kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「御嶽山噴火:硫黄のにおい『これは来る』写真家の津野さん」(毎日)

http://mainichi.jp/select/news/20140928k0000m040017000c.html

御嶽山噴火:硫黄のにおい「これは来る」写真家の津野さん

 長野県伊那市の写真家、津野祐次さん(68)は噴火の時、山頂直下約200メートルの地点にいた。登山の途中、いつもはしない硫黄のにおいがしたという。頂上付近から突然、煙が立ち上ってきた。噴煙が徐々に高くなり、津野さんが「これは来るぞ」と危険を感じた時、多くの登山者も走って逃げ始めた。

 津野さんは9合目付近まで写真を撮影しながら走って逃げたが、噴煙に巻き込まれた。10センチ前も見えないほど真っ暗になったが、それでも逃げようとして岩につまずいて転んだため、頭を抱えてうずくまった。暗闇の中、「バチーン」という打ち上げ花火のような爆発音が絶えず鳴り響き、バラバラと周辺に石が落ちて来た。さらに稲妻のようなものが走るのも見えた。

 大粒の砂のような火山灰が当たり体中が痛かった。灰は耳の穴にまでも入った。服に口を当て、灰を吸い込まないようにして耐えた。風は強くなったり弱くなったりし、これ以上温度が上がれば焼けるだろうと思うほど熱い時もあった。恐怖を感じ、20分ほどうずくまって耐えた。周囲が少し明るくなると、あたりは一変し、30センチほどの灰で覆われていた。

 9合目の下の山荘に着くと多くの人が避難していた。これ以上大きな噴火が起きれば危険と判断し、さらに下山を続けた。伊那市の事務所で取材に応じた津野さんは、服と体、カメラが火山灰だらけで、硫黄のにおいがした。【丸山博】

毎日新聞 2014年09月27日 18時25分(最終更新 09月28日 01時54分)


 記事に出てくる津野祐次さんとは、10年以上前の昔、中央アルプス木曽山脈)の山の中でお会いしたことがある。もちろん面識はなかったしお名前も存じ上げなかったが、恐るべき速さで山を駆け抜ける津野さんの姿に驚嘆した。お会いした場所は「日本百名山」の空木岳よりも南の山域で、そのあたりは「日本百名山」に含まれる木曽駒ヶ岳空木岳の喧噪とは対照的に、登山客は多くない。だから、著名な山岳写真家と会話する機会にも恵まれたものであろう。下山後、山のガイドブックや雑誌をめくってみて、津野さんが撮った写真や書いた文章を知った次第。

 そのプロフェッショナルをして、「恐怖を感じ、20分ほどうずくまって耐え」ることを余儀なくされた。現在32人の安否が不明というが、残念ながら亡くなられた方も少なからずおられるのではないか。また、現在ではすっかり足腰の衰えた私が仮にその場に居合わせたらどうだったかと想像すると、生還することはできなかったかもしれないと思う。だから他人事とは思えない。直前まで、御嶽山の噴火を予測した人は誰もいなかった。だから、噴火に遭遇した人たちは「運が悪かった」としか言いようがない。

 とはいえ、これが自然の恐ろしさというものだろう。