kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

【大阪人の不安感】お維ですべて解消か?(大阪日日新聞「浅野秀弥の未来創案」)

「きまぐれな日々」にいただいた鍵コメより。大阪日日新聞という、昔は大阪を代表する夕刊紙の一つだったけれども、2000年に鳥取日本海新聞に買収されて朝刊紙に生まれ変わった新聞に掲載された浅野秀弥という人のコラムの紹介。

https://www.nnn.co.jp/dainichi/rensai/lookingforward/160804/20160804056.html

【大阪人の不安感】お維ですべて解消か?

今回の参院選まで、新党はネコの目のように離合集散して浮かんでは消えたが、お維はこれらのにわか新党と明らかに一線を画している。それは、俗に言われるブーム的な追い風に乗って国政の議席を一時的に占めるだけでなく、特に大阪では府市町村の自治体首長から地方議員まで足腰をじっくり固めている点だ。

 自民や民進など既存政党に所属していた地方議員が、ステップアップしようとして党幹部に相手にされなかった際にお維の人気に目を付け転身してくるケースも目に付く。

 自民党は陰では自分党と言われ、1人1党の気質が古くからある。国会議員を頂点に府議市議らのピラミッド型利権組織形成も巧みだ。元々自民党出身者が多く中枢を占めるお維は、実は最も古い組織構築を確実に進めている。

 大阪でのお維は、自公政府与党両党の補完勢力には留まらない。「ウソも100回言い続けると、本当になる」ということわざがあるが、大阪の有権者は「橋下・松井両氏なら、自公与党や前政権の流れをくむ民進党ではできなかった真の行財政改革をお維ならきっとやってくれる」と信じて1票を投じている。「ひさしを貸して母屋取られる」というたとえもある。既存政党は新党ブームとお維を同等に甘く見てはならない。

 有権者は自己のさまざまな期待感を新党に投影して投票行動に結び付ける。そしてそれが裏切られて失望し、また元の既存政党に仕方なく回帰する。しかしお維をいろいろ分析してみると、その手法への理解が次第に深まり、組織基盤も関西に限ってだが、確実に浸透している。

 実際には魔法のようにたちどころに何もかも変えてしまう“幸せの青い鳥”などどこにもいない。民主主義は時間と手間が掛かり、一朝一夕で改革はできず、息の長い取り組みが必要だ。

 かつて大大阪と呼ばれた商都が、東京から水をあけられて久しい。大阪人のいらだちと焦りは頂点に達している。そこにお維の台頭するスキが生まれる。覆水盆に返らずで、高度経済成長日本や大阪万博時代には戻ることはない現実を直視すべきだ。

 あさの・ひでや(フリーマーケット=FM=社社長、関西学生発イノベーション創出協議会=KSIA=理事長)1954年大阪市生まれ。わが国のFM創始者で日本FM協会理事長。関西経済同友会幹事。数々の博覧会等イベントプロデュースを手掛ける。


大阪日日新聞 2016年8月4日)

現在では「日本最悪の極右都市」と(大阪生まれの兵庫県育ちである)私が決めつける大阪だが、かつては「反骨精神」がウリの都市だった。昔は京都、明治維新以降は東京に対して強いライバル意識を持つ都市でもある。

しかしながら、その「反骨精神」はすっかり「お維」に回収されてしまった。お維はもう大阪や兵庫県東南部(阪神間や神戸市)に根を下ろしている(これに対し、京都はさすがは古都というべきか、お維への拒絶反応はなかなか強烈だ。京都人の大阪への反感は神戸人のそれとは比較にならないほど強いことを昔から感じてはいたが)。

以下、コラムの主旨から若干離れた雑感を書く。

あの利にさとい田中康夫が先の参院選の東京選挙区にお維から立候補したのは、上記のようにお維が大阪・兵庫に根を下ろしていることを看て取ったからであろう。結局田中は落選したが、それとて田中の票が「支持層のかぶる」三宅洋平の票に食われたからに過ぎない。もし三宅が立候補していなければ、民進党小川敏夫ではなく田中康夫が当選していたに違いない。

そして、芦屋出身の小池百合子こそ、まさしく「お維」的な体質を持つスターだ。芦屋は西宮とともに旧兵庫2区であり、かつてはこの選挙区からは日本社会党堀昌雄土井たか子という大物2人を送り出していた。リベラルの牙城であり、朝日新聞の占有率も極めて高かった(今では読売に相当程度侵食されているのかもしれないが)。この地域では、読売新聞の専売店が「甲子園球場で行われる阪神対××の『伝統の一戦』のチケット」を無料で配りながら拡販に務めていた(かつては春先や秋口などの甲子園球場のナイターは、たとえ「伝統の一戦」であっても札止めになることは滅多になかった)。言うまでもなく甲子園球場もこの選挙区内にある。阪神ファンの占有率は、実はこの選挙区は東隣の尼崎ほど高くはなく、憎ったらしい読売ファンが少なくないのだが、小池百合子阪神ファンであり、在京の財界人が作るタイガース後援会の飲み会か何かに絡んで「公私混同」をやらかしているとのもっぱらの噂だ。

芦屋市や西宮市の一部(苦楽園など)は、東京でいえば菅直人の選挙区である武蔵野市のようなところだといえば、東京の方にも納得していただけるかもしれない。兵庫県の中でもそのような地域に「お維」は強く根づいているのではないかと私は推測するし、初当選以来2005年の郵政総選挙で東京選挙区に落下傘候補の刺客として舞い降りるまではそうした「阪神間『リベラル』」につけ込んで当選を重ねてきた小池百合子が、「中央線沿線『リベラル』」を初めとする東京の「山の手『リベラル』」の心を鷲掴みにしたのが今回の都知事選だったように思う。小池百合子とは、自らの極右的かつ新自由主義的スタンスを隠そうともしない一方で、阪神間や東京山の手の「リベラル」へのアピール度も極めて高いという悪質きわまりない政治家なのである。

なお、大阪日日新聞にコラムを持つ浅野秀弥氏という方を私は知らなかったが、経歴から判断して明らかな保守と思われるにもかかわらず、自民党もお維も支持しないという立場の人のようだ。こういう人もまだ大阪にいるのかとは思うが、絶滅危惧種なんだろうなとも想像する。