kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

『バスカヴィル家の犬』(コナン・ドイル)、『茂吉晩年』(北杜夫)など

最近読んだ本(2014年4月下旬〜5月中旬)。既に取り上げたものを除く。



ホームズもの4編の長編のうちもっとも名高い。ダートムアの沼地、ヒースの茂る荒れ地が舞台の恐怖譚。この本は、小学生の頃、子ども向けにリライトされた偕成社版で読んだことがあり、犯人の名前や、犯人が死体を確認しに出てきたところにホームズとワトスンが出くわしたくだりなどをぼんやりと覚えていたが、ストーリーの大半は忘れていた。「ヒースの茂る荒れ地」といえば、ドビュッシーの音楽が思い出される。但し、その曲想は『バスカヴィル家の犬』とは似ても似つかない。



完全版の翻訳は初めて読んだ。話は面白かったが、『シャーロック・ホームズの冒険』に収録された「まだらの紐」と同様、あの方法で殺人を犯すことは不可能だろう。



こちらはホームズものの長編第2作。この作品は、昔延原謙訳の新潮文庫で読んだことがあるが、再読すると作者の人種差別意識が気になると同時に、同じ感想は既に中学生時代にも持ったような記憶が思い出された。中学生の時、延原謙訳でホームズ譚の全部を読まなかったのは、もしかしたらこの作品が「躓きの石」になったのかもしれない。あるいは、河出文庫版では来月発売される『シャーロック・ホームズの思い出』が『冒険』より落ちると思ったせいかもしれないが。



北杜夫の「茂吉四部作」の最後。「体調不全」だったという著者はもはや息切れしており、他者の作品や自作からの引用が増えている*1。その中には、たまたま図書館で借りて読んでいた下記の本に収録されている著者自作の短編「死」(1964年発表)からの転用もある。ただ、「死」と「茂吉晩年」の記述には若干異同があり、「死」では松本高校における著者の成績がクラスの42人中26番だったはずだったのが、「茂吉晩年」では29人中14番になっている。おそらく後者が正しく、前者は著者が自分を、実際よりももっと劣等生であったかのように見せかけようと脚色したものであろう。


天井裏の子供たち (新潮文庫 き 4-14)

天井裏の子供たち (新潮文庫 き 4-14)


今年に入って北杜夫の本をかなり読んだが、この人の生涯には、やはり偉大な父・斎藤茂吉の呪縛が一生つきまとった感がある。


他に読んだ本。


原発危機の経済学

原発危機の経済学


*1:とはいえ、この本を書き上げた時点で、北杜夫にはなお13年余の時間が残っていたのだった。