kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

選挙制度再改革に踏み込まなかった朝日新聞・根本清樹論説主幹のコラムに軽く失望した

衆院選後、テレビなどマスメディアが焦点を当てたのは、11月1日に第4次内閣を発足させると伝えられる安倍晋三ではなく、55議席しか獲得できなかった野党第一党の党首・枝野幸男だった。

まず10月2日の立憲民主党の立ち上げについて思うことを書く。

希望の党の立ち上げと、主に読売・日経などの保守派のメディアによって先走って伝えられた「民進党の丸ごとの合流」によって、多くの有権者が感じたであろう「ええっ、これでは受け皿がなくなるじゃないか。誰か民進党を割って新党を立ち上げてほしい」という要求が高まった。その期待が、たまたま民進党代表選で前原誠司と一騎打ちした枝野幸男に集まったのは当然だ。Twitterで広まった「#枝野立て」というハッシュタグがそういう人たちの空気を象徴している。

結局、枝野は10月1日逡巡したのち立ち上がった。枝野が立ち上げた当初、私はこの日記に「立憲民主党の獲得議席はほとんどないだろう」と書いたが、閲覧者の少ない某所でのつぶやきではさらに「予想獲得議席はゼロ」とまで書いた。小池百合子による民進党左派あるいはリベラル派(私自身は枝野幸男は昔の宮沢喜一などの「保守本流」に考え方が近い保守政治家だと思うが=そもそも立憲民主党が党名に掲げる立憲主義自体が紛れもない保守思想だ=)の「排除」は8月2日の時点で、つまり小池が本当に「排除」の言葉を口にするよりも2か月近い前に言い当てていた私だが、立憲民主党議席についてはこれ以上酷い外れ方はないほどどうしようもない読み間違えをしてしまった。まさに両極端だなとわれながら呆れる。

以後の枝野幸男の言動は、枝野自身の主義主張や思想信条よりも、「枝野の立場が枝野をして語らせている」というのが本当のところだろう。従って、立民立ち上げ以降の枝野の言葉には、かつて枝野が語ったこととは矛盾し、整合性がとれない事柄がたくさんある。立憲民主党に投票した人(私自身はそれに属さない。この日記や『きまぐれな日々』で公言しいた通り、選挙区では共産党候補に投票したし=立憲民主党候補も社民党候補もいなかった=、比例区では社民党に投票した)の中には、民進党の再結集を望む人も相当数いるだろうが、今の安倍一強を改め、民意が反映される政治を求める人たちのなすべきことは、いかに枝野幸男を動かすかということだろう。

希望の党が惨敗した直後から、前原誠司は恥知らずにも立憲民主党にすり寄ってきており、メディアもそれに対する枝野の言葉を求めたが、枝野はただ一言「他党のことはコメントする立場にございません」と突っぱねた。前原に迎合すると同時に枝野と立憲民主党への人々の支持は地に堕ちるだろうことは枝野自身は百も承知だろう。しかし周囲はその「地に堕ちる」道を枝野に取らせようと圧力をかけてくる。前原誠司はそのもっとも悪質な例だが、岡田克也だの野田佳彦だの連合だの、さらには不本意ながら希望の党に移って当選した議員だのから同様の圧力が今後強くかかり続けるだろう。それに抗する力を与えることが大事だ。

さて、以上は長すぎる前振り。

今朝(10/24)の朝日新聞では、1面左上に掲載された根本清樹論説主幹のコラム「座標軸 『法の支配』立て直せるか」に注目した。書き出しは良かったが、途中から朝日新聞らしい微温的な主張にとどまったことが残念に思われた。

下記は書き出しのすぐあとに書かれた文章。

(前略)総じて首相の手にする権力が大きくなりすぎた。これが、自民大勝という結果を受け、いま考えるべき問題の一つである。

 衆院小選挙区制をはじめとする一連の統治機構改革は、政権交代のある政治をめざすとともに、首相と官邸に権力を集中させていく過程でもあった。

朝日新聞 2017年10月24日付1面掲載コラム「座標軸 『法の支配』立て直せるか」(根本清樹論説主幹署名記事)より)

せっかくこのように書きながら、小選挙区制を改めるべきとの主張にはつながらず、最後には立憲民主党改憲構想(総理大臣の解散権制限を憲法に書き込む案)に迎合しているかのようにも読める下記の文章でコラムが結ばれる。

 首相が改憲を論じたいのであれば、まずは解散権の乱用を防ぐ方策に着目するのも一方ではないか。立憲主義の基本に立ち返った重心の低い議論を望む。

(同前)

私は総理大臣の解散権の制約は憲法解釈の問題であって、憲法改正まで必要としないのではないかと思う。今朝日新聞に求めたいのは、自らも加担した90年代の「政治改革」の総括であって、70年代の田中角栄内閣時代に小選挙区制の問題を指摘して「カクマンダー」を阻止した頃の自社の主張に立ち返り、小選挙区制を軸とした衆議院選挙制度を改めるべきとの方向に社論を転換することだ。

それは「政治改革」を推進した学者たちに対してもいえる。

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20171023/1508717743#c1508771763

id:kemou 2017/10/24 00:16

反省の弁もなく「今頃気付いたのか」と言いたくもなりますが、山口二郎のこのスタンスの変更は山口と比較的近い関係にある立憲民主党選挙制度に対する考え方に影響を与える可能性はありますね。一方小沢はいまだに「結集しかない」とtwitterで主張しているという・・・。日本における小選挙区制が生み出した最大の汚物と言っていい「希望の党」の有様を見ても小沢はやはり小沢ですね。


山口二郎
https://twitter.com/260yamaguchi/status/922298600985583617
今まで、小選挙区制を箍にして、大きな野党を作るというプロジェクトを追求してきたが、それが破綻したというのが今回の民進党分裂の意味。すぐに実現できないとしても、選挙制度を再改革する議論は広げなければならないと思う。選挙制度で政党を作るというのは無理筋の議論だった。


http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20171023/1508717743#c1508796287

id:redkitty 2017/10/24 07:04

上記コメント中の山口二郎の言、怒りを通り越して、脱力です。

 「小選挙区制を箍にして、大きな野党を作るというプロジェクト」って、今現在ここにいたるまでそんなこと信じてやってたのか!? 考え直す契機となる事象はいくつもいくつもあったのに。

 もし野党が政権についたとしても、こういう学者が中枢に入ることのないように。

私も、山口二郎に対しては「何をひとごとみたいに言ってるんだよ」と腹を立てますが、その山口二郎が「野党共闘」の中心的なイデオローグの一人だったところに、今回の「野党共闘」の失敗の原因が象徴されているように思います。

その山口二郎が90年代の「政治改革」当時から長年に亘って小沢一郎と昵懇であることは、いまさら改めて指摘するまでもありますまい。