kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「予知できたマグマ噴火がある」からと言って「全てのマグマ噴火は予知できる」とはいえない

昨日(10/8)は顧客との面談を終えていつもより早く退社し、夕方7時頃から公園のベンチに座って皆既月食を眺めていた。昼間にはかなり曇ってダメかと思ってたら夕方には晴れてきて、外は暑くも寒くもなく快適そのものだった。だがまたしても雲が流れてきて、皆既月食になった初めの頃は、薄雲を通して見えたものの、しばらくすると雲が厚くなって全く見えなくなった。諦めて帰宅したが、夜、報棄て(テレビ朝日報道ステーション』)を見ると都心では皆既の終わり前には再び雲が去ってきれいに見えたらしい。私が見ていたのも、六本木のすぐ近くとまではいえないがそれなりに近い場所だったから、頑張って最後まで粘ってたら見られたはずだが仕方がない。

話は全然変わって、火山噴火の予知に関して、きまぐれな日々 御嶽山噴火をめぐる「江川紹子バッシング」のナンセンス(2014年10月6日)に「飛び入りの凡人」さんからコメントをいただいたので応答したが、よく考えてみると、「きまぐれな日々」の記事の内容に関してではなく、当ダイアリーで繰り返し述べている地震予知に関するコメントだったので、こちらでも紹介して、それに対する私の意見を述べる。

まず「飛び入りの凡人」さんのコメント。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1362.html#comment18293

私は火山噴火予知は有効だと思います。
少なくとも東海地震限定の地震予知よりは使える技術です。

今回、予知ができなかったのは「小さな水蒸気爆発」だったからです。有珠山や三宅島など、予知に成功した噴火は、かなりの規模を持ったマグマ噴火です。
つまりこの程度の水蒸気爆発は、科学の技術の問題ではなく、ちょっとした自然の揺らぎのレベルであり、おそらく今後も予知は期待できません。

なので、大噴火レベルは予知できる公算は大きいと思います。もっともカルデラを作るような巨大噴火が予知できたところで、原発が対処できるとは思えません。

あとkojitakenさんがというより、読売の記事が悪いのですが、地震研究の予算のうち、予知研究に使われているのは一部だけです。大半は基礎研究です。

2014.10.09 00:59 飛び入りの凡人


それに対する私の返答。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1362.html#comment18294

飛び入りの凡人さん

> 今回、予知ができなかったのは「小さな水蒸気爆発」だったからです。有珠山や三宅島など、予知に成功した噴火は、かなりの規模を持ったマグマ噴火です。

有珠山などの「予知に成功した噴火は、かなりの規模を持ったマグマ噴火」であったのはその通りですが、「かなりの規模を持ったマグマ噴火」であれば予知できるかというと、そうではありません。好例が2011年1月の霧島新燃岳の「かなりの規模を持った」マグマ噴火であって、あれは事前に火山性地震が観測されなかったこともあって、予知できませんでした。『kojitakenの日記』にも紹介した藤井敏嗣氏の意見をご参照下さい。

「予知できたマグマ噴火」があったということは、「いかなるマグマ噴火も予知できない」ことの否定にはなりますが、「マグマ噴火であれば予知できる」ことの証明にはならないので、この点に注意が必要です。

なお私は御嶽山噴火については、火山学者・早川由紀夫氏の意見に説得されています。2011年の東電原発事故の被災者非難には納得できませんでしたが。早川氏は、大規模噴火についてこうつぶやいています。

https://twitter.com/HayakawaYukio/status/500057685078056960

100回に1回カルデラ破局噴火に至るくらいの確度の予兆では、そのような避難指示はできない。10回に1回の確度でもできるかどうか疑わしい。低頻度大規模事象は、それがまれであることから、確実な予知が原理的に不可能であるというのが(いまの政治社会状況では)妥当だ。

16:13 - 2014年8月14日


2014.10.09 03:36 古寺多見(kojitaken)


最後に引用した早川由紀夫Twitter御嶽山噴火前のものだが、彼は御嶽山噴火後にも同様のことを繰り返しつぶやいている。

また、文章中の藤井敏嗣氏の意見とは前にも紹介した下記記事である。


上記記事から引用する。

 まず申し上げたいのは、現在の火山噴火予知のレベルでは、数十年に及ぶ原発の運用期間での噴火予知は不可能だということだ。そもそも、そうした長期間での噴火予知の手法自体が確立していない。噴火を予知できるのは、せいぜい数時間から数日というのが現状だ。2011年の霧島新燃岳の噴火のように、地震などの前兆がなかったため、予知すらできないうちに噴火が起きることもしばしばある。この8月3日に発生した口之永良部島の噴火でも、けが人もなかったものの、前兆がほとんどないままに噴火と同時に火砕流が発生した。

東洋経済オンライン 2014年8月10日付記事「『規制委の火山リスク認識には誤りがある』川内原発審査の問題(4)藤井敏嗣・東京大学名誉教授」より)


2011年1月の霧島新燃岳の噴火は、紛れもなく「かなりの規模のマグマ噴火」だった。

また、「飛び入りの凡人」さんが仰る

カルデラを作るような巨大噴火が予知できたところで、原発が対処できるとは思えません。

というのはその通りで、核燃料を取り出して移送するのに現在どれくらいの時間がかかっているかということと、藤井敏嗣氏の言う「(地震などの前兆があった場合でも)噴火を予知できるのは、せいぜい数時間から数日というのが現状だ」という事実を考え合わせると、原発が巨大噴火に対処できないことは明らかだ。