kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

女性自衛官のブログ記事まで弾圧しようとする自民党議員に呆れ返る

安倍晋三の体質に汚染された自民党言論弾圧体質はここまでひどいのかと驚き呆れた。いや、ちょっとやそっとのことでは驚かなくなっているつもりでいても、想像のつかない悪事を次々と引き起こしているのが安倍晋三以下の今の自民党である。まさに「悪の権化」。どんなに怒っても怒り足りない。

女性自衛官がクマラスワミ氏と昼食に同席できて「光栄なこと」と書いたブログを圧殺する自民党と日テレ。 - Everyone says I love you !(2015年7月9日)より。なお、引用に当たってリンク先のブログに掲載されている画像や動画は省略した。これらについては元記事を参照されたい。

女性自衛官がクマラスワミ氏と昼食に同席できて「光栄なこと」と書いたブログを圧殺する自民党と日テレ。
2015年07月09日 | 従軍慰安婦」=戦時性奴隷

 今朝見て、目が真ん丸になったのが、日本テレビの次のごく短い報道です。

女性自衛官のブログ 自民党が問題視

2015年7月9日 00:40 日本テレビ

 女性自衛官のブログが自民党で問題視されている。

 かつて慰安婦についての報告書を国連・人権委員会に提出したクマラスワミ氏と昼食をともにしたことを、現役の女性自衛官がブログで「光栄なこと」と書いていた。

 クマラスワミ氏の報告書は事実と異なる内容を多く含む事などから、7日の自民党国防部会で、複数の議員が「軽率だ」などと批判した。

 防衛省は「誤解を招いた点について反省する」などの記述をブログに加えるよう調整している。


 この報道を見て、まず一番に驚いたのが、自民党自衛官が書いているブログの内容を批判して、おまけに書き直させようとしていることです。

 これではいつ削除・訂正させられるかわからないので、このブログを調べて、末尾に全文を転載させていただきました。

 次に驚いたのが、日本テレビの報道の仕方です。

 普通は、

「クマラスワミ氏の報告書は事実と異なる内容を多く含むとして」

と、自民党がそう考えているというように報道すると思うのですが、このニュースでは

「クマラスワミ氏の報告書は事実と異なる内容を多く含む事などから」

としており、はっきり、日テレがクマラスワミ報告書が事実と異なる内容を多く含むと判断し、断言してしまっています。

 また、2015年7月7日に自民党の国防部会で防衛省防衛白書に不満が続出して、了承を見送るという異例の事態になった時に、

『出席者の一人は白書が紹介した女性自衛官がネット上で公開している文書が不適切だと問題視した。文書は旧日本軍の従軍慰安婦を「性奴隷」とする国連報告書をまとめたクマラスワミ氏との会談を「光栄」と記している。』

と問題になったと日経が報道しています。

 このブログは調べてみると、今の段階ではすぐにわかりました。

 在ベルギー大使館のHPにあるブログで、NATO事務総長特別代表(女性、平和、安全保障担当)補佐官として出向されている栗田千寿さんのブログ「chizuの部屋」でした。

 彼女の「第1回 NATOにやってきました」という記事によると、栗田さんは

『条約機構(NATO)本部に派遣され、12月1日、ブリュッセルに赴任してきました。ヨーロッパに来たのはこれが3回目。しかも、日本人初のNATO勤務という栄えある機会を頂き、正直言ってとても緊張しています。

今回の派遣は、2014年5月の安倍総理とラスムセン前NATO事務総長の首脳間の合意に基づくものです。

安倍総理は、これまでに「女性の輝く社会の実現」を国内外で強調しており、この中には途上国の女性支援という面と、日本女性の社会での活躍拡大という面が含まれています。

つまり、日NATO協力の進展と、国際的課題である「女性分野」での日本女性による取り組み、という二つのニーズから実現した派遣ということになります。』

ということでNATOに赴任したのだそうです。

 してみると、今回の騒動では、

安倍総理の「女性の輝く社会の実現」という公約のために、国際的課題である女性分野での日本女性による取り組みというニーズから実現した派遣」

というところがキーワードになりますね。

 ところで、クマラスワミ氏とその報告書とはどういうものか、この自衛官、栗田さんのブログ「第3回 NATOへの来訪者」から引用したいと思います。

『さて今回は、NATO事務総長特別代表(女性、平和、安全保障担当)オフィスへの来訪者についてご紹介します。1月のことになりますが、当オフィスにとっては貴重な方々がNATO本部を訪問されました。

 まずは、ラディカ・クマラスワミ氏。彼女は、1996年に女性に対する暴力とその原因及び結果に関する国連の報告書(「クマラスワミ報告」)を担任したことで有名です。その後は、国連事務次長や国連事務総長特別代表(子どもと武力紛争担当)等を務めた人物です。』


 ここに書いてある通り、このクマラスワミ報告書(全文はこちら)は、「従軍慰安婦」を戦時性奴隷と断罪した国際的な最初の文書ということで、非常に有名です。

 クマラスワミ報告とは、国連人権委員会が第50会期における1994年3月4日の決議(1994/45)に基づき、スリランカ出身のラディカ・クマラスワミを特別報告者に任命し、毎年同委員会へその調査結果を提出させた女性に対する暴力とその原因及び結果に関する報告書です。

 この報告書については、1996年4月国連人権委員会で「作業を歓迎し、内容に留意する」という決議が行われており、その後も、国連人権委員会は調査したうえで、この「従軍慰安婦」=戦時性奴隷制度について、日本政府が対処するように求めています。


 ですから、結論から言うと、自民党はそんな報告書を書いた方と昼食を共にし、そのことを「光栄」と書くとは何事かと怒っているわけです。

 安倍政権の歴史修正主義(歴史的事実を都合よく歪曲する)的な体質が、実によく現われた事件だと思います。

 さらに、これも先回りして言うと、自民党日本テレビがクマラスワミ報告書について「事実と異なる内容を多く含む」と書いているのは、先ごろ、朝日新聞誤報であったとして謝罪した吉田清治氏の「慰安婦を自ら強制連行した」という証言が、事実認定のための証拠の一つになっていることを指しています。

 しかし、もちろん、末尾のブログ記事にあるように、クマラスワミ報告書の中で吉田証言は数多い証拠のうちの一つとして取り上げられたものに過ぎず、吉田証言が間違いであったことで同報告書の価値が損なわれたというような評価は、国際的には全くされていません。

 ところが、日本政府は朝日新聞が吉田証言について誤報と認めたことから、2014年10月14日、佐藤地女性人権人道担当大使(世界遺産委員会で明治の産業革命遺産を世界遺産に登録するよう尽力した人ですね)に命じて、報告書の訂正を求めたことを、16日に菅官房長官が認めています。

 日本政府も18年も前に認めた文書を今になって訂正しろと、報告者個人に申し入れに行くなんて非常識極まりない行為ですから、もちろん、クマラスワミ氏はこれに応じませんでした。

 というわけで、「慰安婦」は戦時性奴隷だとする国際世論に反抗したい安倍自民党としては、国際社会でその認識を定着させる先駆けとなったクマラスワミ氏と自衛官が会って、自衛官が光栄だと感激するだなんてことは許さん!というわけです。

 だからって、大使館のHPの中とはいえ個人のブログに、防衛省を通じて「誤解を招いた点について反省する」と書けと言わせるなんて、国際的には恥の上塗りもいいところです。

 ちなみに、栗田さんのブログの該当箇所を読むと、非常に謙虚に喜びを綴っており、普通の人から見れば好感が持てる書きぶりだと思います。

『今年2015年は、国連安保理決議1325号「女性、平和、安全保障」(2000年)から15周年の節目に当たり、国連は1325号の履行状況に係る総括報告を予定しています。

 彼女は、この報告の筆頭著者(Lead author)として今年秋の国連での発表に備え、成果収集等のため関係機関を訪問しているのです。NATO本部にはこのたび1月に訪問し、アフガニスタンジェンダーアドバイザー等を経験した軍人等との懇談に加え、NATO加盟各国やパートナー国等からの参加を得て、1325号の履行状況等について意見交換をしました。

 私は、光栄なことにNATO特別代表とともにクマラスワミ氏と昼食に同席する機会を頂きました。

 スタッフレベルの私にとって昼食への参加は特例だったので、恐縮しつつではありましたが、もてなしの気持ちだけでもお伝えしたいとテーブルに星や季節の花の折り紙を置いたところ、ちゃんと日本の物だと気づいて下さいました。

 そして、

「自分もアジア出身(スリランカ出身)だから、NATOで日本人が勤務していることに親近感を持った。日本にはジェンダー分野で将来アジアを引っ張る立場を期待している」

との言葉を頂きました。

 女性の処遇には依然厳しい環境の南アジア出身で、またアフリカを始め紛争影響国の現場を数多く見てきたはずの彼女は、とても穏やかで徳が感じられる方でした。

 NATO本部の訪問はわずか半日でしたが、NATOの取組みと成果についてのインプットを得られたようです。発出予定の総括レポートでは、NATOの取組みだけでなく幅広い成果に触れられることを期待しています。』


 そもそも、栗田さんを安倍首相が肝煎りでNATOに派遣したのは、最初に見たように

安倍総理の「女性の輝く社会の実現」という公約のために、国際的課題である女性分野での日本女性による取り組みというニーズから実現した

ものです。

 そんな栗田さんが

国連安保理決議1325号「女性、平和、安全保障」の履行状況の報告書

の筆頭筆者であるクマラスワミ氏と会食するのは、日本の「国益」に資することであり、

NATO特別代表とともにクマラスワミ氏と昼食に同席する機会」を「特例」

で与えられたことを「光栄なこと」と表現するのは当たり前です。

 また、クマラスワミ氏について、

「女性の処遇には依然厳しい環境の南アジア出身で、またアフリカを始め紛争影響国の現場を数多く見てきたはずの彼女は、とても穏やかで徳が感じられる」

と表現できる栗田さんという女性スタッフが日本にいたことは、きっと、有形無形に日本の良さを海外にアピールすることに役立ったでしょう。

 だからこそ、クマラスワミ氏は栗田さんに

「自分もアジア出身(スリランカ出身)だから、NATOで日本人が勤務していることに親近感を持った。日本にはジェンダー分野で将来アジアを引っ張る立場を期待している」

と言ってくれたわけです。

 それに対して、クマラスワミ氏と会食できたのは光栄だと書いたのはけしからん、とばかりに、ブログを書きなおせと日本政府が言っていることが表に出たら、というか今回完全に表に出ましたが、どれだけ日本の国際的信用を落とすか、安倍内閣にはわからないのでしょうか。 

 安倍政権は、このような言論統制は絶対にやめるべきです。

 また、自民党と全く同じ認識を示した日本テレビも、報道機関としてあまりにも情けないと言わなければなりません。


追記

 栗田さんが3月に書いたこのブログを4か月も経った今頃になって自民党が問題にして、日本テレビが報道したのは、上の(引用者註:引用元の記事には右記極右月刊誌の表紙の画像が掲載されている)極右雑誌「WiLL」2015年8月号に柿谷勲夫元陸将補が、

自衛隊二佐に問う 『クマラスワミ』との昼食は『光栄』ですか」

と題して、次のような文章を書いたからです。

 すなわち、柿谷元陸将補は、自衛隊OBなどで構成される隊友会が発行する新聞「隊友」(4月15日付)に、NATOに事務総長特別代表補佐官として出向中の栗田さんが寄稿の記事の中で、

過日、NATO本部を訪問したラディカ・クマラスワミ氏と昼食をともにしたことを「光栄」と書いている

ことと、当該記事を掲載した「隊友」の編集者及び理事長を批判したのです。

 この8月号って、安倍首相がマスコミに呼んでもらえなくて、思うままに語れるのは、ニコニコ動画とこの雑誌しかない!と、戦争法案を「私が丁寧にご説明します」という記事を寄稿した号です。

 つくづく、こっぱずかしい安倍政権。


幸いなことに、栗田千寿さんのブログ記事は、この記事を書いた時点でも削除されておらず閲覧できる。

栗田千寿さん及び在ベルギー日本国大使館には、自民党自衛隊や極右雑誌等の許し難い無法者の卑劣な言いがかりともいうべき言論弾圧に屈することなく、堂々とブログ記事を公開し続けられることを強く願うものである。

それにしても、自民党の政治家っていったい何をやっているんだろうか。

政治や法学や経済学の勉強は何一つやらず、長谷部恭男がいかなる考え方の持ち主であるかを調べようとはしないくせに、極右雑誌のご注進にはすぐに飛びつく。

柿谷勲夫なる自衛隊OBにも呆れ返るばかりだ。

いまや、「ネトウヨ」的ステレオタイプ安倍晋三以下の自民党の面々や自衛官及びそのOBにまで広く蔓延しているようだ。現代日本におけるもっとも程度の低い悪質な連中が、自民党自衛隊にウヨウヨしており、こともあろうに彼らが日本の今後を大きく左右しようとしている。そういうことだ。『WILL』のようなゴロツキ極右雑誌のみならず、日テレや日経新聞といったマスメディアも、厚顔無恥にも彼らに協力している。

この国の前途には、限りなく暗い展望しか持ち得ない。