほぼ等しい。今年、プロ野球セントラルリーグで惜しくも4位に終わり、クライマックスシリーズ進出を逃したヤクルトスワローズの勝率は、ほぼ5割だった。

つまり、田中康夫は「ヤクルトが10連勝するなんて、統計学ではあり得ない事象だ。ヤクルトは八百長をやったに決まっている」と言っているようなものだ*2

で、現実はどうだったかというと、ヤクルトスワローズは今年8月に10連勝を記録したのである。

プロ野球ペナントレースで勝率5割の球団が次の試合から10連勝する確率」と、「プロ野球ペナントレースにおいて12球団のうちいずれかが10連勝以上を記録する確率」とは全然違い、後者の方が断然確率が高いことはいうまでもない。たまたま、ある球団(例えばヤクルト)が10連勝したからといって、「そんな確率は1024分の1しかない」わけではない。

ましてや、その後訂正発表があったように、「検察審査員の平均年齢が33.91歳」だったとするなら、もっとありふれた事象になってしまう。つまり、田中の主張はますます説得力を失う。

この訂正も、算術計算の辻褄が合わないらしいが、お役所側が間違って平均年齢を低く発表するメリットは何もない。動機付けの説明もできない以上、二重のケアレスミスであるとしか解釈できない。

それより私が看過できないと思うのは、「検察審査員の11人は統一協会のメンバーだった」というデマを撒き散らす陰謀論者がいることだ。軽佻浮薄としかいいようのない田中康夫の言説は、そんな陰謀論者に燃料を投下しているようなものだ。

だから、私は田中康夫が不用意に撒き散らした陰謀論を断固として厳しく批判するものである。

*1:http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20101011/1286807873

*2:もっとも、田中は「平均年齢が30.9歳になる確率は100万分の7」という雑誌記事を元に上記の発言をしたのであろう。これなら、ヤクルトが次の試合から17連勝する確率にほぼ等しい。