kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「安倍政権のメディア支配」という問題の核心を避けたリニューアル『news23』の前途多難

 リニューアルされた『news23*1の初回、やはりダメだった。私は近年帰宅時間が遅くなってこの番組を見ることを余儀なくされる日が多いが(新聞もプロ野球も反読売なので日テレのゼロとかいうのは見ない)、一昨年に安倍晋三の圧力で大幅に番組が変わっていこうダメになった部分が基本的に継承されていた。

 一昨年以降、この番組の何がダメになったかといって、番組の前半でどうでも良いワイドショー的な話題を延々とやるようになったことほど番組の堕落を表すものはなかった。それはまさか朝日新聞で長年政治記者をやっていた星浩の趣味とも思われないから、局の上層部の意向がそのまま反映され、念願かなって夜のテレビニュースの「アンカー」になれた星浩はそれに異を唱えなかったということだろう。このあたりの信念のなさが星浩の特徴であり、その星をアンカーに据え置いた時点で、他局で安倍政権がらみでキャスターを降ろされた小川彩佳を「メインキャスター」に迎え入れようが番組が良くなることを期待できないのは当然だった。星浩でさえ逆らえないのに小川彩佳が逆らえるはずがない。もっとも、これまでのワイドショー的な趣向は「ネット論」に置き換えられてはいたが(もちろんネット論は昨日だけで、何らかの「ジャーナリズム的な」トピックを論じるコーナーを最初に据えるのではないかと推測される)、その中身も問題が大ありだった。

 番組が問題にしていたのは「左右の分断」だったが、日本のネットに限らない言論でもっとも問題なのは安倍政権による事実上の言論統制であって、それでNEWS23の故岸井成格報道ステーション古舘伊知郎小川彩佳も放逐されたのだ。しかし、番組はその核心に触れることを避けた。「安倍タブー」がリニューアル初日に早くも発動したといえる。番組ではトランプが分断に積極的に関与していることまでは指摘していたが、トランプに触れるのであれば当然触れなければならない安倍晋三を避けていた。これではどうしようもない。

 それに、少し前までのワイドショー仕立ては論外にしても、昨夜やったようなトピックに焦点を当てるコーナーは、本来番組の後半に持ってくるべきだろうし、そもそもそういうコーナーを設けるのであれば、番組の時間帯を拡大すべきだろう。筑紫哲也時代の初期には0時を過ぎても延々とやっていて、そうしたコーナーは「第2部」と称していたが、そのくらいの余裕がなければニュース番組としては成り立たないはずだ。今回のリニューアルの前から、いつになったらニュースをやるんだよと苛立たせて、始まるやあっという間に終わってしまってあまりの薄味さにあっけにとられていたが*2、それは基本的には昨夜も変わっていなかった。

 ただ、一箇所だけポジティブな意味で注目したのは「異論! 反論! OBJECTION」のコーナーの復活で、あれは岸井成格時代にも見た記憶がないから、筑紫哲也時代から10年あまりを経ての復活ではないか。もしかしたら「多事争論」も復活するかなと一瞬思ったが、さすがにそれはなかった。考えてみれば「多事争論」が復活するのであればそれは星浩の役柄だが、星に「多事争論」は似合わない。とはいえ「異論! 反論! OBJECTION」の復活には、TBS局内にはかつての「報道のTBS」の復活を期して臥薪嘗胆の日々を送っている人たちがいるであろうことを感じさせてくれた。

 とはいえ、「敵の本丸」であるところの「官邸によるメディア支配」という問題の核心から目をそらしている間は、低迷していたと伝えられる番組視聴率の向上など夢のまた夢だろう。思い出されるのは、昨年秋に日テレ夜のニュースに進出した元NHK有働由美子が、自らの「持ち味」であるらしいバラエティ色を前面に出そうとして転けた一件であって(その後視聴率が持ち直したかどうかは知らない)、昨夜の放送を見る限り、小川彩佳有働由美子と同じくスポーツ紙や週刊誌の「掌返し」の洗礼を受ける可能性が高いと思われる。

*1:番組名に私は全く無頓着だったが、今までは『NEWS23』だったが昨夜(6/3)から『news23』に代わったらしい

*2:リニューアル前の2か月は、スポーツニュースも端折るようになっていた。それで、先に「卒業」させた皆川玲奈の分を本来スポーツ担当の宇内梨沙が兼務していたのだった。