kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

川内原発再稼働と伊方原発・上関原発計画の危険性 〜 真価問われる「脱原発」運動

昨日(3/14)は差別横断幕事件をめぐって浦和レッズが受けた「無観客試合」処分について書いたので取り上げる暇がなかったが、九州電力川内原発再稼働の記事が各紙に出ていた。たとえば日経は1面トップ記事(3/14)にしていた。

川内原発を優先審査 規制委、今夏にも再稼働 (写真=共同) :日本経済新聞

川内原発を優先審査 規制委、今夏にも再稼働


 原子力規制委員会は13日、再稼働に向け審査中の10原発のうち、九州電力川内(せんだい)原子力発電所(鹿児島県)の安全審査を優先的に進めることを決めた。規制委は今後、同原発について審査の最終とりまとめに入る。早ければ5月にも審査に合格する可能性がある。昨年7月に刷新された新規制基準の下、川内原発が夏にも再稼働1号となる公算が大きくなった。

 「優先枠」に選ばれたのは川内原発の1、2号機。合計出力178万キロワットで九電の主力発電所のひとつだ。田中俊一規制委員長は同日の規制委の会合で「川内原発1、2号機は基本的には大きな審査項目をクリアしている」と語った。規制委は今後、川内を「特急」扱いとして審査を進める。九電は「審査に対して真摯かつ精力的に対応したい」とのコメントを出した。

 積み残している主な作業は、原発の基準適合状況を詳細に示す「審査書」づくりと、一般からの意見募集や公聴会の実施など。すべての作業を終えるまでには少なくとも2カ月程度かかる見込み。

 規制委による審査合格後は、周辺自治体などの同意を取り付けられるかどうかがカギとなる。川内原発周辺では大きな反対はないとみられている。薩摩川内市の岩切秀雄市長は13日、「大きな山を一つクリアできたと考えている」との談話を発表した。

 東京電力福島第1原発の事故を教訓に原発の規制は刷新された。審査のポイントとなっているのは原発を襲う地震津波への対策だ。新規制基準は各電力会社に対し地震津波のリスクを厳しく見積もるよう求めた。川内原発は事故前に想定していた地震津波想定を見直して大幅に引き上げ、安全対策を強化したことで12日までの審査で主要項目をほぼクリアした。

 新規制基準が昨年7月に導入されて以降、規制委はこれまでに10原発17基の審査申請を受け付けた。ただ10原発同時進行の審査は遅れがち。電力会社や原発地元からは審査の早期終了を求める声が上がっていた。このため規制委は先行する原発の審査を優先的に進めて終わらせ、この審査をモデルケースとして他原発の審査を効率的に済ませる意向を示していた。

 残りの9原発では四国電力伊方原発愛媛県)、九電玄海原発佐賀県)などの審査が進んでいる。川内原発が優先審査を受ける期間は、他原発の審査は多少滞る可能性がある。また、他原発では稼働に難色を示している周辺自治体もあり、審査合格後も再稼働にこぎ着けられない可能性は残る。

 政府は規制委の安全審査を合格した原発から再稼働する方針を示している。原発を「重要なベースロード電源」と位置付ける政権が、自治体や国民の説得にどこまで関与するかも再稼働を左右する焦点となる。川内原発以外で、電力需給が逼迫する夏までに再稼働の見通しが立つか、先行きは不透明だ。

日本経済新聞 2014/3/13 11:03 (2014/3/13 13:57更新)

昨年9月に全原発が運転を停止して以来、次に再稼働する原発として、四国電力伊方原発や同じ九州電力玄海原発とともに候補に挙げられていた鹿児島県の川内原発が再稼働される見通しだ。

5か月前、「『脱原発』実現しつつある日本」(小熊英二=朝日新聞掲載) - kojitakenの日記(2013年10月31日)で、小熊英二朝日新聞への寄稿に

 福島第一原発事故後に、もっとも劇的に脱原発した国はどこか。そう質問すると、多くの人が「ドイツ」と答える。しかしドイツは、政府が脱原発を宣言したが、実際には多くの原発を動かしている。

 では、政府は宣言していないが、実質的に脱原発した国はどこか。いうまでもなく日本である。いま日本では、一基の原発も動いていない。

 ではこの状況を作ったのは誰か。政治家がリーダーシップをとったのか。賢明な官僚が立案したのか。財界やマスコミの誘導か。アメリカの「外圧」か。いずれでもない。答えはただ一つ、「原発反対の民意が強いから」だ。それ以外に何かあるというなら、ぜひ挙げてみてほしい。

朝日新聞 2013年10月31日付「オピニオン面」掲載「あすを探る - 思想・歴史」小熊英二「『脱原発』実現しつつある日本」より)

と書いたことを紹介した。この小熊英二の文章に対して私は、

 いちいちお説ごもっともではあるが、どうしても気になることが一つある。それは、現在の「脱原発」には、浜岡原発停止によって作られた流れが「惰性」で続いている面が多々あるということだ。経産省海江田万里は、浜岡原発スケープゴートにして、他の原発の再稼働をもくろんだが、九電の玄海原発再稼働を阻止された。原発再稼働のバリアが高くなったのはこの時からであり、この点だけは、首相在任中功績が極めて少なかった菅直人の数少ない功績に数え入れて良いだろう。

 しかし、強引に事を進めて悪しき「既成事実」を作ることを得意とする安倍晋三が総理大臣に返り咲いていることを、間違っても甘く見てはならない。2006年に安倍が改悪した「教育基本法」は今もそのままである。現在では「秘密保護法案」の強行突破を図っている安倍だが、今後原発に関しても再稼働をどんどん推進して、それによって作られた「既成事実」を国民は再び黙認してしまうのではないか。その懸念から私はどうしても離れられない。

とコメントした。

脱原発」運動の真価が問われる時が、ついにやってきた。

最低でも、一昨年に関西電力大飯原発3,4号機が再稼働した時並みの「再稼働阻止運動」が起きなければお話にならない。そうでなければ「脱原発」運動はあえなく敗北することになる。川内原発がすんなり再稼働されれば、伊方原発玄海原発大飯原発、高浜原発泊原発などが次々と再稼働されていくことが間違いなく予想されるからである。小熊英二の楽観論と私の悲観論のどちらが正しいかが、今後明らかになる。むろん私としても小熊英二の楽観論が当たっている方が好ましいのだけれども、小熊氏のような楽観的な展望は、私には持ち得ない。

ところで、そうは言っても川内原発のある鹿児島県は、私個人にとってはなじみが薄い。私は、兵庫県と中国・四国をあわせて瀬戸内海地方で人生のもっとも長い時間を過ごしたので、特に気になるというか、どうしても再稼働を阻止したい原発の筆頭は四国電力伊方原発だし、絶対に計画を阻止したい原発の筆頭は中国電力の上関原発である。その名の通り内海である瀬戸内海でひとたび放射能汚染が汚染が起きれば、事故が起きる前の状態に回復することは実質的に不可能だからである。伊方原発(及び上関原発の予定地)は、特に地震の危険性の高い場所に立地している。

山口県在住の id:suterakusoさんから、きまぐれな日々 東日本大震災・東電原発事故から3年、安倍晋三打倒が急務(2014年3月10日)に下記のコメント*1をいただいた。

 ほとんど目が覚めなかったに近いので今更なんですが、深夜の山口の地震って、けっこう大きかったんですね。山口では近年最大級かも。っで、kojitakenさんには言うまでもないことでしょうが、震源伊予灘って、上関原発計画があるところですし、すでに伊方原発があるんですよね。山口では一番地震の危険性が高いところじゃないのかな。まあ、日本の原発なんて、安定地塊かどうかなんかじゃなく、押し付けられるかどうかで場所が決まってるから、そんなの関係ないって話なんでしょうが。

2014.03.14 07:22 suterakuso

このコメントで思い出したのは、2001年に岡山県で感じた芸予地震である。この地震は、2011年に東京で東北地方太平洋沖地震東日本大震災と東電原発事故を引き起こした地震)に遭遇するまで、人生で感じたもっとも大きな地震だった*2震源地からはかなり距離があったので、その時の当該地域の震度は「4」に過ぎなかったが、洋式トイレの便座で、突き上げるようなただならぬ震動を感じたと思ったら、かなり激しい揺れに襲われたことに驚いたものだ。

この地震が起きた1か月半ほどあとに石鎚山に登ったが、「二の鎖」が地震の影響で通行禁止になっており、巻き道を登った*3。山頂から下界を見下ろしながら、そりゃこんな地形だったら地震の危険性が高いのは当たり前だよなあと、六甲山の麓で起きた阪神大震災と重ね合わせながら思ったものだが、残念ながらその当時は伊方原発の危険性に思いを致すことはなかった。

suterakusoさんは、「まあ、日本の原発なんて、安定地塊かどうかなんかじゃなく、押し付けられるかどうかで場所が決まってるから、そんなの関係ないって話なんでしょうが」と書くが、私はそれよりもさらに厳しい見方をしている。というのは、過疎地には過疎地であるだけの理由があって、気候が厳しかったり地震の危険が高かったりする場所が多く、"NIMBY" (Not In My Back Yard) の代名詞ともいえる「原発」なる迷惑設備は、そのような場所ばかりを選んで建てられてきたと考えているからである。幸いにも実現しなかったが、南海地震の被害が懸念される高知県に、過去何度も四国電力原発建設計画が持ち上がったし、徳島との県境にある過疎の町・東洋町に高レベル放射性廃棄物最終処分場が誘致されそうになったこともある。そして不幸にも建設されてしまったのが愛媛県伊方原発というわけだ。この伊方原発は、日本の数ある原発の中でも、もっとも悪質な住民買収などの工作が行われたことでも知られ、当時の伊方町長の嫂が自殺するという痛ましい出来事もあった。

そんな伊方原発を含む原発群の再稼働や、上関原発を含む原発建設計画を、小熊英二の言う「原発反対の強い民意」が果たして阻止できるかどうか。それが「脱原発」運動の課題だ。

*1:http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1338.html#comment17747

*2:1995年の阪神大震災の時には、私は首都圏にいた。

*3:「一の鎖」と「三の鎖」は通行できた。ほぼ垂直とも思える後者はなかなかスリリングだった。