今年最初の記事。今年もよろしくお願いします。
とは言いながら、この年末年始に読んだ本を列挙するだけの素っ気ない記事で今年のウェブ日記を始めたい。
- 作者: トマ・ピケティ,山形浩生,守岡桜,森本正史
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2014/12/06
- メディア: 単行本
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昨年末から読み始めて1月2日に読み終えた。その2日を挟んで、元日付朝日新聞オピニオン面にピケティのインタビュー記事が載り、3日付毎日新聞社説でもピケティ本が取り上げられた。「リベラル」系新聞にピケティは大人気らしい。それなら、両紙の論説委員たちに言いたいが、『21世紀の資本』最後の第16章「公的債務の問題」に従って、財政規律至上主義の社論を改めてもらいたい。
〈階級〉の日本近代史 政治的平等と社会的不平等 (講談社選書メチエ)
- 作者: 坂野潤治
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/11/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「講談社選書メチエ」シリーズは専門書ではなく一般書だととらえて良いだろう。そのせいもあってか、このタイミングで是非とも言っておきたいことを言っておこう、という著者の心意気がうかがわれる。議論はやや粗いながらも、思い切りの良い書きぶりが印象に残る本である。以下、「はじめに」から少し引用する。
「平和と自由」だけを尊重し、「格差」に目を向けない場合の最悪の結果は、一九三七〜一九四五(昭和一二〜二〇)年の「八年戦争」である。言うまでもなく、一九三七年には日中戦争が、四一年には太平洋戦争が勃発し、四五年には見渡す限りの焼け野原と敗戦が待っていた。
しかし、国を挙げての八年間の総力戦の下で、国内における「格差」は驚くべき速さで縮小していったのである。
赤字ボールドにした部分は、ピケティが示したデータによっても裏付けられている。そして、世界大戦によって格差(不平等)が縮小したのは、何も敗戦国・日本に限らず、同じ敗戦国のドイツはもちろん、戦勝国のイギリス、フランスやアメリカでも同じだった。ピケティ本では、特にヨーロッパにおいては、第1次大戦の破壊的な影響がきわめて大きかったことをデータで示してくれる。だから、「希望は、戦争。」という言葉は、歴史にも裏打ちされているといえる。
ところで、坂野本で著者はある「歴史のイフ」を提起している。しかし、ピケティ本が示すデータを考え合わせると、著者の希望的観測にネガティブな評価を与えざるを得ない。これだけでは何を言っているかわからないと思うのでもう少し書くと、日中戦争がなくても、あるいは国家総動員法がなくても、つまり「戦争」抜きで国内の格差の縮小が、1940年代の日本で可能であったかといえば、それは難しかったのではないかと言わざるを得ない。もちろん、あくまでピケティが正しいなら、という前提の上での話だが。
「戦争に頼らない格差の縮小」は、日本のみならず世界的にも、今後の大きな課題なのではないか。その意味で、現在の日本で「格差」に目を向けずに「平和と自由」だけを尊重して、民主党と過激な新自由主義政党である維新の党との共闘に何の疑問も抱かないどころか「歓迎」すらしているように見える一部の「リベラル」に対して、私は大いなる危惧を持つ。リベラルであろうとするなら、「平和と自由と平等」の三者揃い踏みを追求しなければならないはずだと思うのだが。
- 作者: 松本健一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/08/23
- メディア: 文庫
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現代の日本に「北一輝」に対応する「帝国主義的社会民主主義」のカリスマ的イデオローグがいないことは、格差拡大が急速に進む日本が再び「全面戦争」「総力戦」への道を突き進む恐れを幾分でも減じているといえるだろう*1。大阪維新の会の橋下徹も、次世代の党の平沼赳夫も、ともに「フラットタックス」(所得税の定率課税)の公約を選挙に掲げる、ポリティカル・コンパスでいうところの「保守右派」、つまり格差拡大政策を掲げる新自由主義的な政治家でしかない。もちろん安倍晋三も同様である。ただ、北一輝のようなイデオローグを待望するニーズがあることは、北に心酔した岸信介を「自主独立派の政治家」としてたたえた孫崎享の言説などに惑わされて、「リベラル左派」から「保守左派」へと転向した人間が多数現れたことからも明らかであろう。今後民主党と維新の党との連携が進むなら、前記のニーズはさらに大きくなり、現在は中央政界には事実上存在しない、本格的な「保守左派」の政治勢力が台頭する可能性がある。
怒りのブレイクスルー―「青色発光ダイオード」を開発して見えてきたこと (集英社文庫)
- 作者: 中村修二
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/05/20
- メディア: 文庫
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中村修二という人は、技術開発にかけては天才的だと思うけれども、本書の文章を読む限りは、物事の考え方については「俗物」以外の何者でもないと、これは以前から思っていたことではあるが、やはりその通りだったかと再確認した。
- 作者: 福岡伸一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/08/09
- メディア: 単行本
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肩の凝らない科学読み物。図書館で借りて読んだ。