kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

健全と不健全 - 杉並区議のブログ炎上と小野市のトンデモ条例案

下記の件は昨日(2/27)知った。


http://www.asahi.com/national/update/0227/TKY201302270044.html

「子育て本来家庭で」杉並区議ブログ炎上 待機児童問題


 【斎藤智子】子どもの保育園入園を訴えて母親たちが杉並区に異議を申し立てた問題について、「子育ては本来は家庭で行うべきだ」「手伝って、とお願いするのが待機親のエチケット」などとブログで持論を展開した自民党の田中裕太郎・同区議(37)に対し、区内外から批判の書き込みが殺到している。

 ブログでの発言は21日付。「不況打破に女性力の爆発は必要」とし、仕事と子育ての両立をうたいながらも、異議申し立てをした女性たちを「ならば最初から社会でお宅の子供の面倒を見ろということか」と批判した。さらに「『子育ては本来家庭で行うもの』という基本中の基本を忘れるべきではないと痛感する。一抹の遠慮も忸怩(じくじ)の念もなく、声高に居丈高に、世を恨むかのような態度は、どこかおかしい」「『お願いです。私たちの子育てをどうか手伝ってください』、これが待機親に求められる人としてのマナー、エチケットというものでは」などと述べた。

 これに対し、26日午後9時までにブログに寄せられた意見は300件以上に。「子どもは地域で育てるもの」「頭を下げてきたら助けてやらんでもないというのは議員の態度とは思えない」など大半が批判だ。子育てのため仕事を辞めた女性や小児科医、男性の意見もある。

 田中区議は「ブログで書いた通り。待機児は解消すべき問題で、幼稚園など民間資源を活用しながら効果的な保育園の増設が必要だ。しかし子育ての大基本は家庭、というのがあった上で、社会でどうサポートするかを考えるべきで、そういう倫理がどうも軽んじられている」と話す。

朝日新聞デジタル 2013年2月27日11時24分)


問題となっているブログ記事は下記。
http://blog.tanakayutaro.net/article/62737267.html


ここで杉並区議の田中が書いていることは、60年代に所得倍増を実現させた保守本流池田勇人から現在の保守傍流にして極右の安倍晋三に至るまで、自民党政治に一貫して流れている思想をあからさまな形で書いたものに過ぎない。これこそ自民党の政治思想なのだ。もちろん、私はその思想を「トンデモ」と断定する。現在、安倍内閣の支持率は異様に高いが、上記田中裕太郎のブログ記事が「炎上」(コメント数が4桁に達し、その大部分が批判・非難のコメントである)ことは、日本国民にもまだまともな良識が残っていることを示すと私は考える。「子どもは社会の宝」であることはいまさら言うまでもない。


一方、現在の日本社会の病理が噴出しているとしか思えない件もある。


http://www.asahi.com/national/update/0227/OSK201302270030.html

生活保護の人がパチンコ→市民に通報義務 小野市条例案


 【広川始】生活保護児童扶養手当の受給者がパチンコやギャンブルで浪費しているのを見つけた市民に通報を義務づける条例案を、兵庫県小野市が27日、市議会に提案した。市は「不正受給防止のための、全国的にも例のない取り組み」という。市には「全国に広げるべきだ」「相互監視社会になる」と、賛否の声が寄せられている。

 名称は「市福祉給付制度適正化条例案」。受給者が給付されたお金を「遊技、遊興、賭博などに費消」することを防ぎ、「福祉制度の適正な運用と受給者の自立した生活支援に資すること」を目的に掲げる。

 パチンコや競輪、競馬などによる浪費により「生活の維持、安定向上に支障が生じる状況を常習的に引き起こしている」と認められたり、不正受給の疑いがあったりする場合、市へ情報提供することを「市民の責務」と明記した。保護が必要な人を見つけた場合も、通報を義務づけている。受給者に対しては勤労と節約を求めている。

 国は8月から生活保護について生活扶助の支給額を引き下げる方針。市には、給付額が絞られる中で受給者の自立支援を一層図らなくてはならない、という考えがある。蓬莱(ほうらい)務(つとむ)市長は27日の市議会で「福祉給付制度の信頼確保と受給者の自立した生活を支援することを目的とする。監視強化ではない」と説明した。

朝日新聞デジタル 2013年2月27日16時34分)


昨今の生活保護バッシングは、とうとうこんな「相互監視社会」づくりを公然と目指すトンデモ条例案を生み出したかと暗澹たる思いにさせられる。蓬莱務という市長は、調べてみたら自公と民主が相乗りで推薦した男らしいが、自民党の、子育てに限らず何でもコミュニティに任せて「小さな政府」を維持する政治思想は、必然的に相互監視システムを生み出す。そしてそのシステムを利用して「分断統治」を行うことこそ、自民党政治のエッセンスである。こんなニュースからも、「日本人には『公』の観念がない」という井手英策氏の指摘を改めて思い出す。

生活保護バッシングが広く大衆に受け入れられ、こんなトンデモ条例案に対しても、「全国に広げるべきだ」などと応援する人たちがいるらしいことには、日本人はそこまで堕落したのかと呆れるばかりだ。