kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

今回の衆院選には「B層理論」は当てはまらない

野田の「自滅解散」のツケ+日本をダメにしたB層+フィギュアGP : 日本がアブナイ! に、遅れてきた「B層」論者・適菜収からの引用がある。


適菜収については、今年5月に取り上げた。
自称「哲学者」・適菜収ってバッカじゃなかろか? - kojitakenの日記(2012年5月9日)

適菜収(てきな・おさむ)というバカがいる。1975年生まれの自称「哲学者」で、ニーチェに心酔しているらしい。「保守」の論客として売り出し中だが、先月、2時間で飛ばし読みできる「B層」批判本を出した。

その内容があまりに愚劣なためか、先月に刊行されて以来「はてなダイアリー」でアマゾンまたは楽天にリンクを張ってこの本を紹介した人間は誰もいないようだ。不名誉な「第一号」になるのは嫌だから、当ダイアリーの記事からもリンクは張らない。

適菜は産経系列の「正論」文化人だが、「B層」批判者の常として、小泉純一郎、さらには小泉が推進した新自由主義を強く批判し、小沢一郎菅直人をも痛烈にこき下ろしている。さらには今をときめく橋下徹も容赦なく批判している。この適菜の「橋下批判」を評価する右派の論者もいるようだが、適菜は中曽根康弘については何も書かない。石原慎太郎に対しても同様に何も書かない。

新自由主義に対する批判者を気取りながら中曽根康弘を批判しないのは「もぐり」である。間違いなく適菜には新自由主義を批判する哲学の持ち合わせなど何もない。橋下のポピュリズムを批判しながら石原慎太郎を批判できないのも同じことで、適菜にはポピュリズム批判の哲学の持ち合わせなどないのである。おそらく適菜は中曽根康弘石原慎太郎を結構買っているのではないか。要するに適菜は己の好き嫌いを読者に押しつけようとしているに過ぎない。橋下は、こんな人間に批判されたところで、蚊に刺されたほどの痛痒も感じないだろう。

適菜は梶川ゆきこを槍玉に挙げているが、適菜自身が梶川と同レベルであるとしか私には思えなかった。

適菜のアホのきわめつきは、「食べログミシュランも信用できない」などと悪態をついていることである。「食べログ」や「ミシュラン」の評判につられてヒョイヒョイ食べに出かけたおのれの軽佻浮薄を完全に棚に上げていることには爆笑してしまった。これが「俺は偉い、世間の人間はみんな『B層』だ」といわんばかりの文章を書いている人間のレベルなのだ。


菅直人小沢一郎を応援するブログが、菅や小沢の批判者の言葉を引用していて良いの?と思わなくもないが、それより私がこのエントリを立ち上げるのは、今回の総選挙について「B層理論」を当てはめるのは間違いだと言いたいからだ。

なぜなら、誰も安倍自民党に熱狂なんかしてないからだ。維新人気には「B層」理論が当てはまるかもしれないが。むしろ民主(それから分かれた未来を含む)に対する深い失望が今回の選挙結果になるはずだし、投票率も著しく下がるだろう。

私自身も普段「リベラル・左派系」の世界に属していて、その中で「日本未来の党」も民主党も買わないという独自路線を貫いているが、母集団(「リベラル・左派」全般)も私自身も、一般的な人々の平均的な認識からはかなりかけ離れた考え方をしているといえるだろう。

2005年の小泉郵政改革に熱狂的に期待し、2009年の政権交代に熱い期待を寄せた人々が極端な選挙結果をもたらした、この2つの選挙には「B層理論」が当てはまる。2005年の民意の選択が誤りで、2009年は正しかったなどということはあり得ない。両者は鏡像関係にあるというのが私の意見だ。

それと比較すると、今回はかなり質が違う。2005年に小泉純一郎に熱狂したようには、(ネトウヨや「りふれは」を除いて)誰も安倍晋三に熱狂などしていない。安倍は5年前に有権者の厳しい審判を受けて政権を投げ出した男であり、有権者はみんなそのことをよく覚えている。

今回、50議席弱の獲得が予想されている「日本維新の怪」の人気については、自身も「B層」に違いない適菜収が言うような「B層理論」が当てはまるかもしれない。しかし、惨敗が予想されている民主党日本未来の党の没落に対しては当てはまらない。

有権者の多くは、3年あまり前に期待した民主党(現在の民主党日本未来の党)に対する深い失望を感じているのだ。だからマスコミが報じているような議席予想になる。自民党の支持が2009年の政権交代選挙の頃と比較してもほとんど伸びていないことがそれの何よりの証明だ。

民主党松下政経塾が主導権を握り、自公民連立政権に加わりかねない政治勢力だし、その民主党から分かれた日本未来の党にしても、マニフェストを盾にとって党内抗争を繰り広げたあげくに分裂しただけであって、「脱原発」は議席を得るための方便に過ぎないことを有権者に見抜かれているから、支持が伸びないのだ。

もう何度書いたかしれないが、小沢一郎は1991年の青森県知事選で核燃サイクル推進派の現職候補を「剛腕」をふるって当選させ、2007年には民主党のエネルギー政策を(大畠章宏の進言を容れて)「原発積極推進」に転換した。2011年6月には自公の菅内閣不信任案提出を煽って自らは棄権で逃亡し、同年秋の民主党代表選では原発推進派の海江田万里を担いだ。だが、これらの悪行に関して小沢一郎は反省の言葉など何一つ口にしていない。

また、日本未来の党に加わった亀井静香は地下原発推進議連の顧問だ。さらに、衆院選に立候補こそしていないが、河村たかし石原慎太郎の「太陽の党」と野合しようとして橋下徹に阻まれた。そんな河村の減税日本は地下原発推進議連顧問の亀井静香と野合して、略称「脱原発」(笑)という羊頭狗肉もいいところのインチキ政党を作ったあげくに日本未来の党に合流した。

ここまで有権者を愚弄した悪行を重ねた小沢一郎亀井静香河村たかしらが中核をなす政党に投票する人々に対してこそ「B層理論」が当てはまるのではないかと、嫌味の一つも言いたくなるほどだ。それに、当ダイアリーの昨日のエントリ 衆院選後「日本未来の党」はこんな政党になる! - kojitakenの日記 で見たように、日本未来の党で当選が期待できる「リベラル」ないし「左派」の候補者は社民党から未来に移った阿部知子ただ1人しかいない。当選者の大半は、極右(牧義夫)を含む保守の候補者になると予測される。

社民党もそんな日本未来の党の仲間とみなすと、投票できる政党はもはや共産党しか残っていない。私は共産党に対するアレルギーはないので小選挙区比例区とも同党に投票するが、共産党へのアレルギーがいまだに強い人も多く、そういう人は「投票できる政党がない」として棄権するだろう。誰もそれを責められないと思う。

せめて、日本未来の党小沢一郎亀井静香河村たかしといった政治家が、もう少し責任ある態度で臨んでいたら、日本未来の党に投票しようという気になったかもしれないが、現状ではとてもでないがそんな気になれない。それどころか、私のいる選挙区の日本未来の党の候補者は間違っても当選させたくない人物なので、その点からしても死に票になるとわかっていても共産党に投票するしか選択肢はない。

同じような投票行動を強いられる人々が多数存在し、その結果自民党の圧勝、日本維新の怪の厄侵、民主党日本未来の党の惨敗という選挙結果になっても、それは止むを得ないとしか私には思えないのである。

もう課題は、自民圧勝と維新厄侵を前提として、いかに安倍自民党や石原・橋下日本維新の怪がたくらむ改憲を阻止するかという段階に移っているのではないか。