kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「地方が都市を搾取する」論者は放射性廃棄物処分場の問題を考えよ

新自由主義者が好む「地方が都市を搾取している」という馬鹿げた風説の反証の一つが人口動向であることはいうまでもない。


http://yamagata-np.jp/news/201303/28/kj_2013032800834.php

2040年推計人口、本県83万6000人に 厚労省発表


 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は27日、2040年には全都道府県の人口が10年と比べ減少するとともに、65歳以上の人口の割合(高齢化率)も全都道府県で3割を超えるとする推計を公表した。おおむね5年に1度公表し、6回目となる都道府県別推計でこうした結果が出るのは初めて。

 本県や北海道、高知など25道県は人口減少率が2割を超え、うち秋田、青森両県は3割を超えるなど人口減と少子高齢化の一層の進行が鮮明になった。

 10年の国勢調査では、05年と比べ38道府県で人口が減少した。推計は、人口減に転じる都道府県が20年までに沖縄を除く全国に拡大、沖縄も25年までに減少に転じるとしている。

 10年の人口を100とした場合、40年の人口を示す指数は、減少率最高の秋田で64.4、次いで青森が67.9、高知70.2。減少率が最低の沖縄は98.3で、東京93.5、滋賀92.8。推計では東日本大震災の影響も一定程度考慮。岩手70.5、宮城84.0、福島73.2となった。40年の日本の人口は、10年から約2千万人減の1億727万6千人と予測する。

 出生率低下などを背景に日本は人口減少局面に入っている。ただ35年の人口を予測した前回推計は、転入が集中する東京と出生率が高い沖縄は人口が増えるとしていた。

 高齢化率が30%を超える都道府県は、10年はゼロだが、40年には全都道府県で超え、最高は秋田の43.8%、最低は沖縄の30.3%。75歳以上の人口も40年には40道府県で20%を超える。

 高齢者人口は大都市圏と沖縄で大幅に増え、65歳以上は埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、滋賀、沖縄で10年の約1.4〜1.7倍に、75歳以上は埼玉と神奈川で約2倍になると見込んだ。

 一方、0〜14歳の人口の割合は、10年は全都道府県で10%台だが、40年には20都道府県で1桁となる。最高は沖縄13.9%、最低は秋田8.3%。

 本県人口は、10年の116万9千人から30年は94万9千人に、35年には89万3千人、さらに40年には83万6千人になると予想された。10年の人口を100とした場合の40年の人口は71.5。

 高齢化率は10年の27.6%から15年は30.9%、25年は35.7%と上昇、40年には39.3%に達する。一方、0〜14歳の人口割合は10年の12.8%から40年は9.9%まで落ち込むとされた。

山形新聞 2013年03月28日 09:18)


2040年の人口を示す指数は、減少率最高の秋田で64.4、次いで青森が67.9、高知70.2とのことだが、直ちに思い出したのが青森の六ヶ所村と高知の東洋町だった。六ヶ所村は核燃サイクル基地としてあまりにも有名だが、東洋町も2007年に高レベル放射性廃棄物最終処分場にされかかったことで知られる。朝日新聞の連載記事「プロメテウスの罠」でも取り上げられたことがあり、記事は書籍化されている。


プロメテウスの罠〈3〉福島原発事故、新たなる真実

プロメテウスの罠〈3〉福島原発事故、新たなる真実


上記の本の最後に「第十八章 地底をねらえ」に、東洋町が高レベル放射性廃棄物の最終処分場にされる難を逃れたいきさつが出てくる。町長が補助金に釣られかかったが、その情報が漏れてテレビで報道され、時の高知県知事・橋本大二郎が反対し、町内が賛否で真っ二つに割れて町長が辞職、やり直し選挙で再出馬したものの反対派候補にダブルスコアで敗れ、話はなくなったのである。第1次安倍内閣時代、まだ「消えた年金」問題の発覚前で、発足直後から下がり続けていた内閣支持率が上昇に転じて、参院選自民党の楽勝と見られていた2007年4月の話である。

東洋町は人口3千余で、東洋町に最終処分場の狙いをつけた謀略のパシリ役をやった大阪の元不動産業者に「びっくりするぐらいさびれとった。町が死んどった」と寸評されている(前掲書248頁)。その後東洋町の人口はさらに減少し、Wikipediaを参照すると、2012年12月1日現在の人口は2,780人となっている。1970年には5,812人いた。最近の動向を記すと、1995年に4,068人、2000年に3,744人、2005年に3,386人、2010年に2,947人となっている。40年でほぼ半減し、直近でも下げ止まっていない。

私は4年前に徳島県から県境を越えて高知県に入ったことがあるが、その最初の町がこの東洋町だ。先日亡くなった坂口良子が昨年プロゴルファーの尾崎健夫と披露宴を挙げたのが徳島県側の県境の町、宍喰だそうだが、そこからトンネルをくぐれば甲浦(かんのうら)の漁港。そして、徳島から伸びる鉄道はこの甲浦で途切れる。あとは室戸岬まで国道55号線しかない。東洋町には、甲浦のほかにもう一つ野根という集落があるが、甲浦から野根までの鉄道は工事が1980年に中断され、そのままになっている。そこから室戸市の佐喜浜という集落まで、本当に国道55号線しかない。おそらく台風の通り道であるためだろう、人家が全くない道が長く続く。

高レベル放射性廃棄物は地下深く埋めるのだから台風は関係ないかもしれないが、問題は地震である。高知県が幾度となく南海地震で大きな被害を受けてきたことは誰でも知っている。当然ながら、東洋町を高レベル放射性廃棄物の最終処分場にする話が持ち上がった時、直ちに地震学者が反対の声を上げた。


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震源断層上に核のごみ捨て場」、「東洋町は処分地に不適」ー東洋町の最終処分場応募問題に地震研究者が警告ー


■東洋町は南海地震震源域の真上


高知県の東洋町(田嶋裕起町長)が、高レベル放射性廃棄物の最終処分場に応募した問題について、地震研究者(石橋克彦神戸大学教授、岡村真高知大学教授)からの警告が相次いでいる。東洋町が、巨大地震の発生が予想されている南海地震震源域の真上に位置しているためである。日本全体が世界的にみても有数の変動帯にあるが、東洋町は「最悪の場所」というのが両氏の一致した見解だ。このような地域を対象に、住民の意思を無視して最終処分地の選定作業が進められようとしている。原子力環境整備機構と経済産業省は、東洋町に対する処分地選定作業を中止し、放射性廃棄物対策を根本的に再検討するべきである。


【「震源断層上に核のごみ捨て場」:石橋克彦神戸大学教授(毎日新聞掲載論文)】
http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/070318hatsugenseki_ishibashi.pdf


【「東洋町は処分地に不適 」:岡村真高知大学教授(高知新聞)】
http://www.kochinews.co.jp/0703/070324evening01.htm#shimen1


■南海地震は100〜150年ごとに発生すること、東南海地震と連動して発生することが歴史的に明らかになっている。(東南海地震東海地震とも関連する)


(過去の南海地震
1707年(宝永地震)は、南海地震東南海地震が同時に発生。
1854年安政地震)は、安政東海地震と32時間の差で発生。
1946年(昭和21年地震)は、東南海地震昭和19年地震)と2年の差で発生。


しかし1946年の地震は規模が小さかったために相当なエネルギーが残っていると考えられ、次の南海地震は100年以内でも発生する可能性が指摘されている。

 
■参考情報


地震学からみた高レベル放射性廃棄物地層処分について(石橋教授のホームページ)】
http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/chisoushobun.html


【南海地震にそなえる(岡村土研:高知大学理学部防災科学コース内研究グループのホームページ)】
http://sc1.cc.kochi-u.ac.jp/~mako-ok/nankai/nankai.html


高知県ホームページ(南海地震に備えて)】
http://www.pref.kochi.jp/~shoubou/sonaetegood/index.html


高知新聞ホームページ(南海地震への備え)】
http://www.kochinews.co.jp/jisin/jisinfr.htm


【中央防災会議(南海地震東南海地震に関する専門調査会)】
http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/nankai/index_nankai.html


原子力資料情報室 2007年3月25日)


誰が考えたって最終処分場に適さないに決まっている東洋町が狙われたのは、「最果ての地」だったからである。そして「最果ての地」にはどこでも、そうなるだけの理由がある。六ヶ所村も、青森県でも特に気候の厳しい地域だ。東洋町が狙われたのは、かつて六ヶ所村が狙われたのと同じ理由による。さらに同じことが東電原発事故が起きた福島の浜通りについてもいえる。


「一人一票運動」とやらに熱中するのも結構だが、こうした「99%が1%を犠牲にする」構造が東電原発事故を招き、東洋町は危うく難を逃れたけれども六ヶ所村は現に犠牲にされており、果てはモンゴルにまで「核のゴミ」を押しつけようとしてきた愚行を、われわれは猛省しなければならない。

「地方が都市を搾取する」などというトンデモ言説を妄信している人間は、己の「民主主義観」の浅薄さを思い知る必要がある。