kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「詩織さん、本名で山口敬之を告発」の一件に思う

山口敬之という人間の顔をテレビで見たことは一度もない。山口の名前でネット検索をかけて山口の顔を確認したが、やはり見覚えはなかった。

ワイドショーを見る習慣が全くないからだが、その名前を知ったのは4か月ほど前までこの日記の常連コメンテーターだった人のコメントによってだった。ずいぶんワイドショー情報を教えてもらったものだ。現在はここよりももっとアクセス数の多いブログでご活躍のようだ*1。それに気づいたのは一昨日のことだった。あそこもここと同じで、ドレスコードというか投稿規定(この日記の場合、投稿規定を明記しておらず、私の心中のみにある)に引っかからない限りは、コメントの投稿は(承認制度をとっているものの)無制限だし(つい最近ここのコメンテーターであそこの投稿規定に抵触した人がいるようだが)、「来る者は拒まず、去る者は追わず」のコメント欄運営方針をとっている*2
この「来る者は拒まず、去る者は追わず」の運営方針も、私自身が同じ方針をとっているから感じるのだが、一つ大きな欠点がある。それはコメント欄の「仕切りたがり」を制御できないことだ。そこはまあ、コメント欄の運用を重視せず、書きたいことを書くことに徹することで対応している。人間誰しもそうだと思うが、年を重ねるにつれて、身体の機能に若い頃にはなかったようなトラブルが増えるし、それによって人生の残り時間への意識が高まるので、無駄なことに時間を割きたくない、やりたいことだけをやりたい、書きたいことだけを書こうと割り切っている。つまり、「理想のコメント欄のあり方」など全く追求していない。もっと身も蓋もない書き方をすれば、コメント欄などどうでも良いのである。

話がそれてしまったが山口敬之の件に戻ると、この人間の名前を知ったこと自体昨年になってからであって、それまではテレビの安倍晋三びいきのコメンテーターの名前としては後藤謙次田崎史郎、それに各放送局たちの政治部長級の人たち(これがTBSであろうがテレビ朝日であろうが自民党の権力者べったりの人間ばかりなんだよ)くらいしか思い浮かばなかった。この山口というのは不祥事を起こしてテレビ局(TBS)の出世コースから外れた人間らしく、TBSを退社後安倍晋三の提灯本を書いて(この本の存在も私は知らなかった)安倍晋三の歓心を買い、以後後藤某(今ではかなりまともな安倍批判を口にしているらしい)や田崎某(こちらは相変わらずらしい)など目じゃないほど安倍擁護一色のコメントをテレビで発しまくっていたようだ。

その山口が、『週刊新潮』にスキャンダルを嗅ぎつけられて海外に逃亡し、現在では安倍晋三は「もっとも働き者の御用コメンテーター」を失った格好になっているらしい。田崎某では山口の代わりは荷が重い、などと言われている。

で、その山口のスキャンダルで山口にレイプされたとして本名と顔を明らかにして山口を告発したのが「詩織さん」だ。

本名と顔を明らかにしての告発が勇気ある行動であることはいうまでもない。

ところがネットで目立つのは、「ハニートラップではないか」というゲスの勘繰りだ。安倍擁護派からは「リベラルは『推定無罪』の原則を山口氏に対しても適用するんだろうな」という言い草も聞こえてくる。

後者は、告発の文脈を全く無視した言い分だ。山口が権力と何の関係もない「一市民」であれば、「推定無罪」の原則だけでも良かろう。しかし山口はそうではない。十分「権力者」といえる人間である。それならば、「権力に対する懐疑」をも持って総合的に判断するほかない。そして、「誰が考えても」とまでは言わないが、少なくとも私は「状況証拠は限りなく黒に近い」との心証を山口に対して持っている。

以下、レイプ疑惑の山口敬之はやっぱり官邸と癒着していた! 週刊新潮対策を内調トップ・北村滋に相談したメールが流出|LITERA/リテラ(2017年5月20日)より。詩織氏の告発の約1週間前に公開された記事だ。

(前略)この(『週刊新潮』の=引用者註)第二弾記事では、前号に続いて山口氏が被害女性に送った言い訳がましいメール内容の数々を公開するとともに、山口氏の代理人弁護士が示談を求める姿勢を見せていた事実を伝えている。山口氏は〈私は法に触れる事は一切していない〉〈起訴も逮捕もされてない〉とあくまで強気の姿勢だが、その一方で、親告罪である準強姦罪を“カネで解決”しようとしていた形跡があるという。

 しかも、さらに注目すべきなのは、本サイトが数日前の記事で指摘していたように、山口氏が首相官邸内閣情報調査室幹部に「週刊新潮」の取材について相談していた事実が掲載されていたことだ。

 同誌はそのメールの画像を公開しているのだが、文面は以下のようなものだ。

〈北村さま、週刊新潮より質問状が来ました。
〇〇の件です。取り急ぎ転送します。
 山口敬之〉

 黒塗りの〇〇は被害女性の苗字が記されていたというが、問題はメールの宛名の「北村さま」だ。「週刊新潮」はこの「北村さま」が北村滋内閣情報官のことだというのである。北村氏は総理直属の諜報機関内閣情報調査室(内調)のトップで、“官邸のアイヒマン”との異名を持つ安倍首相の片腕的存在。山口氏は「(北村というのは)民間の人物でご指摘の人物ではない」と否定していたが、北村内閣情報官は「週刊新潮」の直撃に「お答えすることはない」といっただけで、否定しておらず、状況から見て、北村内閣情報官以外にはありえないだろう。

 しかも、笑ってしまうのは、「週刊新潮」編集部がこのメールを入手した経緯だ。記事によると、同誌編集部から取材依頼のメールを受け取った山口氏が、これを北村氏に転送しようとして、誤って「週刊新潮」に送信してしまったらしいのだ。

山口が相談したのは“官邸のアイヒマン”の異名をもつ北村滋

 なんとも間抜けな話だが、しかし、このなんの挨拶もなく始まる簡潔なメールからは、山口氏と北村氏が以前から非常に近しい関係にあること、そして、「週刊新潮」が掲載した準強姦疑惑記事や女性の名前についても、2人の間でわざわざ説明の必要もないくらいに情報を共有していたことがはっきりとうかがえる。おそらく、かなり前から山口氏はこの問題を北村氏に相談していたと考えて間違いないだろう。

週刊新潮」は第一弾で、山口氏が準強姦容疑で逮捕寸前だったにもかかわらず、菅義偉官房長官の右腕といわれるエリート警察官僚・中村格刑事部長(当時)が捜査にストップをかけていたと報道。山口氏が官邸に依頼して、事件を潰してもらった可能性を示唆していた。山口氏はこれを完全否定していたが、もとは警察庁外事課長などを歴任したエリート警察官僚である北村氏にこんなメールを送っていたところをみると、2年前の時点でも官邸に「準強姦事件と逮捕状もみ消し」を相談していた可能性も非常に高くなってきた。

 しかも、両者の関係がここまで近しいというのは、たんに個人的なスキャンダルや事件もみ消しという話にはとどまらない。山口氏のメディアでの発言やジャーナリズム活動の裏にも、北村内閣情報官の意向が働いていると考えるべきだろう。

 実際、北村氏といえばこの間、安倍首相の“私兵”として数々の謀略を主導してきた。もともと、第一次安倍政権で首相秘書官に抜擢された北村氏は、日本版NSC立ち上げにも深く関わり、特定秘密保護法の法案策定でも中心的役割を担ったが、第二次安倍政権で内調トップに就任すると、安倍首相の右腕となって、政権を利するための謀略情報を仕掛けるようになった。

 内閣情報官の首相への定例報告はそれまで週1回程度だったのだが、ほぼ毎日のように首相と面会。以後、“首相の特務機関”として暗躍する北村氏のもと、内調が動いたと見られる政敵のスキャンダルは枚挙にいとまない。(後略)

(リテラより)


山口が権力と何の関わりもない「一市民」であれば「推定無罪」で良かろう。しかし山口はそうではない。テレビで壊れたレコードのように(って意味わからない人が多いか)安倍擁護のコメントを連発するばかりか、内閣情報官に事件のもみ消しを依頼したことが疑われるような人間に対する「推定無罪」の姿勢を強要する安倍支持者の思考からは、「懐疑」という保守主義の真髄ともいえる考え方は欠片もない。ただひたすらに権力に盲従し、弱い自我を強い権力と一体化することによって優越感に浸るという、戦時中の日本国民やドイツ国民に見られたあり方そのものだ。

私は別に保守主義者ではないが、これほど「保守、保守」と自称したがる人間ばかりの国で、安倍支持者からも「中道」「保守リベラル」「リベラル保守」等を自称する人間からも「懐疑」を見出せないことはまことに絶望的な事態だと思うのだ*3

しかも、ひどい例になると、山口に対する「推定無罪」を強要する一方で、詩織氏に対しては「なんで今頃告発してきたのか」などと、明らかに権力側にいる山口に対しては全く適用しなかった「懐疑」を表明する人間もいる。そこから「ハニートラップではないか」などという「セカンドレイプ」的な陰謀論までの距離はほとんどない。

なお、山口に関しては下記のつぶやきが興味深かった。

https://twitter.com/kentarotakahash/status/869149908598575105

kentarotakahashi‏
@kentarotakahash

時系列が凄い。
事件は2015年4月3日。
2015年8月26日に書類送検
2016年7月22日に嫌疑不十分で不起訴に。
この間、
2016年5月に山口敬之はTBSを退社。
2016年6月に著書『総理』(幻冬舎)を出版。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170529-00010010-bfj-soci

4:14 - 2017年5月29日


なるほど。安倍の提灯持ちの本を書いたから事件をもみ消してもらったのではなく、事件をもみ消してもらったから、TBSはクビになったけれども安倍の提灯本を出して印税を稼ぎ、フジテレビとテレビ朝日のコメンテーターとしても活躍してたのか。

安倍事務所は昔から暴力団員に火焔瓶を投げ込まれたことがある(2000年)など、古くから(おそらくは岸信介の時代から引き継がれた)暴力団との関わりが深いことで知られるが、レイプ犯被疑者を引き込んで政権の用心棒にしてしまうなどとは常軌を逸している。

その安倍政権に対して「批判する言説が絶え果てた『崩壊の時代』」。これほどこの国に絶望を感じながら生きることはこの人生で初めてだ。

*1:この日記にお越しになる前は、『世に倦む日日』のコメント欄で活躍なさっていたようだ。

*2:あそこでも時にコメンテーター同士の諍いがあり、昨年春にはずいぶんひどい喧嘩があって、それまで常連投稿者だったさる方がコメントの投稿を止めてしまったが、その時に管理人が「来る者は拒まず、去る者は追わず」と書いておられたのを目撃した。

*3:「リベラル」にしても同じ穴の狢であって、昨今の加計学園問題では、前川前文科省事務次官の「出会い系バー」通いを攻撃する読売新聞などの安倍擁護側に対して、前川氏の「高潔な人格」を称揚することで対抗しようとしている。それでは加計学園問題の核心から目をそらさせようとする敵の思う壺にはまるだけだろう。