kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「局所的な再臨界」か「自発核分裂」か

「搾取する」を「圧力をかける」、「臨界」を「自発的核分裂」と言い換える権力側。「撤退」を「転進」と言い換えた大本営発表みたいなものだな - kojitakenの日記 についた「はてなブックマーク」より。

BUNTEN 災害, 科学 それは言い換えではなく別の現象。▼検出された生成物の量からどっちなのかの大まかな見当は付く。専門家諸氏のツイート見てれば追える話。 2011/11/04


この件だが、昨日(11月4日)の朝日新聞朝刊に載っていた、

京都大学原子炉実験所の小出裕章助教も、燃料内にあるキュリウムから生成されるキセノンの計算量と、検出量が一致したことをとらえ、自発核分裂の可能性が高いとみる。

というコメントを見て、私自身も「早まった記事を書いてしまったかな」と思った。


ただ、一方で飯田哲也氏のこんなTwitterもある。
http://twitter.com/#!/iidatetsunari/status/131605076321112064

再掲感謝 RT @hirakawah: これだ。3/20の(PDF)。http://bit.ly/sZiKRF RT @risashim: 局所的な再臨界がスパイク的、断続的に起こる可能性というのはごく初期に飯田さん周りの議論で結論が出ていたような。


ここで私が抱く疑問は、「局所的な再臨界がスパイク的、断続的に起こる」ことと「自発的核分裂」の区別が果たしてつくのかということだ。言い換えれば、単発的な核分裂と、ある程度は連鎖的に起きたものの、すぐに連鎖が止まった核分裂の区別がつくのか、という疑問。

私がなぜ「大本営発表」を連想したかというと、ほかならぬ東電自身が11月2日には「臨界」という言葉を使っていたのを3日には「自発的核分裂」と修正したからだった。


飯田氏のPDFを見ると、北村正晴東北大学名誉教授の下記の見解が紹介されている。

圧力容器下部の再臨界が起こった場合には,そのような爆発的事態は起こりえません.(再度臨界になる⇒核的出力が急上昇する⇒反応度フィードバックがかかるがある程度までは出力上昇が続く⇒どこかのレベルで出力がほぼ安定する⇒燃料温度が上昇し燃料溶融が起こる⇒出力と温度がさらに上昇する⇒溶融した燃料の体積膨張が起こり反応度フィードバックがかかる⇒臨界状態が解消し出力が少し低下する⇒また臨界になる)のような形で事象が推移するでしょう.もちろん極めて乱暴な推測にすぎません. しかし,即発臨界や爆発的な事象は起こらないということは言えると思います.圧力容器の中で臨界現象が起こることは,望ましくはないが圧力容器内に燃料が閉じ込められていれば事態の深刻さはチェルノブイリとは比較にならないほど小さいといっていいでしょう.


今回のキセノン検出は、そこまでのレベルにも行っていなかったということなのかもしれないし、仮にそこまで行っていたとしても深刻な事態に至る可能性は極めて低いのだろうとは思う。ただ、「危険だ危険だ、東電福島第一原発が大爆発するぞ」と叫ぶのはもちろん根拠のない煽りには決まっているだろうけれども、「再臨界ではない、自発的核分裂だ」と言われても素直に納得する気にはなれないのである。純粋に単発的なのか、少しは連鎖していて、「臨界→臨界が解消→再臨界」の繰り返しが起きているのかどうかくらいは気になるところだ。

もっとも、こういう疑問に対しても結論は既に出ているのかもしれないけれど。