kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

朝日新聞・高橋真理子記者に「ヘンです」と書かれた鳩山由紀夫

2/1の朝日新聞より。「記者有論」というコラムに高橋真理子編集委員が「鳩山さん ネイチャー論文ヘンです」と題したコラムを書いている。鳩山由紀夫元首相と民主党平智之衆院議員による英科学雑誌『ネイチャー』への寄稿「福島第一原発を国有化せよ」への批判である。

書いた高橋真理子という記者は、朝日新聞の科学部に所属した経歴を持つ編集委員で、東電原発事故では東電寄りのコメントをテレビでしゃべっていたような記憶があるが*1、私との立場の違いは別として、コラムに書かれた指摘自体にはうなずけるものがある。

以下高橋記者のコラムから自由な形式で引用する。鳩山と平の論考は『ネイチャー』の2011年12月15日号の「コメント」欄に掲載された。再臨界と核爆発とメルトダウンの可能性を論じ、東電の情報公開の不十分さを指摘して、情報を得るためには福島第一原発の国有化が不可避だと訴えている。それを、1月に来日したイギリスの科学技術局のデイビッド・コープ局長が「ストレンジ(変わっている)」と評したという。

コープ氏は、起きたのは水素爆発だったのになぜ核爆発を議論するのか理解できないのだという。昨年3月下旬、東電が「塩素38」という放射性物質を検出したと発表した時、再臨界の可能性が論じられたが、専門家の指摘を受けて東電がデータを見直し、測定ミスを認めた。この件は私も覚えている。当時私が思ったのは、東電にも自体をコントロールする余裕はもはや失われていて、データを「捏造」するどころか単に右往左往しているだけなんだなということ。なぜなら当初の「塩素38を検出」という発表は、原発推進派側にとって不利益を与えるものだったからだ。

この件について鳩山・平の論考は「我々は東電のデータを入手して再分析し、確かに最初の報告のレベルで塩素38が存在したと結論づけた」と書いている。しかし、イタいことに根拠は書かれていないのだそうだ。

これに関する高橋記者の論評は痛烈だ。以下引用する。

 主張の是非以前に、根拠を示さず結論だけ書くやり方が科学のルールに反する。
 核爆発が起きていた可能性をしきりに論じているのも不可思議だ。「核爆発」という言葉をどういう意味で使っているのかはっきりしないのだが、普通は核分裂の連鎖反応が原爆のように一気に進むことを指す。それなら、原子炉容器が吹っ飛ぶはずで、外に出る放射性物質の様相も今とは相当違ってくる。
 ネイチャー編集長による巻頭論説は、日本政府が科学アドバイスを受ける仕組みがないことを問題にしている。日本には英国議会科学技術局のような組織もない。それらの必要性を鳩山論文如実に示していると思う。

(2011年2月1日付朝日新聞コラム「記者有論」掲載・高橋真理子編集委員署名記事より)


「科学アドバイス」と言ったって、日本の原子核工学のエラい先生たちはみな「原子力ムラ」の住民なのだから、仕組みがあったってまともには働かないんじゃないかと突っ込みたくなるが、それはそれとして鳩山由紀夫平智之の論考がお粗末きわまりないとはいえそうだ。

思えば私自身も昨年の3月12日、テレビを見てまさしく「核分裂の連鎖反応が爆発的に進んで原子炉容器が吹っ飛ぶ」事態が起きたに違いないと早合点して当ダイアリーで暴走してしまったが、水素爆発だと知って慌てて訂正したものだった。その苦い思い出もよみがえった。

鳩山由紀夫はといえば、東大の計数工学科卒でその後スタンフォード大学の博士課程でオペレーションズ・リサーチ(OR)を専攻したが、むろん原子核工学の専門家ではない。京都大学の物理工学科卒でUCLAの大学院で材料工学を専攻した平智之も同様だろう。

しかし、たとえ畑違いだろうが、工学系の博士様が書いた文章が「科学のルールに反する」と批判されても仕方ないレベルだというのは情けない話である。政治的思惑が先行したのかとも思えるが、そもそも鳩山由紀夫は「地下原発推進議連」にも参加している、まぎれもない「原発推進派」の政治家だ。この男はいったい何を考えているのだろうか。

*1:あの大熊由紀子を思い出させる記者ではある。