kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

いじめやホロコーストには対処しても歴史修正主義者・すぎやまこういちの音楽を使い、世界的には無名の松井・長嶋・王の元読売選手を引っ張り出した東京五輪開会式は1936年のベルリン五輪を繰り返す「二度目のみじめな笑劇」だ

 東京五輪開催の前後数日間、ブログの更新をしなかったが、小山田圭吾の開会式音楽担当辞任に続いて、小林賢太郎ホロコーストをお笑いのネタにしたことが発覚して開閉会式演出ショーディレクター担当を解任され、それにもかかわらず開会式の演出は変更されずに強行された、つまり小林の演出が事実上そのまま使われ、それも合意形成のプロセスを経ることなく組織委員会を牛耳る少数の人間の判断がゴリ押しされたという。極めつきは「いじめ」というには悪質すぎる過去の悪行が暴かれた小山田の代わりが、「南京虐殺はなかった」等の発言や、城内実*1松原仁といった極右政治家の応援歌を作ったことなどで悪名高いすぎやまこういちが作曲した「ドラゴンクエスト」(ファミコンなどのロールプレイングゲームRPG)の音楽が使われたことだ。いじめやホロコーストはダメでも「南京虐殺はなかった」歴史修正主義なら良いのかとの批判を自ら招き寄せる愚行だ。私自身はパソコンのRPGはずいぶんやったがドラクエはやったことがない。世界的に見てもドラクエはマイナーなゲームであって、より広く世界で愛好されたのはファイナルファンタジーの方らしい。また開会式に松井秀喜長嶋茂雄王貞治といったプロ野球・読売のかつてのスター選手たちが出てきたそうだが、松井や王は日本以外ではアメリカや、王の場合は台湾くらいでしか知られていないだろうし、長嶋に至ってはアメリカでも誰も知らない。日本の年齢層の高い読売ファンの機嫌をとったり、極右のすぎやまこういちが作った日本でばかり人気のあったコンピュータゲームの音楽を使ったりと、内向きかつ反動的な開会式から思い起こされるのは、マルクスが『ルイ・ボナパルトブリュメール18日』に書いた「歴史は繰り返す。(中略)二度目はみじめな笑劇として」という警句だ。

 

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 上記リンクのブログ記事にある通り、マルクスナポレオン・ボナパルトのクーデターを「一度目の偉大な悲劇」、その52年後にナポレオンの凡庸な甥ルイ・ボナパルトが引き起こしたクーデターを「二度目のみじめな笑劇」と評した。2021年の東京五輪は、小山田・小林・すぎやまのような人たちを起用する一方で、あまりにも内向きな松井・長嶋・王を起用したことから明らかな通り、紛れもない1936年のベルリン五輪の嫡子ではあるが、悪の破壊力はナチス・ドイツとは全く異なり、ナチスホロコーストの大蛮行を引き起こしたのに対し、日本では自滅(急速な国力の衰退)を招くだけだろう。今回の1980年から2020年に至る40年間の日本の構造的な問題を焙り出したといえるが、それは世界的な破局にはたいした寄与はしない。気候変動に見られる通り、世界的な破局に大きく寄与するのはグローバル資本主義などに起因する他の要因だ。日本国内の極右人士(その御輿点に担ぎ上げられているのが前首相・安倍晋三だ)やネトウヨらが主導する民族主義的排外主義などは、せいぜい日本国の自滅を加速させる程度の影響力しかない。今の日本などその程度の存在に過ぎない。

 その間、日本、ことに五輪が開催されている東京を中心とした首都圏で新型コロナウイルス第5波の感染が急拡大した。開会式前日の22日から一昨日の土曜日(24日)までは、これまでにも見られた連休効果に加えて医療関係のリソースが東京五輪向けに大きく割かれてPCR検査数が少なかったために、東京都の新規陽性者数は少なめに推移したが、それもまだ連休が終わってもいない昨日(25日)までは続かず、東京都の新規陽性者数は日曜日では過去最多の1763人を数えた。急速に進んだワクチン接種の効果もあって死亡者数はなお減少を続けているが、東京都を含む首都圏1都3県では第4波の時の大阪府と同様の医療崩壊が起き始めている。さらには、ワクチンの効果が半年程度しか持続しないことが明らかになりつつあり、現在接種したワクチンも半年後の真冬の来年1月に効くかどうかはわからない。つまり新型コロナの時期はまだ当分続くと考えなければならない。

 東京五輪は、開会3日目に日本選手が大量の金メダルを獲ったことでテレビがお祭り騒ぎをしているけれども、日本が金メダルを稼げる柔道や水泳などは大会の前半に集中している。菅義偉が狙った「五輪が始まれば皆夢中になって五輪は支持され、内閣支持率も上がる」との目論見は、あるいは一瞬は当たるかもしれないが、それは長続きはせず、五輪は経済の刺激にすらつながらず、高度成長期の1965年にさえ起きた五輪後の景気低迷が2020年代の日本に大きなダメージを与えるだろう。これは今後政権が仮に自公から「野党共闘」に移行しようが止められるものではない。2012年に安倍政権なんぞを選択して「高度成長期の夢よもう一度」という幻想にしがみつこうとした罰を日本国民が本格的に受ける時代は、東京五輪が空しく閉会したあと、つまりこれから本格化する。この時代には、さしものネトウヨも「日本スゴイ」と言い募る気力も失うに違いない。

*1:もうその名前を目にする機会は少なくなっているが。