kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

早期の解散総選挙はない。安倍晋三は「小池新党」を「育て」にかかる

今年、2017年だが、夏の都議選以前には衆院選が行われない可能性が高いように思う。

その場合、当面の政局床屋ならぬネット談義の焦点は小池百合子の動きになるのだろうが、いうまでもなく小池百合子は「東の橋下徹」だ。東京育ちの橋下が新自由主義陣営の「西の雄」、生まれも育ちも関西(阪神間)の小池が「東の雌」といえるだろう。なお、「西の雄」は「にしのゆう」ではなく「にしのおす」と読むことはいうまでもない。

昨年暮れに、都議会の「小公民」の動きに「ワクワク」するとかなんとか書いていたブログが、この日記でも引用した、「小沢信者」系ながら小池の台頭に警戒するブログからの警告的トラックバックを貰って目覚めつつあるのかどうかはわからないが、今年に入って一転して「小泉、小池、トランプの劇場型政治ポピュリズムよりも政治と中身を国民にアピールしないと」と題した記事*1を公開したのを見て、民進党の経済政策を批判する野尻民夫氏の記事(本記事の末尾にリンクを再掲)を載せたリテラともども、2017年に入ってもしかしたら変化の兆しが現れたかなとも思う。

公明党は、維新(地域政党及び国政政党)に対するあり方と同じように、都議選では小池と手を結ぶが、国政レベルで自民党との連立を解消することは絶対にない。小池新党なり都議選の「小公民」連合なりから、国政レベルでの自公連立解消を期待する向きもあるが(前述の「ワクワク」氏などその代表格だ)、公明党はそんな損なことは絶対にやらない。維新は大阪かせいぜい阪神間くらいでしかまともに通用しないし、小池も本当に通用するのは首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)くらいのものだろう。維新・小池とも、地方はおろか本拠地及びその周辺地域以外の都市部でさえ通用しない。維新が東京で全く通用しなかったことは、橋下と石原慎太郎の選挙応援をわざわざ見物に行った前回、2013年の都議選の結果にはっきり示された。小池も同じことだ。本当に通用するのは東京と神奈川くらいのものだろう。そんな小池と組むために国政レベルでの自民党との連立を解消するメリットなど公明党には何一つない。だから公明党は大阪では維新に、東京では小池百合子にすり寄りながら、国政レベルでは相変わらずの自公連立を堅持するのである。

また、これまでにも何度も指摘してきたが、小池新党の煽りを食う最大の政党は自民党ではなく民進党であることは、多少なりとも政治に関心のある人間がまともに考えれば誰にでもわかることだ。それなのに小池百合子にすり寄る蓮舫の頭の悪さ、と言って悪ければ絶望的なまでのセンスの悪さには、呆れ返って開いた口が2,3日塞がらないままだ。蓮舫自身に小池新党に移籍してもらって民進党は代表選をやり直せば良いとさえ言いたくなる。もっともそんなことをやったら、民進党から小池新党に移籍する人間が続出しそうだが(笑)。

下記の『広島瀬戸内新聞ニュース』の分析はいつもながら的確だと思う。

「クリントン」小泉純一郎に「トランプ」安倍晋三 : 広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)(2017年1月6日)

 小泉純一郎さんも安倍晋三さんも「清和会」出身ですが、小泉さんは、良くも悪くも、1990年代から2000年代前半に隆盛を極めた「ポストモダニズム」のチャンピオンです。

 政治的にはリベラル(総理在任中の男女共同参画積極姿勢や総理退陣後の脱原発など)な面もあるが、階級格差拡大は放置、空爆しまくりのアメリカのやりたい放題について行く。そういうタイプです。民主党で言えば、昔の前原誠司さん(今は社民主義に転向を宣言)が近いでしょう。というより、小泉さんが、1990年代の民主党右派をパクったと言う方が正解でしょう。小泉政権民主党右派+公明党政権という見方もできます。

 神奈川県ご出身というのが実は影響していると思う。神奈川県というのは、幕末以来の外国への玄関口横浜を抱えています。東京よりもグローバリズムに親和的なインテリが多いのではないか?
 実際、大学時代を振り返っても、同級生でも東京都民より神奈川県民の方がアメリカンな雰囲気でファッションセンスとかいい人が多かったと思いますね。

 神奈川県は長年、日本社会党右派系の論客・長洲一二(元日本共産党員だったが構造改革派であり、日本社会党左派=いわゆる協会派よりは右に位置した)が知事をしていました。

 その長洲県政こそが実は、日本の新自由主義のモデルであることを皆さんご存じでしたか?乱暴に言えば「住民参加」と引き替えにサービスをカットする的な方向です。

 小泉さんもそういう神奈川県民の気風を背景に政治家として育っていったのでしょう。

 今、小泉さんを受け継ぐ自民党政治家としては小池百合子さん(自民党を離れませんよ!!)が挙げられると思います。小池さんの場合も、兵庫県阪神間ご出身ですから、「グローバルインテリ」受けするセンスがあるのは当たり前です。

 アメリカで言えばクリントンさんが近いでしょう。

 安倍晋三さんの場合は清和会でありながら、実際には、山口県を基盤としているために、割と金丸信とか竹下登などの1980年代以前に活躍した田舎出身政治家の感覚なのだと思います。

 アメリカで言えばトランプさんが近いでしょう。

 ハコモノを造れば大手企業が来て、中小企業も自治体も庶民も潤う。こういうモデルです。

 旧来の重厚長大産業や田舎のお金持ち層が主な支持基盤になります。

 2012年頃以降、小泉さん(大都市近郊のグローバルインテリ中心のポストモダニズム)への反動として、「1980年代を取り戻す」的な雰囲気が出ている。それは間違いないと思います。

 高校生や大学生くらいのみなさんもバブル世代(今はもうアラフィフ!)の親から「あのころは六本木でガンガン遊べて良かった」的なことを聞かされれば、そりゃ、1980年代は良い時代だったと思うでしょうし、そのころを取り戻してくれそうな安倍内閣を支持するのも当たり前です。

まとめて言えば、
クリントン=小泉=長洲=グローバルインテリ=1990年代〜2000年代前半に隆盛」
陣営と
「トランプ=安倍=重厚長大&田舎お金持ち=1980年代以前に隆盛」
陣営
となっています。

前者は、自分たち以外を「既得権」と決めつけてウケを狙う手法。
後者は、露骨な利益誘導で支持を集める手法。
日本の場合は、アメリカに先駆けて4年早く「トランプ」が出てきたようなものです。安倍晋三は「4年早いトランプ」です。
重厚長大&田舎お金持ち
その原因としては、日本の民主党政権が4年持たずに倒れたことはあるでしょう。アメリカの場合はオバマが8年持ちましたから。
他方で、大阪や東京では「クリントングローバリズム的な部分を凝縮した」ような政治家が「田舎臭く」見える安倍政治への反感から復活しているとも言えます。

もちろん、皆さんもご存じのように、本社社主は、「クリントン」小泉も「トランプ」安倍も支持しません。

どちらも、圧倒的多数の庶民・労働者にとっては、良くないからです。

民進党代表が「小泉二世」とも言える現東京都知事にすり寄っておられます。
これでは、野党に勝ち目はありません。たとえ、公明党を抱き込んだとしても都会ではそこそこ議席を取れても、田舎で議席を落とすだけです。たとえ、万が一風が吹いて政権を奪取しても、うまくはいかない。安倍総理以上の弱者に厳しい政治、緊縮財政で凄まじい不況を招くだけでしょう。そして、2012年の民主党の二の舞を演じるだけになるでしょう。

21世紀の時代状況に合わせた格差是正をきちんと打ち出す方向。ここを特に野党・市民連合は打ち出すべきであると思います。
そのために日々、街頭(対外的)にも内部的にも活動しているわけです。


同じ『広島瀬戸内新聞ニュース』の下記記事に示された2次元チャートも面白い。


記事本文より。

蓮舫代表は、右上の小池=ポストモダニズムと左上の「共産・社民・自由ブロック」(野党共闘を主導)の間で日和見をしておられます。

蓮舫は、もちろん心情的には「小池=ポストモダニズム」にくっつきたいのだろうが、国政選挙を考慮すると、野党共闘にも軸足を残さざるを得ない。この日記も、「小池=ポストモダニズム」と「蓮舫」の絆を引っぱがす動きをあと押ししたい。

で、冒頭に触れた解散の話に戻ると、大阪人の「反自民」感情を回収してくれた維新が、安倍政権と改憲で手を結ぼうとしていることを考慮すると、安倍晋三が早めの解散で「小池新党」の芽を摘むことは、あとあとになって安倍や自民党にとって何の得にもならないどころか大損してしまうという計算は容易になし得る。だから、都議選で自民党議席が多少減っても「小池新党」を育てよう、そのくらいのことは誰にでも考えつくだろう。仮に安倍晋三自身に考えつかなくとも、周囲の人間の助言に安倍は納得し、それに従うだろうと思うのだ。

さらに言えば、安倍晋三の後継が稲田朋美になろうが小池百合子になろうが安倍晋三にとってはどちらでも良い。「お祖父ちゃんのなし得なかった『憲法改正*2」さえできれば、後継者だの経済政策(なんとかのミクス)だのはどうでも良い。もちろん、安倍政権の経済政策とは、「憲法改正」のための手段以外の何物でもない。それで困る人たちは自民党の東京都議だったり稲田朋美だったりするのだろうが、安倍晋三にとってはどうでも良いのである。せいぜい「後継は小池より稲田の方が良いだろうが、小池を選べば改憲できるのなら小池でも構わない」という程度だ。

つまり、「小池=ポストモダニズム」と「安倍=重厚長大&田舎お金持ち」は見せかけの対立軸に過ぎず、同じ根を持った木(それも本来あるべき寿命をとうに過ぎている巨大な老木)の枝分かれでしかない。現に小池百合子自身は自民党を離党していない。このあたりを忘れてはならない。

だから安倍晋三は早期の解散総選挙は選ばないだろうと予想するのだ。トランプの大統領就任による不測の事態も起きることもあり得るが、大勝の計算を揺らがしかねないリスクのある時期に解散総選挙の博打を打つのは、損をする可能性の方が得をする可能性よりずっと高い。

反安倍・反自民の人間にとってもっとも大事なことは、間違っても小池百合子に期待しないことだ。そして、民進党に「小池寄り」とは反対方向のベクトルを持つ経済政策へと転換させること。これなくして「野党共闘」は絶対に成功しない。既に中途半端ながらも前原誠司でさえ方向転換をしている。

下記リテラの記事に再度リンクを張っておく。

*1:http://mewrun7.exblog.jp/25121878/

*2:ここで「憲法改正」と括弧でくくったのは、安倍晋三の立場から見ての用語であることを明確にするためである。中には、括弧付きであっても憲法改正という言葉を使うなとの注文をつける人間もいるが、「憲法改悪」と書いてあるだけで党派性を看てとり、それ以上の文章を読まなくなる人間も少なくないことへの想像力が欠如した石頭的妄論でしかないと私は考えている。