kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

浦和レッズが「外国人お断り」の差別主義横断幕を撤去せず放置(呆)

李忠成がサッカー・アジアカップ勝戦の延長戦でマークした決勝ゴールはよく覚えている。東日本大震災が起きる1か月半ほど前の、2011年1月29日のことだった。深夜に生中継していたテレビをつけていたが、試合途中に寝てしまった。目が覚めたら延長戦に入っていて、ほどなく李が決勝ゴールを決めたのだった。

その時、李のプロフィールをネット検索で調べて知った。彼の名前はアナウンサーが発音していたように「り・ただなり」と読み、以前は韓国籍だったが、2008年の北京五輪の日本代表チーム入りするために日本国籍を取得したのだった。当時の『中央日報』の記事は、今でもネットで参照することができる。

それから3年あまり。「憲政史上初のネトウヨ総理」安倍晋三内閣支持率が高止まりしている日本で、こんなニュースが報じられてしまった。


「外国人お断り」-浦和レッズのゴール裏に差別主義横断幕 – 連載JP

「外国人お断り」-浦和レッズのゴール裏に差別主義横断幕
2014.03.08 22:22:51 by 清義明


 浦和レッズといえば、Jリーグ屈指の人気を誇るサッカークラブチームである。

 そればかりか、アジアでも人気が高いことでも知られている。中国のCリーグサポーターは日本のクラブチームをリスペクトしているため、その応援スタイルもそのまま取り入れているとこが多い。彼らの中で一番人気があるのは浦和レッズ。まさしくアジアで一番人気があるサッカーチームは浦和レッズなのである。

 その浦和レッズのゴール裏で、先週、移籍して加入したばかりの李忠成(り・ただなり)選手に試合前にブーイングがあったのではないかと話題になった。ご承知の方も多いと思うが、李選手は韓国籍であったが帰化して日本代表にまで上り詰めた選手である。2011年のアジアカップ決勝で優勝を決めたボレーシュートの記憶も新しい。その李選手に対するブーイングに様々な憶測がネット上では飛び交った。だが、あくまでもこのブーイングは噂の域を出るものではなかった。しかし、その噂が冷めやらぬ本日、埼玉スタジアムで行われた浦和レッズサガン鳥栖戦で、ゴール裏のコンコースに心ない横断幕が掲出されていたことがわかった。

“JAPANESE ONLY”と書かれた横断幕。その意味は「外国人お断り」である。

 この横断幕は、ゴール裏のコンコースに出されていたもの。この試合では帰化した李選手を含めて、日本人国籍しか浦和レッズには出場していなかったため、「日本人選手だけが出ている」という意味に理解するむきもあるが、不特定多数の人が出入りするゲートに、”JAPANESE ONLY”と書かれていれば、誰がどう見ても「日本人以外お断り=外国人お断り」という意味になるだろう。

 飲食店などのサービス業がこの”JAPANESE ONLY”の貼り紙をしている場合、通常法務省などの人権機関から注意が来る。過去、小樽市の銭湯がこの貼り紙を出していたために訴訟沙汰になったこともある。この時は、「小樽市には外国人お断りの施設があるので、行かない方がよい」という在日外国人による小樽市非難とボイコットの動きまであったぐらいだ。

 この横断幕について、心ある浦和レッズのサポーター数人が、これはひどい外国人差別なのでやめさせるべきだとクラブチームの運営に申し出たところ、「今後改善する」ということを言いながらも、そのまま試合終了後まで放置したという。そればかりか、その差別横断幕を撮影しようとしたところ、「浦和にとってマイナスになるから」ということで止められたという。

 「試合に少し遅れていったんですが、すぐにあの横断幕の存在はわかりました。209ゲート(埼玉スタジアムで一番コアなサポーターが集まるエリアのひとつ)でしたね。試合中でしたがこの横断幕がひどいということで何人かの人と一緒に運営に抗議しました。ハーフタイムの後後半になってから、その横断幕を出したサポーターグループの代表と思しき人とクラブ側が話し合っていましたが、その後も掲示されたままでした。運営の人は、今後改善するということでしたが。この横断幕は越えてはいけない一線を明らかに越えているもので、しかもJリーグは差別的な横断幕などに対する罰則規定を今年から導入したばかりですから、なんとかして欲しかったんですが。」

(浦和レッズの運営に抗議した人のうちの一人の談 ※写真掲載許可も頂きました)


 Jリーグはスタジアム内の人種差別的な表現に対して厳格に処置することを明言しているが、この横断幕についてどのような対応に出るのか注目が集まるところだ。また、今年になってからは、選手を対象にして人種差別的な行為があった場合の懲罰規定を導入したばかりだ。

 この横断幕を出したサポーターはともかくとして、同じ浦和レッズサポーターから指摘があったにも関わらず、これを放置して、かつ隠ぺいめいたことまでしていた浦和レッズの運営は厳しく非難されるべきだろう。

 すでに、世界のサッカーニュースを取り扱うGoal.comの日本版スタッフである、Dan Orlowitz氏がtwitter上で非難のコメントをあげているばかりか、多くの在日外国人のJリーグサポーターが怒りを表明している。昨今の『アンネの日記』破損事件やコリアンタウンなどで行われている差別主義的デモなどとあわせて、日本の排外主義的な傾向として報じられることもありそうだ。

 また海外の事情を知る日本のサッカーライターやメディア関係者なども、この横断幕を糾弾するコメントを同サイトに寄せている。浦和レッズのサポーターからも、この心ない横断幕に批難が集まっている。

 欧州では悪質な人種・民族差別がいまだに跋扈していることを多くのサッカー選手や関係者が非難しており、それに対する改善の取り組みも進んでいる。これに比べて、世界各地のサッカーサポーターやスタジアムの事情をみるかぎり、日本のJリーグは世界でも屈指の人種や民族差別が持ち込まれないサッカーリーグであると断言できよう。このような愚挙が繰り返されないように、Jリーグには断固たる処置をしてもらいたい。

 浦和レッズが優勝を重ねていた2000年代、某サッカー評論家が、当時の浦和レッズを指して、帰化した選手(当時、日本代表で活躍した闘莉王選手と三都主選手が在籍)とブラジル人選手が固める陣容を茶化して「外人部隊」と呼び、優勝に疑問を呈したことがある。その時は浦和サポーターから、その論評は差別主義的だとして、サッカー評論家に批難が殺到したことがある。

 そのクラブのサポーターが、オリンピックを前にした日本で、”JAPANESE ONLY”などという差別的な横断幕を出すのは大変皮肉なことともいえるだろう。

 今回は、これを問題視した同じ浦和レッズのサポーターのtwitter上での告発から事態が明らかになった。また多くのJリーグファン・サポーター・関係者が自浄作用的に、一部の心ないサポーターによるこの横断幕を問題視している。世界で一番レイシズムの少ないスタジアムをこれからも維持していくことが、Jリーグやクラブチーム、そしてファン・サポーターの責務でなかろうか。

 なお、浦和レッズ所属の槙野智章選手は同じくtwitterで次のようなコメントを出している。

 今日の試合負けた以上にもっと残念な事があった…。 浦和という看板を背負い、袖を通して一生懸命闘い、誇りをもってこのチームで闘う選手に対してこれはない。 こういう事をしているようでは、選手とサポーターが一つになれないし、結果も出ない… pic.twitter.com/Nhasgg4LjZ

槙野智章 (@tonji5) 2014, 3月 8


【追記】

 これを受けて、浦和レッズ公式サイトは、差別的発言・行為があったと認めるコメントを先ほど掲載したが、浦和レッズ運営がこれを結局放置していたことがなかったかのようないわば他人事な内容になっている。

 なお、この追記が書かれた時点で、報知新聞は「日本人以外お断りとの差別的な意味にも取れる可能性があるため、クラブのスタッフが要請して横断幕は外されたという」と報じている。しかし、こちらの取材によると、浦和レッズの運営は「出しているサポーターの気持ちも考えて外さない」「今後は対処する」と、クレームしたサポーターに返答し、試合中に横断幕が外されなかったことも確認している。

 この問題の一番悪質なところは出したサポーターではなく、これを差別的行為に反対すると表明しているクラブが放置して掲示をそのまま続けさせたところにあるというのは、懸命な読者の方々にはおわかりだろうと思う。


浦和レッズというと、私などはついついサポーター(ファン)の過激さから「Jリーグ阪神タイガース」というイメージを持ってしまうが、そういえば阪神ファンの間にも選手生活晩年の金本知憲選手に対するバッシングが目に余ったことがあって、同球団の公式ウェブサイトの掲示板が、金本選手の選手生活最後のシーズンの前年にあたる2011年6月いっぱいをもって閉鎖されてしまうという出来事があった。このシーズンは、東京ヤクルトスワローズが終盤まで優勝争いをしながら、阪神にさんざん苦しめられたあげくに中日に優勝をさらわれたこともあってよく覚えている*1

しかし、金本選手への誹謗中傷に掲示板の停止で応じただけ、阪神タイガースにはまだしも良識があったといえるかもしれない。

浦和レッドダイヤモンズには、その程度の良識すら持ち合わせがないように見える。

*1:ヤクルトがペナントレース終盤で中日に首位を明け渡したのも、京セラドーム大阪で阪神に3連敗した時だった。