kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

民進党代表選、前原誠司と枝野幸男とでは路線も推薦人もあまりにも対照的

民進党代表選だが、一部リベラル系の論者の中に、井手英策をブレーンとする前原誠司の政策を評価する人もいるようだ。

しかし、政治家を動かすのは政治家本人やブレーンの政策や理念ではなく、周囲の人間の思惑だ。

2010年6月の民主党代表選に立候補した菅直人を担いだ面々の「決起集会」に前原誠司野田佳彦の名前を見つけた時、私は菅政権が良からぬ方向へ走る恐れが強いな、と危惧したが、実際その通りになった。菅は先走って参院選前に消費税率引き上げの意向を表明し、それが民主党勝利が確実視されていた参院選の情勢を一変させて民主党自民党に敗北した。そこから「菅降ろし」が始まった*1菅直人が前原や野田の意向を無視して政策を決められなかったのと同様、前原も共産党との共闘離脱を熱望する取り巻きの意向を無視して党運営などできるはずもない。たとえそれがブレーンである井手英策の本意からかけ離れたものになろうとも。

思えば昨年の民進党代表選で圧倒的優勢が言われ、事実圧勝した蓮舫はボスの野田佳彦、あの三党合意の責任者にして財政再建厨の人間であって、井手英策とは立場がかけ離れているが、昨年蓮舫を担いだ人間の多くは今回前原誠司を担いでいる。

蓮舫も前原も民進党右派の人間で、昨年蓮舫は「野党共闘」見直しを示唆する発言をしていたし、今年の前原はもっとはっきり明言している。

しかし、昨年蓮舫が党内右派に甘い顔をしたにもかかわらず、逆に蓮舫自身も属するはずのその右派に離反されて「国籍問題」を「追及」されるなどして民進党代表を投げ出すに至った。今年も必ずや同じことが起きる。

いや、これから起きることのプロトタイプ(原型)は既に都議選前に示されている。

都議会民進党は、小池百合子にすり寄って会派名を「東京改革議員団」に変更したが、「都民ファ□ストの会」は連携してくれるどころか多くの民進党候補を引き抜いた。引き抜かれて「都民ファ□ストの会」に公認された元民進党都議選候補はほぼ全員当選した(柿沢幸絵のように公認が受けられず推薦にとどまった候補からは落選者が出たがw)。

何度も書く通り、これから国会議員の間で同じことが起きる。

「小池ファ★スト」は、民進党丸ごととの合流など絶対にしない。若狭勝長島昭久渡辺喜美松沢成文細野豪志らは民進党の連中にイニシアチブをとられてはたまったものではないから、自分たちの仲間に加わるなら民進党を離党せよと迫るに決まっているからだ。現に小沢一派出身の木内孝胤は彼らの誘いに応じて民進党に離党届を出した。

小池ファは、自分たちにとって都合の良い極右または新自由主義系で「実力」のある人間から順番に引き抜いていく。その筆頭が長島昭久で、二番手が細野豪志だったことはまことに興味深い。

今後も、都議選前の「東京改革議員団」同様、民進党国会議員からの離党者が続出することは目に見えている。

天木直人が、辛坊治郎が週刊誌に語った民進党内政局展望を援用しながら、前原が勝てば民進党はいったん落ち着くかのようなことを書いているようだが*2、さすがは小池百合子びいきを隠そうともしない天木だけのことはあって、小池の恐ろしさに対する認識が全く欠如している。小池ファの国政政党は政党交付金との兼ね合いから年末までには必ず結成されることを天木は軽く見過ぎている。私は2010年に稲田朋美を絶賛したこともある天木を昔から嫌っているが、やはり天木はダメなやつだ。

実際には、前原が勝った場合でも、歯が抜けるように民進党からの離党者が続出して、最後には、1997年に新進党小沢一郎がやったのと同じように、前原は民進党を解党せざるを得なくなるだろう。

枝野幸男が勝った場合には、それは徐々にではなく短期間に起きる。民進党からの離党者(右派の連中たち)のうち、ある者は無所属となり、他の者たちは「新党」結成を経て、無所属となる者ともども最終的には小池ファへの合流を目指すだろう。

前原が勝った場合には解党、枝野が勝った場合には分裂というのはそういう意味だ。そして、解党よりは分裂の方がよほどマシに決まっているというのが私の立場だ。

それにしても前原と枝野の推薦者はカラーがはっきり分かれた。

某昨年小池百合子民進党との連携の希望に「ワクワク」していたブログが最新の記事で朝日新聞の記事を引用しているが、ここでも同じ記事を引用しておこう。

http://www.asahi.com/articles/ASK8P41N1K8PUTFK00P.html

前原・枝野両氏の会見要旨と推薦人 民進代表選
2017年8月21日22時52分

 民進党代表選に立候補した前原誠司枝野幸男両氏が21日に党本部で行った共同記者会見では、消費増税野党共闘などで路線の違いが明らかになった。主な発言は次の通り。

 【経済政策】

 枝野氏 格差が拡大し可処分所得が減っているから、消費が冷え込むのは当たり前。賃金の低い方、中ぐらいの方の所得を底上げすることで消費を拡大させる。看護師、介護職員、保育士らの賃金に公的資金を投入してでも底上げする。

 前原氏 アベノミクスは企業をもうけさせ、個人を細らせる。教育無償化、年金・介護、職業訓練、様々な世代へ現物給付を行う。一種の公共投資で、雇用を増やす。

 【消費増税

 枝野氏 将来的には恒久財源としての消費税負担をお願いしなければならない。財政健全化のためにも必要。だが、消費不況はまだ続いている。法人税を減税している状況で国民の理解を得られない。消費税は上げられる状況ではない。

 前原氏 野田政権で(消費増税を含む)社会保障と税の一体改革を政調会長として進めた私は、大いなる責任を負っている。年金や介護の待遇改善、教育無償化を提唱するには財源が必要。財源論にも逃げずに議論していきたい。

 【憲法改正

 前原氏 野党第1党として憲法議論は行っていく。他方、今年中に改憲草案をまとめて来年発議するという、こんな拙速な話はない。安倍晋三首相の実績づくり、思い出づくりにくみするつもりはない。安保法制は違憲。それを残したまま新たに自衛隊憲法に書くようなことは、安倍さんと意見が異なる。

 枝野氏 民主主義を強化し、人権保障を高め、生活や経済をより良くするために憲法を変える必要があるなら、議論は積極的に進めるべきだ。ただ、今のところそうしたものがあるという結論はない。9条に手を付ければ立憲主義を破壊する解釈変更や安保法制を事後的に認めることになる。9条の議論の余地はない。

 【北朝鮮問題】

 枝野氏 (北朝鮮からグアムへ向けて飛ぶミサイルを)撃ち落とさなければ壊れるほど日米同盟は脆弱(ぜいじゃく)なのか。我が国は専守防衛。それを越えてできることをつくってしまえば、無限に拡大するスタートになりかねない。

 前原氏 対話と圧力という路線は我々が政権を取っても方向性は変わらない。(米軍普天間飛行場の)辺野古移設は沖縄の皆さんにご迷惑をかけたことを認識しつつ、今のプロセスを進めるのが大前提だ。

 【野党共闘・政界再編】

 前原氏 衆院選政権選択選挙。理念・政策が合わないところと協力するのはおかしい。基本的にはすべての選挙区で(候補者を)立てることを原則にしたい小池百合子東京都知事の都政は一定の評価。若狭勝衆院議員がやろうとしているものは、理念・政策が出たときに(連携について)判断したい。

 枝野氏 我が党の主体性を持ちながら、野党間でできることを最大限やる。昨年の参院選は候補者を一本化し、成果を上げることが一定程度できた。政権選択の衆院選では一層困難が大きいが、主体性を守った中で最大限の努力をしたい。(若狭氏が検討する新党について)理念も何も掲げていないものとどうこうするなんて、お尋ねになる方がおかしい。自民党の補完勢力の可能性が高いと見ざるを得ない。

     ◇

前原誠司氏推薦人

衆院〉 阿部知子、大島敦、北神圭朗黄川田徹菊田真紀子小宮山泰子篠原孝原口一博古川元久伴野豊牧義夫松木謙公松野頼久鷲尾英一郎渡辺周

参院〉 足立信也風間直樹川合孝典古賀之士小林正夫桜井充榛葉賀津也牧山弘恵増子輝彦柳田稔

枝野幸男氏推薦人

衆院〉 赤松広隆逢坂誠二岡田克也菅直人近藤昭一佐々木隆博辻元清美、寺田学、中川正春長妻昭西村智奈美横路孝弘

参院〉 相原久美子有田芳生石橋通宏江崎孝大野元裕斎藤嘉隆、芝博一、杉尾秀哉、徳永エリ那谷屋正義鉢呂吉雄

(敬称略)

朝日新聞デジタルより)

前原の推薦者で目立つのは右翼(極右)と小沢一派だ。中には牧義夫松木謙公小宮山泰子のように、右翼と小沢一派の両方に該当する人たちもいる。黄川田徹は2011年の東日本大震災で近親者の多くを失ったにもかかわらず、菅直人との党内抗争に夢中になって被災者に冷淡を極めたボス・小沢一郎の態度に激怒して小沢一派から離れた人だが、この人ももともと自由党に所属していたタカ派議員だ。また北神圭朗は生え抜きの前原系列だが、共産党との共闘に特に強い拒絶反応を示す極右議員。原口一博は昔からかつてたかじんの看板を冠していた大阪・読売テレビの極右番組の常連だったことで悪名高い極右議員。渡辺周民進党きっての極右議員の一人。

私が腰を抜かすほど驚いたのは、あの小林正夫が前原の推薦者に名を連ねていたことだ。いうまでもなく小林は東電労組出身の原発推進派である。前原なら民進党脱原発への傾斜にストップをかけてくれるだろうと期待しているのだろうか。

こんなそうそうたるメンバーの中に、元社民党阿部知子菅直人グループの一員だったはずの桜井充が名を連ねていることも覚えておきたい。もっとも阿部は、昨年蓮舫の「国籍問題」を松木謙公木内孝胤(離党届提出済)らと一緒になって「追及」した人間だから驚きは全くない。もともとそういう人だったのだろう。

枝野の推薦者の中では、野党共闘に粉骨砕身した岡田克也が名を連ねていることが注目に値する。やはり野党共闘の継続を選択するのであれば、枝野を勝たせるほかはないようだ。

前原と枝野とは、小池ファへの対応も対照的だ。上記引用文中に赤字ボールドと青字ボールドでそれぞれ示した通り。

ところで某ブログの話だが、昨年「小池都知事公明党民進党の連携にちょっとワクワク」した人なら、当然前原誠司を推してしかるべきではないかと思うのだが、なぜか「枝野、小池新党を自民党の補完勢力だと、安倍改憲に反対すると明言。重要な方針で、前原と対峙」というタイトルの記事を上げている*3。少し前、このブログに「都民ファ□ストの記事を書いてほしい」と要望していたコメンテーター氏は今月に入って一度も同ブログにコメントしていないようだが、この掌返しをどう思っているのだろうか。

別に「小池都知事にワクワクした私が間違ってました」と書くのはそんなに難しい話でもないと思うのだが。恥ずかしながら、私だって「かつて野党共闘を冷笑したのは誤りだった」ときっちり認めているのだ(笑)。なぜ人間は自分の犯した誤りを認めたがらないのだろうか。

もっとも問題はミクロなブログの世界より、大メディアである日経が「保守二大政党制」を熱望する記事を、民進党代表選の告示当日だった昨日(21日)一面トップで堂々と掲げたことだ*4

下記くろかわしげる(黒川滋)氏のツイッターで紙面の一面に掲げられた相関図(上下が切れているが)を見ることができる。ちなみに、この記事の冒頭に「井手英策をブレーンとする前原誠司の政策を評価する人もいるようだ」と書いたのは、具体的には黒川氏を念頭に置いている。


この日経記事に掲げられた相関図では、民進党の分裂は規定事項となっているようだ。つまり、リベラル派は野党共闘を継続し(相関図の下が切れた部分に「野党共闘」の文字がある)、保守派は日本ファ★ストとの連携を模索するという図解になっている。しかし日経の相関図で細野、長島、松沢、渡辺が若狭勝に「連携探る」と書いているのはもちろん新党の結成前の建前に過ぎず、実際には彼ら5人が小池ファ国政政党板の中核をなす議員たちであることはいうまでもない。

またミクロな話に戻ると、某「ワクワク」ブログのトラックバック常連に「小沢信者」のブログがあるが、このブログは昨年の都知事選直後には「小池都知事誕生は政権交代と同じ」と掲げ、小池百合子万歳ブログだった時期がある。ところがいつしか「小池離れ」を起こし、さっき見たら「小沢一郎氏が代表にならなければ民進党自民党に対抗できない・自由党と合併し小沢党首で国民のための政党となれ」*5などと呆れたことを書いていた。

これが「小沢信者」のなれの果てだ。こんなブログからしトラックバックが来なくなるようではブログもおしまいだ。

もっともこのウェブ日記にせよ「きまぐれな日々」にせよ、こちらからトラックバックを送らなくなった成果というべきか、どのブログからもトラックバックなどほとんど来ないのではあるが(笑)。まあしばらく前にはseesaaブログがトラックバックの機能を停止したらしいし、何年も前から同様の機能停止を行っているブログサービスも多いらしい。ブログのトラックバックなどすっかり時代遅れになったらしい今日この頃である。

*1:当初は「菅降ろし」の側にも一定の理があったものの、翌2011年の東日本大震災・東電原発事故のあとに小沢一郎鳩山由紀夫自民党森喜朗ら)とつるんで仕掛けた内閣不信任案提出騒ぎには欠片ほどの理もなく、ただただ醜悪の一語に尽きた。何しろ最後は首謀者だった小沢と鳩山が敵前逃亡し、松木謙公を人身御供(民主党から除名)にして一件落着したのだから。この時に現在の民進党へと続く民主党の衰勢は決定的なものになった。

*2:http://kenpo9.com/archives/2122

*3:http://mewrun7.exblog.jp/25996393/

*4:http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS15H1W_W7A810C1MM8000/

*5:http://03501213kyoiku-koyo.at.webry.info/201708/article_20.html