長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』(ちくま新書,2004)の「あとがき」より。
- 作者: 長谷部恭男
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2004/04/07
- メディア: 新書
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本書を手にとって購入しようかどうか迷っている方々のなかには、まず「あとがき」を読んで品定めし、定価や読了に要しそうな時間等のコストも勘案したうえで結論を出そうという適切この上ない判断力の持ち主もおられよう。ここでは、筆者としての私心をかなぐり捨てて、純粋に客観的な立場から賢いあなたの判断材料を提供するつもりである。
第一に、「憲法と平和」とくれば、憲法に反する自衛力の保持を断固糾弾し、その一日も早い完全廃棄と理想の平和国家建設を目指すべきだという剛毅にして高邁なるお考えの方もおられようが、そういう方には本書は全く向いていない。
第二に、「憲法と平和」とくれば、充分な自衛力の保持や対米協力の促進にとって邪魔になる憲法九条はさっさと「改正」して、一日も早くアメリカやイギリスのように世界各地で大立ち回りを演じることのできる「普通の国」になるべきだとのお考えの、自分自身が立ち回るかどうかはともかく精神的にはたいへん勇猛果敢な方もおられようが、そういう方にも本書は全く向いていない。
(長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』(ちくま新書,2004)203頁)
この文章を読んだうえで改めて船田元のコメントを読むと、まことに味わい深いものがある。
http://www.asahi.com/articles/ASH6L7SYLH6LUTFK020.html
違憲指摘の学者の人選「正直ミスだった」自民・船田氏
■船田元・自民党憲法改正推進本部長(自民党推薦の長谷部恭男教授が衆院憲法審査会で安全保障関連法案を憲法違反と指摘したことについて)あまり触れて頂きたくないテーマですが、立憲主義という大きなテーマを議論しようとした。長谷部教授は、権威者で、ふさわしいと思って議論をはじめた。ストレートに(違憲か否か質問が)入り、めんくらった。(以前)特定秘密保護法で(自民党の)参考人として来られたとき、ご理解のある発言だったので、少し安心して選んだ。正直、ミスだった。
(「安倍おろしか」との問いに)とんでもない。最初に人選した方が具合が悪く、二番手になった。急きょ決めた。これ以上、お聞きにはならないでください。
しっかりした理論や考え方を持つことが、政府・与党に求められている。そこをどう乗り越えていくのか、いま、やろうとしている。しばらく憲法審査会は、お休みをする予定だ。(休めという党内の)空気は感じている。(BS日テレの番組で)
(朝日新聞デジタル 2015年6月19日00時05分)
長谷部恭男を推薦したのは自民党の「反安倍派」による罠ではないかとの憶測も一部にあったが、そうではなく、船田元は何も考えていなかっただけらしい。
長谷部恭男のスタンスなどちょっと調べればすぐわかるのに、そんなことさえできないのが自民党の「世襲貴族」の議員である。
船田元といえば、NHKの元アナウンサーと「政界失楽園」を演じた、ダメなボンボン政治家というイメージしかない。
さらに、こいつの祖父である故船田中は、昔からのプロ野球のアンチ読売ファンには忘れられない「江川事件」でも暗躍した極悪人だった。あの「空白の一日」と称したデタラメな論理に基づく協約破りは、砂川事件の最高裁判決を論拠とする極右政治家・高村正彦のトンデモ憲法解釈による憲法の骨抜きと軌を一にするものだ。
あの祖父にしてこの孫あり。岸信介と安倍晋三の関係と同じである。ひところ「政界失楽園」に明け暮れていた船田元は、政治の勉強など何もしていない怠け者であるに違いない。
それにしてもどこだろう、こんな馬鹿を代表に選んだ選挙区って。そうかあそこか。北関東は読売ファンも多いと聞くし、民度も低そうだよな。