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古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「働かせ方改革」関連法案が衆院本会議で可決

アメフト(日大)だのサッカー(老害選手たちの理不尽な代表入り選考)だのでもろくでもない話題ばかりだが、なんと言ってもろくでもないのは「高プロ」を含む「働かせ方改革」関連法案の衆院本会議可決成立だ。

働き方法案:衆院通過 「高プロ」野党、参院も抗戦 - 毎日新聞

働き方法案
衆院通過 「高プロ」野党、参院も抗戦

 安倍政権が今国会の最重要課題と位置づける働き方改革関連法案は31日、衆院本会議で自民、公明両党と日本維新の会希望の党などの賛成多数で可決された。6月4日にも参院で審議入りする。法案の柱の一つで、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)について、立憲民主党などの野党が反対姿勢を強めるが、政府・与党は20日までの会期を延長する方針で、法案は成立する見通しだ。

 立憲の長谷川嘉一氏は本会議で、高プロについて「長時間労働を助長し、過労死が増えるのではないか、対象業務の拡大や年収要件の引き下げが行われるのではないかという懸念は、何一つ払拭(ふっしょく)されないままだ」と与党を批判。これに対し、自民の後藤茂之氏は「希望する高度専門職の方が、明確な職務範囲で高い年収を確保した上で、自ら仕事の進め方を決めて働くことができる。対象がなし崩しに拡大されることはない」と反論した。

 法案の可決を受け、安倍晋三首相は経団連の定時総会のあいさつで「多様な働き方ができる社会を、今こそ作り上げていかなければならない。その強い信念のもとに、この国会において、働き方改革を必ずや実現する決意だ」と語った。

 一方、連合の相原康伸事務局長はコメントを発表。「(法案には残業時間の)罰則付きの上限規制の導入など、長時間労働の是正に向けた施策が盛り込まれた中で、長時間労働を助長する懸念のある高プロが削除されずに衆院を通過したことは極めて遺憾。参院では与野党の真摯(しんし)な議論を強く望みたい」としている。【神足俊輔】

議論深まらぬまま

 働き方改革関連法案は高プロと並び、残業時間の罰則付き上限規制や、正社員と非正規労働者の不合理な待遇差を禁じる「同一労働同一賃金」の導入なども柱になっている。だが、衆院厚生労働委員会の審議では高プロに質問が集中した上、野党側が野村不動産社員の過労死や、厚生労働省データの異常値問題への追及に時間を割き、他の柱については議論が深まらなかった。

 残業時間の上限規制を巡っては、政府案は脳・心臓疾患の労災認定基準をベースに「最長で月100時間未満、2〜6カ月の月平均で80時間以下」としているが、これは過労死ラインにあたるとの批判がある。立憲民主党は対案で「月80時間未満、複数月の平均で60時間以下」と厳格化した。政府は「(政府案の上限は)連合と経団連が合意した水準だ」との答弁を繰り返し、上限の妥当性まで議論が及ばなかった。

 また同一労働同一賃金に関し、政府が策定したガイドライン案では正社員の待遇が下がらないのかや、退職金の扱いをどうするのかについての言及はなく、議論の余地を残した。

 法案には、退社してから次の出社までに一定の時間を空ける「勤務間インターバル制度」の導入も盛り込まれている。政府案は「一定の休息の確保に努めなければならない」との努力義務なのに対し、立憲案は「11時間以上の休息時間の付与を義務づける」としている。この違いも厚労委で十分に審議されなかった。

 厚労省幹部は「データ問題に時間を費やしたことは、こちらに非があるが、それでも高プロ以外の議論は深まらなかった。参院では有意義な審議が必要だ」と話す。【神足俊輔】

毎日新聞 2018年5月31日 21時25分(最終更新 5月31日 23時13分)


衆院の委員会可決翌日に他紙より多いスペースを取って報じたことを上西充子氏が評価した毎日新聞でも

政府・与党は20日までの会期を延長する方針で、法案は成立する見通しだ。

などと書く腰の引けぶりだし、上記記事に引用された立憲民主党の対案にある「月80時間未満、複数月の平均で60時間以下」はいくらなんでも妥協のし過ぎだろう。後者については共産党が「月45時間かつ年360時間」と規定すべきだとの提言をしており、これに対して「野党共闘」論者に「民進クラスタ」と揶揄された人たちの中でも労働問題に関心の高い人は、立民や国民民主党の対案よりも共産党の案に軍配を上げているのを見た。当たり前だ。以下やや脱線するが、私にはむしろ「野党共闘」を普段絶叫している論者が、ことのほか今回の「働かせ方改革」法案への怒りの温度が低いように思える。「安倍信者」たちのいう「野党や政権批判者は『モリカケ』ばかり」というのはためにする批判でしかないが、「モリカケ」ばかり言って「働かせ方改革」法案には何も言わない*1、あるいは西城秀樹が死んだ時「被曝」云々の呟きをルーチン的に「拡散」するのに芸能界に蔓延する芸能人の酷使にいっさい思いを致さない一部の(しかし決して少なくない)「野党共闘クラスタ」の人たちを見ていると、「なんだかなあ」と思わずにはいられない。共産党が「野党共闘」に参加する前の頃、よく「小沢信者」たちが「共産党自公政権の補完勢力だ」と言ったものだが、私には彼らを含む現在の「野党共闘クラスタ」の少なくない人たちこそ「自公政権の補完勢力」以外の何物でもないと確信している。

以下に、猪野亨弁護士が書いた『BLOGOS』の記事を引用する。

高度プロフェッショナル制度(高プロ)が労働そのものを否定する 国全体が不幸になる

高度プロフェッショナル制度高プロ)が労働そのものを否定する 国全体が不幸になる

 働き方改革関連法案が25日、衆院厚生労働委員会で採決が強行されました。
 反対する国民が多い中で、ろくな審議もしないまま与党自民党は採決を強行しました(野党の責任ではありませんよ、念のため)。

 この中で特に問題になっているのが、高度プロフェッショナル制度高プロ)です。
 高プロは、高収入の一部専門職を労働時間規制から外すもので、いくら労働時間が長くなっても残業代なし、ということになります。

 このような労働が一定の「高収入」の労働者を対象にしていますが、いずれその上限は下がってくるだろうという懸念は誰もが持っているところです。消費税も3%から始まり、既に10%が目前となっているように、一旦、制度として導入してしまうと、導入された制度をもとに徐々に対象を広げることは比較的容易なのです。

 このような制度が導入されれば、まず「高収入」の人たちが過労死してしまう、そうした声が過労死遺族の方々からも発せられています。
 労働時間などが規制されているはずの今でさえ過労死を生み出すような労働環境なのに、労働時間を管理しないなどとしてしまったら、なおさら過労死を生み出すということは明らかでしょう。

 本人に選択権があるということにはなっていますが、現状の法規制の下で過労死した労働者は、本来であれば法によって守られ、拒否できる立場にもあったということを考えれば、単に選択権があると言ってみても現実には拒否できないだろうということは多くの指摘のあるところであるし、むしろかえって自己責任ということの根拠にされかねません。

 この制度は賃金を抑制しようとする財界の意向によって導入されようとしているものです。従前より財界は、派遣労働の自由化など労働規制を緩め、労働者を低賃金、長時間労働で使い捨てることを企み、それを実現しようとしてきていました。

 しかし、このような働かせ方をすることは、かえって自らの首を絞めてはいないでしょうか。
 高プロの対象となっているのは、相応の高度な労働を担う労働者ということになりますが、賃金を下げるが働けと言っているようなもので、これではこのような職種を目指す人はいなくなってしまいます。今、働かされている労働者は与えられた職務ということで「忠実」に働いてくれるかもしれません。しかし、絶対に後に続く人たちは出てきません。早晩、先細りになります。

 昨今、公務員志向とか安定志向が強くなってきている中で、こうした労働に耐えうる層は非常に限定的になっていくだろうし、例えば何も無理をしなくてもスマホさえされば何もいらないよ、なんて言われてしまったら、労働意欲なんてまるでなくなってしまいます。
 労働に自己実現を見いだせなくなってきたのは、働いても仕方ないという風潮が生み出されてきた背景に労働に対する適正な評価がなされず、それに見合った収入が得られないということになれば、誰もそういった職種を目指すことはなくなるということです。

 他方で、CEOなど経営側の役員報酬が高額ということになると、ますます格差が拡大していくということにならざるを得ません。
 高プロ制度は、目先の賃下げをしたいたがために将来の労働力を養成していくということを放棄するということに他なりません。

 このような高プロ制度の導入によって、労働者を過労死に招くという以上に、いずれ過労死を招くような職種自体が敬遠されていくようになるのは時間の問題で、財界が求めるような「人材」の不足を招くことになり、自分たちの首を絞めるだけにならざるを得ません。
 そうなると国全体が不幸になるばかりです。最悪の制度と言えます。

(猪野 亨 2018年05月30日 12:24=『BLOGOS』掲載記事)

*1:そういえば、「働き方改革」に言及する時に必ず安倍政権の金融緩和を持ち出さずにはいられない「安倍信者」の変種もいる。菊池誠、あんたのことだよ。