笹井芳樹の自殺に関しては、例によって他殺説その他の憶測を書く者が後を絶たないが、笹井芳樹抜きで安倍政権肝煎りの「再生医療特区」が、それどころか理研CDB自体がやっていけるのかとか、研究不正を行ったとの評価が確定した小保方晴子の後ろ盾になるような奇特な人間が笹井芳樹以外にあり得るのかなどと考れば、他殺説はあまりに荒唐無稽としか言いようがない。
とはいえ、笹井芳樹が小保方晴子に宛てたという「遺書」を最大限に利用しようという不逞の輩がいることは確かだろう。当の小保方晴子自身が「届いていない」という遺書は、笹井芳樹の死亡が確認されてから3時間しか経っていない時点で、既に神戸新聞が報じていた。
http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/201408/0007208762.shtml
「疲れた」小保方氏らに遺書 理研・笹井氏自殺
自殺を図ったとみられる理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長(52)が、小保方晴子氏(30)ら理研関係者に遺書を書いていたことが関係者への取材で分かった。「疲れた」という趣旨や謝罪する内容が書かれていたという。
兵庫県警によると、笹井氏は5日朝、発生・再生科学総合研究センターに隣接する先端医療センター研究棟の4階と5階の間の踊り場で、ひものようなもので首をつった状態で見つかった。
遺書は近くのかばんの中にあった。小保方氏に宛てた遺書には「あなたのせいではない」「STAP細胞を必ず再現してください」という趣旨のことも書かれていたという。
(神戸新聞 2014/8/5 14:05)
昨日(8/7)の同じ神戸新聞には、同紙が遺書の写しを入手しているか、あるいは最低でも現物を見せてもらったとしか思えない記事が掲載されている。
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201408/0007213293.shtml
自分責めず新しい人生を 笹井氏、遺書で小保方氏気遣う
STAP細胞論文の責任著者の一人で、自殺した理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市中央区)の笹井芳樹副センター長(52)が、小保方(おぼかた)晴子研究ユニットリーダー(30)に宛てた遺書の概要が、関係者への取材で分かった。「疲れはてました」と吐露し、謝罪を繰り返す一方で「決してあなたのせいではない」「新しい人生を歩みなおして」と小保方氏を気遣う内容だった。
小保方氏宛ての遺書は、手書きで「小保方さん」と書かれた封筒に入っていた。A4サイズの用紙1枚に横書きで約20行の文章をしたためた。パソコンで作成したとみられる。
「もう限界を超え、精神が疲れはてました」「もう心身とも疲れ、一線を越えてしまいました」と吐露し「一人闘っている小保方さんを置いて」「こんな事態になってしまい、本当に残念です」などという趣旨のわびる表現が目立った。
「私が先立つのは、私の弱さと甘さのせいです。あなたのせいではありません」「自分をそのことで責めないでください」と繰り返すなど、かばう言葉が続いていた。
「絶対、STAPを再現してください」と進行中の検証実験への期待に触れ、最後は「それが済んだら新しい人生を一歩ずつ歩みなおしてください。きっと きっと 笹井芳樹」と結んだ。
自殺現場で見つかった遺書は3通で、うち1通が小保方氏宛て。すべてパソコンで作成したとみられ、いずれも封筒に入っていた。
(神戸新聞 2014/8/7 06:30)
気圧配置に変化あり? - Living, Loving, Thinking, Again(2014年8月8日)によると、「笹井氏の自殺を契機に、世間の空気の気圧配置に微妙な変化が現れているような気がする」とのことだが、笹井芳樹(や笹井氏の家族)への同情より小保方晴子への同情の方が先に立つ「世間の空気」とはまことに度し難い。確かに、ネットでもこの期に及んで「小保方さん、かわいそう」などと書く者が後を絶たない。私などは、実験ノートに「陽性かくにん! よかった」などと書いた「偉大なる博士様」のせいで、本物の大科学者が自らの命を絶ったという事実に愕然としているのだが。
私は、笹井芳樹が小保方晴子の研究不正に気づいた(であろう)にもかかわらず、しかるべき対応をとらなかった時点で、笹井氏は「共同正犯」になったと書いたが、研究不正の発端はあくまで小保方晴子である。笹井芳樹が「STAP細胞」の研究の指導を始めたのは2012年秋であり、NHKスペシャルが報じた「若山研でのキメラマウス作製成功が小保方晴子の研究ノートに記録されていない」件は、それよりも前の2011年11月だった。若山研が山梨大へ移転するタイミングで、小保方晴子が若山研のES細胞を「盗んだ」疑惑(2013年3月)にしても、そんな悪事を笹井芳樹が指示するとは考えられない。
笹井芳樹の「遺書」に心を動かされている人たちには、こうした小保方晴子の主体的な「研究不正」の状況証拠から目をそらすな、と言いたい。