kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

安倍晋三、「働かせ方」法案から「裁量労働制の拡大」を削除へ

私の四半世紀前の経験から知る限り、裁量労働制下での労働には「見なし残業代」がつくが、それでも大企業の経営者は熱心にこの制度の導入を求めていた。現在でも同じであろうことは、東レの社長、会長、相談役を歴任した経団連会長の榊原定征裁量労働制の対象拡大を熱心に安倍政権に求めていたことからも明らかだ。

「見なし残業代」がつくということは、残業を前提とした制度であることを意味するし、その制度に対して使用者側が熱心に対象拡大を求め、労働者がこれに反対するということは、実質的に労働時間当たりの単価を切り下げる制度であるのは当たり前だ。しかも、労働時間は天井知らずで長くなる。当然ながら労働者の生活からは現在よりさらに余裕が失われ、もういい加減その斜陽ぶりが誰の目にも明らかになってきたこの国の崩壊が、さらに音を立てて加速していく。こんなわかり切ったことを理解していない人間があまりにも多すぎた。

思慮の足りない、あるいは頭のネジが飛んだ総理大臣が、国会の答弁でうっかり口を滑らせなければ、この裁量労働制の対象を拡大する「定額(低額)働かせ放題」法案が、「リベラル」人士であろう小田嶋隆が軽々しく予想した通り「間違いなく成立」しただろう。

しかし、厚労省安倍晋三に「忖度」して、同省の職員がいやいや捏造したデータがずさんを極めていた結果(もちろんより強く責められるべきは厚労省よりも安倍晋三だ)、幸いにして小田嶋氏の悲観的予想が外れることになった。

「裁量労働制の拡大」を削除へ 首相、「働き方」法案で:朝日新聞デジタル

裁量労働制の拡大」を削除へ 首相、「働き方」法案で
2018年3月1日01時02分

 政府が今国会の最重要法案と位置づける働き方改革関連法案について、安倍晋三首相は28日、裁量労働制の対象拡大を法案から全面削除することを決めた。裁量労働制をめぐる労働時間の不適切データ問題による混乱の収拾を図り、法案の今国会での成立をめざすが、法案の根幹部分の変更は政権にとって打撃だ。

 首相は28日深夜から、加藤勝信厚生労働相自民党二階俊博公明党井上義久の両幹事長らと首相官邸で会談。残業時間の上限規制などに関連する8本の法案を束ねる働き方改革関連法案から、裁量労働制部分を全面削除する方針を伝えた。

 首相は会談後、記者団の取材に応じ、「国民が(裁量労働制の労働時間の)データに疑念を抱く結果になった。厚労省で実態を把握したうえで議論し直すようにしたい」と削除する理由を説明した。残業時間の上限規制や「同一労働同一賃金」、専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度高プロ)は法案に盛り込んだまま、予定通り今国会に提出、成立をめざす方針だ。

 加藤厚労相はデータ問題の実態把握について「それなりの時間がかかる」としたうえで、別建てとなる裁量労働制の法案について「今国会への提出は難しい」との見通しを示した。

 法案の根幹部分について削除する大きな方針転換によって、裁量労働制の拡大を求めてきた経済界の反発も予想されるうえ、法案審査を控える自民党内にも不満の声が出始めている。野党は攻勢を強めており、今国会を「働き方改革国会」と名付けた首相の責任も問われることになりそうだ。

 衆院は28日夜の本会議で、一般会計総額97兆7128億円の2018年度予算案を自民、公明両党の賛成多数で可決した。憲法の規定で予算案は参院に送られてから30日で自然成立するため、年度内に成立する。高齢化で膨らむ社会保障費や、北朝鮮のミサイル対策などを盛り込んだ防衛費が過去最大となり、全体を押し上げた。待機児童の解消に向けた保育施設の運営費や大学生らの給付型奨学金などの費用も計上している。

 予算案の本会議採決に先立ち、立憲、希望、民進、自由、社民の野党5党は、河村建夫・予算委員長が「野党の要求を見過ごした」として解任決議案を提出したが、本会議で自公の反対多数で否決された。

朝日新聞デジタルより)

上記は朝日新聞の記事だが、毎日新聞は「首相白旗」との見出しを掲げたらしい。記事を引用しようかと思ったが、「会員限定有料記事」とやらで冒頭部分しか表示されなかったので止めた。朝日にしても毎日にしてもこんな愚かな真似は早く止めた方が良い。ネットの利用に関しては、両紙とも産経を見習うべきだ。産経の積極的なネット戦略によって、今やネット言論は極右トンデモ色に強く染め上げられてしまった。

なお、以前からこの日記でも繰り返し指摘していた通り(こたつぬこ=木下ちがや=氏もつぶやいていた)、安倍晋三が労働政策に大して関心を持っておらず、裁量労働制の対象拡大にしても財界の歓心を買おうとしていただけだから、この方針転換に驚いたり、ましてや安倍を評価したりするには全く当たらない。極言すれば、安倍は「全ては改憲のために」思考し行動する人間だから、安倍個人にとっては裁量労働制などどうでも良いのだ。今回の決断も、裁量労働制固執して、安倍にとっては何よりも大事な改憲が台無しになっては元も子もないと安倍が考えた結果に過ぎない。しかも、「働かせ方改革」についても、上記朝日の記事にもある通り、安倍はまだ「専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度高プロ)は法案に盛り込んだまま、予定通り今国会に提出、成立をめざす方針」なのだから、労組や野党は政権に対する攻勢を緩めてはならないことは当然だ。下記つぶやきの主が言う通り。

https://twitter.com/neo_yamabusi/status/968869781267820545

や(ま)ブし
@neo_yamabusi

これから政府が通そうとしているもの。

残業時間上限100時間= #過労死合法化法案
高度プロフェッショナル= #残業代ゼロ法案

要するに長時間労働をいっぱいまで合法化して、残業代ゼロで働かせる。万が一、過労死しても永遠に労災逃れできる魔法の杖みたいなものをつくろうとしているわけだよね。

https://twitter.com/neo_yamabusi/status/968861770923126784

や(ま)ブし @neo_yamabusi
裁量労働制→ 今国会では見送りに

◎息をしているもの
高度プロ=残業代ゼロ…


7:25 - 2018年2月28日


今回、裁量労働制の対象を拡大しようとした財界(と安倍政権)の野望を潰すのに殊勲甲だった上西充子氏のつぶやきも引用しておく。

https://twitter.com/mu0283/status/968849138958852096

Mitsuko_Uenishi‏
@mu0283

そう。まだ法案は閣議決定されておらず、国会に提出もされていない。
裁量労働制を切り離して高度プロフェッショナル制度を残すことを認めず、さらに「100時間未満」という長すぎる上限規制も、より短い上限に変えさせましょう。
労働時間の客観的な把握義務や、日々のインターバル規制も。

6:03 - 2018年2月28日