2月の国会で安倍晋三は民主党の右派議員にして過去の人・小沢一郎やゴロツキ政治評論家・鈴木哲夫のお気に入りである玉木雄一郎の質問中に「日教組! 日教組!」と野次を飛ばしたが、今国会では同じ民主党の辻元清美に「早く質問しろよ」と野次を飛ばした。
これらについて、ネットの「リベラル」からは「傲慢」との批判の声が挙がっており、実際その通りなのだが、安倍晋三は2009〜12年の民主党政権時代に、東日本大震災・東電原発事故への対応そっちのけの菅内閣不信任案提出騒ぎ(2011年6月)を頂点、もとい谷底とする小沢派と反小沢派の権力抗争の醜態を繰り広げた民主党に対する国民の不信感につけ込んでいるのである。単に安倍の野次に「ネトウヨ」が熱狂するのみならず、一般国民の間にも、民主党の議員はある程度懲らしめてやった方が良いという空気がある。だから、ネットの「リベラル」が発する「安倍=傲慢」の批判に人々は心動かされないのだ。玉木や辻元に対する野次は、明らかに安倍晋三に非があるのだが、安倍晋三は自らに非があることを十分承知していながら、国民の民主党に対するネガティブな感情につけ込んでいるといえる。こんな安倍を「傲慢」と批判する「リベラル」のブロガーが、その一方で北朝鮮による拉致被害者とその家族に対する安倍の言動を例に引いて、「本当は良い人」などと安倍晋三を評するのだから、人を見る目がないというか甘ちゃんの度が過ぎるというか。私などは安倍晋三そのものにも増して、「リベラル」までもが安倍を甘やかす風潮にひどく腹が立つ。
しかし、いずれも保守系の与野党が推薦した3人の学者が揃って「違憲」との判断を示す安保法案を、安倍晋三のもくろみ通り与党と次世代の党による単独採決で可決成立させてしまうのをこのまま許してしまうようであれば、それは日本が世界のいわゆる「先進国」中でも、飛び抜けて「民度の低い」国であることを証明する以外のなにものでもないだろう。昨日(6/4)の夕刊では取り上げなかった朝日新聞も社説で批判した。その社説は正論ではあるが、1面左上に掲載されたのはなんとも締まりのない「客観報道スタイル」の間の抜けた記事だった。
http://www.asahi.com/articles/ASH645JDYH64UTFK00K.html
渡辺哲哉
衆院憲法審査会で4日、自民党など各党の推薦で参考人招致された憲法学者3人が、集団的自衛権を行使可能にする新たな安全保障関連法案について、いずれも「憲法違反」との見解を示した。国会の場で法案の根幹に疑問が突きつけられたことで、政府・与党からは、今国会中の成立をめざす法案審議に影響を及ぼしかねないと、懸念する声が上がっている。参考人質疑に出席したのは、自民推薦の長谷部恭男・早大教授、民主党推薦の小林節・慶大名誉教授、維新の党推薦の笹田栄司・早大教授の3人。
憲法改正に慎重な立場の長谷部氏は、集団的自衛権の行使を認める安保関連法案について「憲法違反だ」とし、「個別的自衛権のみ許されるという(9条の)論理で、なぜ集団的自衛権が許されるのか」と批判。9条改正が持論の小林氏も「憲法9条2項で、海外で軍事活動する法的資格を与えられていない。仲間の国を助けるために海外に戦争に行くのは9条違反だ」との見解を示した。
(朝日新聞デジタル 2015年6月5日01時42分)
私が特に苛立つのは、赤字ボールドに示した箇所の表現である。これは朝日に限らずマスコミの報道で顕著に見られる。いくら社説で正論を書いても、いまどき新聞の社説を読む人などほとんどいない。1面に掲載されるのがこんな間の抜けた記事では困る。
また、昨夜も書いたが、青字ボールドに示した事実も「リベラル」の民主党支持系のブロガーには直視してほしい。衆院憲法委員会では、もともと別の議題が議論されるはずだったとか、自民党はもっと自党寄りの学者を推薦する予定だったが断られたなどの事情はあるようだが、自民・公明・次世代(!)の3党が、一昨年に特定秘密保護法案に賛成したとはいえ基本的に「憲法改正に慎重な立場」の学者を推薦したのに対し、民主党は、一昨年来の立憲主義に関する主張で「リベラル」からも一定の評価を得たとはいえ基本的に「9条改正が持論の」学者を推薦したのである。
憲法記念日に行われた護憲派の集会で、長妻昭が志位和夫の手をつなぐのを拒否した一件といいこの件といい、民主党の正体が透けて見える行いといえよう。民主党は保守派の人々から拒絶反応を示される一方でこんな行いをするからリベラル派からも支持を得られない。党勢が衰退の一途をたどるのも当然である。だから安倍晋三につけ込まれて「日教組!」「早く質問しろよ」などの野次を飛ばされる。
だが、保守系の5政党が推薦した3人の学者が揃って「違憲」と判断した法案の強行採決・可決成立を許すのなら、安倍晋三につけ込まれるのは何も民主党だけではない。日本国民すべてである。それは、今後の日本にとってとてつもなく大きな禍根となる。
この事実を日本国民は直視しなければならない。