kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

STAP細胞:ネイチャー論文撤回で「存在しなかった」に(毎日)

新聞で見た第一報は昨日(6/30)の日経夕刊だった。

STAP論文、ネイチャーが撤回 週内にも :日本経済新聞

STAP論文、ネイチャーが撤回 週内にも

 英科学誌ネイチャーに掲載された理化学研究所小保方晴子研究ユニットリーダーらによるSTAP細胞の論文が、週内にも撤回される見通しになった。論文を投稿した複数の共同執筆者が29日、明らかにした。理研は論文が撤回されてもSTAP細胞の存在を調べる再現実験は続ける方針だが、生物学の常識を覆すとされた「世紀の大発見」は発表から5カ月で白紙に戻ることになる。

 ネイチャーは近く発刊する雑誌で、小保方氏ら全執…

日本経済新聞 電子版 2014/6/30 2:00)

最近はどこの新聞もそうだが、無料無登録で読めるのは記事の最初の方だけだ。昨日の日経夕刊は手元にないが、過去にネイチャーが論文を撤回した例として、2003年にヤン・ヘンドリック・シェーンの高温超伝導に関する捏造論文を撤回した例を挙げていた。


日経以外では、「STAP細胞」でもっとも尖鋭な論陣を張っているのは毎日新聞だろう。だが、ネイチャーの論文撤回の件は日経のスクープらしく、毎日はそれを後追いしている。しかも、下記の記事には疑問がある。

http://mainichi.jp/select/news/20140701k0000m040019000c.html

STAP細胞:ネイチャー論文撤回で「存在しなかった」に

 理研に残る「不正全体像を説明する社会的責任」

 STAP細胞の論文不正問題で、英科学誌ネイチャーが3日号で関連論文2本を撤回する見通しとなり、「生物学の常識を覆す」として世界の注目を集めた研究成果が白紙に戻ることになった。論文撤回によって、STAP細胞は存在しなかったことになるが、多くの著者が所属する理化学研究所には不正の全体像を明らかにする社会的責任が残る。

 科学の世界では、どんな大発見も論文発表されて初めて成果として認められる。STAP細胞論文が撤回されると、他の研究チームが将来、全く同じ手法で万能細胞を作製した場合、その成果は小保方(おぼかた)晴子・理研研究ユニットリーダーら今回のチームのものではなく、新たに作製したチームのものになる。

 ただし、特許については、論文の撤回で出願が無効になるわけではなく、仮に他のチームが成功した場合には、特許を巡る争いになる可能性もある。

 一方、STAP細胞研究は、理研の運営費交付金など公的研究費を使って進められ、論文発表の際に理研が大々的に広報した。論文が撤回されても理研の責任までは消えない。

 ウェブ上で公開された遺伝子データや残された細胞の解析からは、STAP細胞の正体がES細胞(胚性幹細胞)だった可能性が指摘される。また、不正認定されていない2本目の論文でも、複数の不正行為が疑われている。「そもそもSTAP細胞が一度でも存在したことがあったのかどうか」という社会の疑問に決着をつけることは喫緊の課題だ。

 理研は現在、発生・再生科学総合研究センター(CDB)でSTAP細胞を作製する検証実験を進めている。理研は論文以外の手法も含めた実験計画を立てているが、専門家からは「不正の有無を明確にするため、論文で発表した通りの方法で実施を」との声が上がる。残存試料や生データの解析から論文の作成過程を明らかにする、徹底した「論文検証」も全容解明に欠かせない。【須田桃子、八田浩輔】

毎日新聞 2014年06月30日 18時17分(最終更新 06月30日 23時48分)

私が疑問を持つのは、上記の引用文中赤字ボールドにした部分だ。それ以外については記事に同意する。

5月11日、当ダイアリーに下記の記事を書いた。その一部を引用する。

STAP細胞の「国際特許出願」はどの国にも審査請求されていない。あと5か月で「特許権を取得する資格」が失われる - kojitakenの日記(2014年5月11日)より

小保方さんの「捏造」には悪意があったのだろうか?そして、理研は国民を欺いているのではないかという疑念 : 一研究者・教育者の意見(2014年5月10日)が「はてなブックマーク」で注目されているようだが。

 理研はSTAP論文の撤回は求めても、STAP細胞の特許の撤回は求めていない。そして、残っているサンプルは分析せずに、STAP現象の再検証をしている。これらのことから導かれる合理的な結論は、理研は「「STAP現象は存在するかもしれない」と考えており、検証実験で再現できれば、それを理研の特許とする」ことを意図しているのではないか(職務発明なので、理研も特許出願人となっているはず)。

STAP細胞の特許の撤回は求めていない」というより、「『STAP細胞』の特許出願の審査請求を、どの国の特許庁に対しても行っていない」というのが現実だ。コメント欄で、「技術子女」と名乗る方が指摘する通りである。

特許は国際出願されているだけであり、各国の審査請求には移行していません。現状すぐに取り下げなくても実害はないと考えられます。

なお、特許出願人はハーバード、東京女子医大理研であり、筆頭発明者はヴァカンティ教授です。また、特許の権利はハーバードのみが所有するという情報もあります。

専門外ということもあって特許の請求項を読み込んではいませんが、請求項の中にはSTAP細胞に限らない技術的な事項があるかもしれません。特許出願を取り下げるとSTAP細胞の捏造とは関係ない技術も放棄することになります。仮にいくつかの内容が捏造や取り違えで真実でなかった場合、その請求項のみが審査の過程で却下されるだけで、再現できる請求項は新規性があれば特許取得が可能です。

理研が[検証実験をしてから特許の扱いを検討をする」ということは至極真っ当で、別段悪いことではないと考えています。

私はこの意見に賛同する。(後略)

この記事を書いた時から既に2か月近くが過ぎているので、現時点でいえばヴァカンティが筆頭発明者になり、小保方晴子も名を連ねている国際特許出願は、「あと5か月で『特許権を取得する資格』が失われる」のである。国際特許というのは、特許を成立させたい各国の特許庁に審査請求をしなければならないが、以前調べた時にはどの国にも審査請求していなかったはずだ。今回は調べていないが、「STAP 審査請求」の検索語でググっても、私が書いた上記引用文の記事が筆頭で引っかかる状態だから、相変わらず審査請求していないと思われる。そんなものが、「仮に他のチームが成功した場合には、特許を巡る争いになる可能性もある」はずがないのである。

但し、記事が100%間違いであるとはいえない。というのは、今後10月までの間に利権もとい理研が、「STAP細胞」の「再現実験」に成功するなり「成功する可能性を見出したり」するなどして、特許を審査請求すれば、東北大のMuse細胞の特許があるから直ちに成立とはいかないだろうが、請求項を限定して成立する可能性が高い。特許というのは書類だけで審査されるから、審査請求されて特許庁と出願人の間でしかるべきやりとりを経過すれば、そういう結果になる可能性がきわめて高いのである。

この場合、理研が本当に「再現実験に成功」すれば、手柄は理研のものになるが、あいまいな結果のまま審査請求されて特許は成立したものの、結局理研自体は「STAP細胞の作製」に成功できず、なおかつ後続の研究者が成功させたという特殊な場合に、初めて毎日新聞が書くような事態が起こりうる。だから「100%間違いであるとはいえない」のだが、そんなことになる可能性は万に一つもあるまい。「STAP細胞」には引導が渡されたといっても過言ではない状況なのである。

上記のような瑕疵があるとはいえ、毎日の須田桃子記者は、おそらくは理研内部にコネクションを持っていると思われるが、この件によく食い込んでいると評価されているようだ。ところが、世の中にはそんな須田記者の顔写真を掲載して誹謗しつつ、小保方晴子を崇め奉っている某「小沢信者」(文芸評論家か何か)のブログがある。かと思うと、「STAP細胞」が「世界の三大研究不正に認定されたと、海外の友人から聞いた」と発言し、*1理研CDB解体の提言までした新構造材料技術研究組合理事長の岸輝雄氏を、「小保方晴子を擁護し、安倍晋三下村博文と裏で通じている」とかなんとか陰謀論的な妄想に基づいて誹謗し、日に2万5千件だか3万件だかのアクセス数を稼いだという、やはり「小沢信者」(しかも小沢批判派から転向した)のブログがある。両極端の「トンデモ」記事を、ともに「小沢信者」が書いているのである。呆れたことに、後者のブログのコメント欄には「信者」がウヨウヨ集まってきており、新興宗教さながらの一大奇観を呈している。ことほどさように、「小沢信者」とは百害あって一利なしの存在である。

「小沢信者」の悪口はともかくとして、今朝(7/1)の朝日社会面の記事には呆れた。下記記事が社会面左上に掲載されている。

http://www.asahi.com/articles/ASG6M67DCG6MULBJ017.html

STAP再現実験、小保方氏参加認める意向 理研理事長

 理化学研究所野依良治理事長は19日、STAP細胞の再現実験に小保方晴子ユニットリーダーの参加を認める意向を明らかにした。自民党の調査会に出席後、報道陣に「小保方さんがやらないと決着がつかないんじゃないかと思っている」と述べた。

 理研の懲戒委員会が現在、小保方氏らの処分を検討している。野依理事長は「(小保方氏が)例えば懲戒解雇になれば(再現実験に)参加できない」とも語った。

 また、理研文部科学省はこの日の調査会で、理研の改革の進み具合について、8月ごろに中間報告すると説明した。外部識者でつくる理研の改革委員会は、小保方氏による再現実験の実施を提言している。

朝日新聞デジタル 2014年6月20日00時52分)

そして、その下に付録のように「ネイチャー、論文撤回へ」という見出しの記事が報じられているのである。
http://www.asahi.com/articles/ASG6Z4Q11G6ZULBJ00N.html

英誌ネイチャー、STAP細胞論文を今週中にも撤回へ

 英科学誌ネイチャーが、理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子ユニットリーダー(30)らが同誌に発表したSTAP細胞の論文を今週中にも撤回する見通しであることが、関係者への取材でわかった。小保方氏ら主要著者全員が撤回に同意し、同誌に撤回を申し入れていた。撤回によって、STAP細胞の存在を証明する根拠がなくなることになる。

 STAP細胞論文は主論文と追加論文の2本で構成され、今年1月末にネイチャーに掲載された。発表後、理研は主論文で小保方氏が捏造(ねつぞう)や改ざんをしたと認定し、撤回を勧告した。追加論文でも画像の誤りなどが見つかっている。

 論文の撤回について、小保方氏と米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授が拒んでいたが、その後、同意に転じた。

 STAP細胞論文は、マウスの体の細胞を弱酸性の液体で刺激するだけで、どんな細胞にもなれる万能細胞に変化するというSTAP細胞の作製に成功したと記していた。

 理研は、STAP細胞が存在したのかどうかを調べる検証実験を続けており、この夏に中間報告を発表する予定。

朝日新聞デジタル 2014年6月30日17時58分)

しかも朝日は、1面右の主要記事の見出しを掲げた欄に「STAP細胞、小保方氏参加」として、39面(社会面)に誘導している。つまり、朝日しか読まない読者が見れば、「小保方晴子の再現実験参加」のニュースが「主」で、ネイチャーの論文取り下げが「従」にしか見えないのである。たまたま昨夕見た日経夕刊との落差は激しい。

朝日もまた、「小沢信者」に負けずとも劣らずとまでは言わないが、少なくとも読者をミスリードしているというほかない。