kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

民主党:「反軍演説」復活働きかけへ(毎日)

一昨日(4/23)の毎日新聞記事より。

http://mainichi.jp/select/news/20150424k0000m010052000c.html

民主党:「反軍演説」復活働きかけへ

 民主党長妻昭代表代行は23日の記者会見で、戦前の帝国議会軍国主義に反対した「反軍演説」など議事録から削除され非公開になっている部分の公開に向け、衆院議院運営委員会で各党に働きかける考えを示した。自民党社民党福島瑞穂副党首の「戦争法案」発言の修正を求めた動きを念頭に、「野党が声を上げないと自由の範囲が狭くなる危機感がある」と懸念を表明した。

 衆院記録部によると、反軍で知られた戦前の政治家、斎藤隆夫(1870〜1949年)が帝国議会で40年に日中戦争への疑問を表明した「支那事変処理に関する質問演説」(反軍演説)の削除部分を含む12件が非公開になっている。これらの議事録は95年に公開を検討したが、見送られたという。

毎日新聞 2015年04月23日 20時38分(最終更新 04月23日 21時39分)


なるほど。目のつけどころは悪くない。ただ、斎藤隆夫というと私などはつい坂野潤治による批判を思い出してしまう。ネット検索をかけて、坂野の著書『昭和史の決定的瞬間』ちくま新書,2004=未読)を紹介したブログ記事を見つけたので、以下引用する。なお固有名詞の表記を一部改めた*1

坂野潤治著『昭和史の決定的瞬間』(ちくま新書、2004年)をご紹介いたします② : 古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ(2015年4月17日)より

 斎藤隆夫の有名な「粛軍演説」(1940年の「反軍演説」との区別が必要です)を坂野氏は取り上げています。斎藤隆夫の粛軍演説は、1936年5月の国会で行われました。この年の2月20日に総選挙が行われ、斎藤が所属する民政党が勝利を収めました。斎藤は国民の期待を背に受けながら、2・26事件を起こしながら、それに対する痛切な反省がないどころか、かえって開き直って、国政に容喙しようとしていた軍を痛烈に批判しました。この粛軍演説と反軍演説は戦前の軍部独裁とファシズムに対する抵抗の象徴となっています。

 筆者の坂野氏は、2・26事件が起きた後でも国会で痛烈な軍批判ができたことの重要性に注目しています。1940年の反軍演説の際には、もう軍を批判することはタブーとなっており、斎藤隆夫は国会から除名されてしまいましたが、この時は問題化しませんでした(もちろん軍は面白くなかったことでしょう)。

 斎藤隆夫自身も民政党も、議会政治を守り、自由主義的伝統を守ろうとはしましたが、労働者など都市の貧しい層の生活を改善することについては関心を払いませんでした。民政党は緊縮財政を求め、軍拡に反対したが、それと同時に福祉政策や失業対策にも反対でした。民政党の支持基盤(三菱の資金援助も受けていました)は、都市資本家・経営者でしたから、これは当然のことです。著者の坂野氏は、「斎藤隆夫はヒーローで、軍部が悪者」という見方を排しています。この視点はありませんでした。斎藤隆夫民政党も、現在で言う「リベラル」ではなく、「古典的自由主義者」であり、資本主義と自由市場を信じていたのでしょう。そうした点から、民政党政権下で「金解禁」が実行されたことは当然のことであると言えるでしょう。


坂野潤治は現在の自民党を政友会の流れを汲む政党、民主党民政党の流れを汲む政党と基本的に見立てているが、(原敬を尊敬している)小沢一郎と(鳩山一郎の孫である)鳩山由紀夫は政友会系の政治家であるとしている*2 *3。しかし、上記の引用文を参照すると、現在の民主党の最大の支持基盤は都市資本家・経営者というよりは大企業や官庁の労組であって、都市資本家や経営者は基本的に自民党支持と思われるから、そこらへんの違いはある。とはいえ、大企業や官庁の労組は大企業の正社員や正規雇用の公務員の利益を代表していることもあって、「(中小企業や非正規などの)労働者など都市の貧しい層の生活を改善する」ことに熱心だとは到底思われないから、現在の民主党も戦前の民政党ほどではないかも知れないが関心が薄いとはいえるように思う。

以上、斎藤隆夫や現在の民主党に対する批判を書いたが、それでも斎藤隆夫の「反軍演説」の復活を求めたのは(削除箇所は草柳大造著『斎藤隆夫かく戦えり』で読めるらしいが)良いことだ。私自身も、斎藤の演説の一部が削除されたまま今も復活されていないとは知らなかった。また、毎日新聞記事の末尾にある下記の箇所が目を引いた。

これらの議事録は95年に公開を検討したが、見送られたという。


1995年って一年丸々村山富市首相の自社さ政権だった時期じゃん。村山富市は、菅直人は、そして期待するだけ無駄かもしれないが鳩山由紀夫はいったい何をしていたのか、と思ってしまった。彼らが政権を担当していた時期にやるべきことをやっておかなかった例の一つかもしれない。

最後に、記事についた「はてなブックマーク」のコメントをいくつかピックアップしておく。まず、ネトウヨの醜悪なコメント。

big_song_bird 仮にこの演説が復活したとして、国民の生活にどう影響するのやら。おまエラの党派性やらイデオロギーを、ことさら大きな声で主張するためにやるだけの話しだろw。しかも戦前の話しを蒸し返すとかバカかw。

実は長妻昭は私もあまり評価しない政治家なのだが、今回はこうやってネトウヨを噴き上がらせたことをほめておこうか(笑)。同類の人間による下記コメントは、尻切れトンボでもあり感想を省略する。

Japan369 民主党:「反軍演説」復活働きかけへ 本当に売国党だな。支那や韓国、ロシアなど、日本の国土を不法占拠して、尚またあわよくば奪おうと働きかけるのは日本が戦えないと分かっているからなんで、それへの有効手段は


また、斎藤隆夫の、間違っても「リベラル」とはいえない思想を指摘するコメントもある。

kurokawada 「飽くまでも偽善を排斥して、以て国家競争の真髄を掴まねばならぬ。 国家競争の真髄は何であるか。 曰く生存競争である、優勝劣敗である、適者生存である。 適者即ち強者の生存であります。」  こういう部分もある

*1:「斎藤」が「斉藤」と表記されている箇所が一箇所だけあった。

*2:2010年の『週刊朝日』掲載記事より

*3:小沢一郎鳩山由紀夫ももとは自民党に在籍していた政治家だから、特に不思議なとらえ方ではない。