長島昭久の民進党離党届提出について、「リベラル・左派」の間には歓迎の声が強いが、私には民進党崩壊の始まりにしか思えない。
http://www.asahi.com/articles/ASK475RPHK47UTFK014.html
民進・長島昭久議員、離党届提出へ 共産と共闘に不満
岡本智
2017年4月7日20時46分
民進党の長島昭久・元防衛副大臣(55)=衆院比例東京=が、10日に離党届を提出する意向を固めた。次期衆院選に向け共産党との共闘を進める党方針に不満を募らせてきた背景がある。今後は無所属で活動する方針で、小池百合子都知事を中心とする地域政党「都民ファーストの会」との連携も模索している。長島氏は7日夜、後援会に離党の方針を伝えた。その後、ツイッターで「真の保守政治を追求してきた私にとり、価値観の大きく異なる共産党との選挙共闘路線は譲れぬ一線を越えることを意味し、国民の理解も得られないと考えた結果です」と投稿した。
長島氏は、自民党の石原伸晃経済再生担当相の公設秘書などを経て、2003年衆院選で民主党から初当選。当選5回。民主党政権時代に外交・安全保障担当の首相補佐官や防衛副大臣などを務めた。(岡本智)
(朝日新聞デジタルより)
ここで注意しなければならないのは、「共産と共闘に不満」というのは長島昭久にとっては民進党離党の口実に過ぎないことだ。実際には「泥舟から逃げ出したい」だけだ。
現に、長島は民進党代表が岡田克也だった頃には、今よりももっと民進党(旧民主党)は「野党共闘」に前向きだったが、長島昭久は内心の不満を抑えながらではあろうが、党の方針に従って行動していた。それは、長島にとって民進党に所属していることのメリットがあったからだ。
ところが、昨年夏の東京都知事選に小池百合子が当選し、小池が「都民ファ□ストの会」なる新党を立ち上げ、民進党の現職・前職の都議を次々と引き抜いていく流れになった。せっかく蓮舫がすり寄ってくれているのに、小池百合子は蓮舫のラブコールを袖にする一方、民進党に手を突っ込んで都議を一本釣りにかかるという「仁義なき」剛腕ぶりを発揮している(小池百合子とは本当に血も涙もない極悪な人間だと思う)。これによって長島が民進党に所属し続けるメリットは全くなくなった。
私は昨年秋に蓮舫が小池百合子にすり寄る発言をした時点で「民進党ヲワタ」と思った、というよりこの日記の過去ログを調べてみると、昨年9月16日に蓮舫が野田佳彦を幹事長に任命した時点で「民進党ヲワタ」と書いていたのだが*1、自らの参院選東京選挙区における異様な強さを実力と勘違いした蓮舫のこの2つの愚策(野田佳彦幹事長人事と小池百合子へのすり寄り)によって、民進党崩壊劇の序幕は開けられたと考えている。
そしてその第2幕が今始まった。都議で相次いだ民進党からの離党は、今後、東京都の他の民進党議員としてすぐ名前の思い浮かぶ極右政治家・松原仁をはじめとして、都市部の多くの議員が続くだろう。
実は大阪では既にその兆しが出ていた。
樽床伸二という新自由主義者が鳩山由紀夫の辞意表明を受けた2010年6月の民主党代表選で菅直人と争ってからもう7年近くになるが、当時「社民党にも受け入れられる候補」と言いながら「頑張った者が報われる政治を」と訴える新自由主義者を推す小沢一派に呆れ返ったことが忘れられない。しかし、恥知らずの植草一秀などは当時樽床応援の旗を振っていた。
その樽床伸二は島根県出身だが選挙区は大阪12区だった。大阪ではもうずっと前から「維新一強」が続いているから、樽床は2012年の衆院選でも2014年の衆院選でも自民党の北川知克なる世襲政治家に連続して比例復活もできない惨敗を喫した。そして昨年4月に民進党に離党届を提出し、受理された。樽床は、このまま民進党に所属し続けても当選の見込みはないと判断したのだろう。
樽床は2度落選してからようやく民進党を離党したが、長島昭久は落選する前に民進党を離党する。そういうことだ。
長島昭久は前回(2014年)の衆院選こそ敗れたが比例復活した、東京の民進党にあっては得票率の高い政治家だ。その長島ですら民進党を離党するのだから、7月の都議選にとどまらず、次の衆院選においても東京選挙区における民進党の議席は比例の1議席をとれるかどうかも怪しい。ここで「次の衆院選」は都議選よりあとに行われ、「都民ファ□ストの会」の国政政党版(以下「ファ」と略称する。「ファ」は「ファ□□□のファ」)が衆院選に候補を立てることを想定している。朝日の記事には
と書かれているが、国会議員が「地域政党」と連携するって変だろ? 「地域政党」の国政政党版が都議選後の遠くない将来出現するという以外の予想はできない。そして、小池百合子にとって長島昭久は民進党さえ離れてくれれば大歓迎の政治家であることはいうまでもない。従って当然長島は「ファ」から立候補して、おそらく選挙区(東京21区=立川市、昭島市、日野市)で圧勝するだろう。松原仁も同様だろうし、旧維新の党系の政治家たち(たとえば東京6区でいったん内定していた大河原雅子の公認を江田憲司の腕力で覆して公認候補となり、選挙区では落ちた顔もとい越智隆雄に負けたものの比例で復活した落合貴之など)も軒並み「ファ」から立候補することになろう。というより、先日報じられた民進党旧維新の会の江田憲司系というか旧みんなの党系は、東京の民進党で選挙区で当選した柿沢未途*2を含めて全員「ファ」に移籍すると考えた方が良い。都議でもあの音喜多駿は元みんなの党だろ。
仮に長島昭久と松原仁と柿沢未途が「ファ」に移籍するなら、前回の衆院選で東京の民主党が得た比例区の得票のうち、少なく見積もっても3分の2は「新・新進党」であるところの「ファ」に流れるとみるほかない。そして日本の国政は自民党と「ファ」の保守ならぬ極右二大政党制が実現することになろうか。日本維新の会が大阪を中心とする近畿でのみ生き延びるか、それとも「ファ」と合体するかはわからないが。その鍵を握るのは、現在は政界を「引退」している橋下徹だろう。
「ファ」が引き抜きたい議員を引き抜くだけ引き抜いたあとに残る民進党は、もはや社民党や自由党と変わるところのない泡沫政党になるだろう。3党は単独ではもはや生き残れないから合同して、橋下を「別れても好きな人」と評した右翼にして新自由主義者の松野頼久あたりを代表に据えて「新党」を作らざるを得なくなると私は見るのだが、そんな政党が広範な国民の支持を得られるはずもないことなどわかり切った話だ。
本当は、日本からもポデモスやバーニー・サンダースやジェレミー・コービンが出てきて一大政治勢力にならなければならないし、そういう政治勢力を作るためには今から民進党の崩壊を見越した政治運動を立ち上げなければならないと思うのだが、「長島昭久の離党は民進党や『野党共闘』にとってプラスだ」みたいな根拠のない楽観論しか唱えられない「リベラル・左派」の現状は、あまりにもお寒い限りだ。