kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

つくづく思う、「原発はローテクだ」と。

東日本大震災の当日に発生した福島原発事故から1か月。

私は、原子力発電にかかわったことはもちろん一度もないし、知識も乏しいのだが、ここ1か月の原発事故報道に接してつくづく感じることがある。


それは、「原発ってなんてローテクなんだろう」ということだ。


同じ工業技術でも、エレクトロニクスの世界とは大違いだ。たとえば私が20年前に初めて買ったPC-9801用の外付けハードディスクの容量は40メガバイトだった。それが、昨年買ったデスクトップパソコンのハードディスク容量は500ギガバイトだ。19年間で容量は1万倍以上になっている。

それなのに、今回大事故を起こした福島第一原発1号機は、40年間も運転してきた。炉の設計をよく知る技術者たちは、もうとっくに現役を引退している。

もちろん、原子炉は一度作ったら30年ないし40年の間運転を続けなければならないものだから、上記は当たり前のことなのだが、原子炉の内部はものすごくこみ入った配管になっていて、あれでは異常が起きた時にどこがおかしくなっているのかを突き止めるだけでも大変だろうし、ましてや放射能が強くてなかなか設備に近寄ることもできないともなれば、今回のように延々と事故を収束できないのもむべなるかなと思う。


ひとたび原子炉がやられてしまうと事態がどうしようもなくなるのは、ちょうどホストコンピュータがやられると端末はすべて使いものにならないことと似ている。つまり集中管理の弱点だ。

これに対して、インターネットのように網の目状にネットが張りめぐらされていると、リスクを回避しやすい。原発再生可能エネルギーの関係は、ちょうどコンピュータの集中管理と分散管理の関係になぞらえられる。実際、グーグルはスマートグリッド分野に進出した。


このアナロジーを考えると、中央集権の最たるものともいえる官僚機構と原発との親和性が高いことが理解できる。経産省の官僚は未だに「原発推進の基本方針は不変」との姿勢を崩していないし、財務官僚に操られていると酷評される与謝野馨にいたっては、まるで壊れたレコードのように「原発推進の方針は正しかった」と繰り返すばかりだ。

10電力会社の体制も、戦時中の統制経済の時代に作られ、それが現在までゾンビのように生き延びてきたものだ。だから、官僚は東電の温存をたくらむ。「福島原発部門」だけ切り離して残りを「新東電」として再スタートさせる案など論外であって、それだと柏崎原発を含めた現在の東電が、事故を起こした福島原発だけを切り捨てて温存されることになる。既得権益が守られてしまうのである。


新聞記事を見ていると、海江田万里が「東電株式の44%が個人所有でお年寄りも多い。軽々に国有化などと言うと、その人たちが動揺する」、だから東電は国有化などしないと言ったらしい。「東電の株式を個人で所有しているお年寄り」というと私が直ちに連想するのは鳩山由紀夫だが、要するに海江田は富裕層を味方につけて東電の温存を図る官僚や経団連の意のままに動いていると思われる。与謝野といい海江田といい、東京1区にはろくな政治家がいない。東電は「大きすぎて潰せない」であってはならず、必ずや潰すさなければならない、というと語弊があるとするなら、必ずや電力業界を再編成しなければならない。


共同通信がこんな記事を配信している(東京新聞より)。


http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011041601000185.html

再生エネが10年に原発を逆転 福島事故で差は拡大へ

2011年4月16日 11時59分


 【ワシントン共同】2010年の世界の発電容量は、風力や太陽光などの再生可能エネルギー原発を初めて逆転したとする世界の原子力産業に関する報告書を、米シンクタンク「ワールドウオッチ研究所」が15日までにまとめた。

 原発は、安全規制が厳しくなったことや建設費用の増加で1980年代後半から伸び悩み、2010年の発電容量は3億7500万キロワット。一方、再生可能エネルギー地球温暖化対策で注目されて急激に増加し、風力と太陽、バイオマス、小規模水力の合計は3億8100万キロワットになり、初めて原発を上回った。

 報告書は、福島第1原発事故の影響で廃炉になる原発が多くなり、新設も大幅には増えず、再生可能エネルギーとの差はさらに開くとみている。

 報告書によると4月1日現在、世界で運転中の原発は30カ国で437基。運転開始から平均で26年が経過し、このうち145基は、2020年までに運転開始から40年を迎える。福島第1原発事故の影響で、40年を超えて運転する原発は限定的になるとみられるという。

 建設中は14カ国で64基。中国などで今後、新たに建設される分を見込んでも、世界の原発の総数は減少するという。

 報告をまとめたマイクル・シュナイダー氏は原子力ルネサンス原発が増えると思っていたら、それは間違い。40年を超える運転を認めても、いずれ数は減ることになる」と指摘している。

 世界の総発電量は、石炭、天然ガス、石油などの火力発電が半分以上を占め、原発は13%程度。


そう、世界的に見ると原発依存度は下がり、再生可能エネルギー依存度がどんどん上がってきているのだ。実は日本も例外ではなく、原発依存度はもう飽和状態に達している。それを無理矢理増設で伸ばそうとしてきたのが近年の自民党及び民主党のエネルギー政策だったが、それも今回の福島第一原発事故で完全に行き詰まった。今後は、「首相による原発トップセールス」なる、もともとは自民党経産省が考え出した馬鹿げた政策など、二度と行うことはできない。


原発とは時代遅れの技術なのである。毎日新聞の記者たちも、取材をして原発について知れば知るほどその確信を強めたからこそ、あの岸井成格主筆を務めていることをものともせず、社論の転換に踏み切ったのだろう。そういう流れになって、ようやく小沢一郎も「原発は過渡的エネルギー」という、過去の、つまり小沢一郎民主党に移ってくる以前の民主党の政策に沿った見解を口にするようになった。


何度も何度も同じことを書くけれども、どの政党が政権を担おうが、日本政府のエネルギー政策は、これまでの原発中心から、今後は再生可能エネルギー推進へと転換せざるを得ない。それしか選択の余地はないのである。